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凍てつく王国  作者: 玖波 悠莉
前編
49/86

幕間 ウルサーン国 近衛隊長 

驟雨の中、黒ずくめは足早にウルサーン国境へと急いでいた。

国境には兵がほとんどいないが、いるところには居る。山沿いの小さな関所もその一つだった。とはいえ、はた目には兵がいるようには見えないし、つい先日まで無人だったのもまた事実だった。


「所属?ウルサーン近衛隊長だ。王に早馬で伝達を。」

関所で兵に告げる。王の命で国境に全軍が集まりつつあるが、集まりきるにはまだ暫くかかる。それで人の出入りも多く、また、集まった兵たちもまだ分からないことの方が多いのだろう。

それだからか、兵が所属を聞かれた。黒い外套の内側にある所属を見せる。

近衛隊長と答えた黒ずくめに、尋ねた兵が慌てて背筋を伸ばした。

「申し訳ありません!伝達の内容はどのように?」

乾いた布を受けとりながら近衛隊長は苦笑した。僻地から突然国境に配備となったのでは近衛隊長の顔を知らなくても無理はないかもしれなかった。

「アレストリア王都で雪崩が起きた。被害はかなり大きい。と。ああ、ついでに、白い女には一応揺さぶりはかけました、と伝えてくれ。アレストリアで雪崩があったから、もう必要ないかも知れないが。」

「は!」

兵が早馬に伝達しにゆくのを見て、やっと一息ついた。傍らに、別の兵が立っていた。見覚えがある。恐らく、王城に詰めていたことがあったのだろう。

「あの…差し出がましいとは思いますが、どうなさったんですか、その、傷…。」

乾いた布を差し出して、兵がおそるおそるといったふうに尋ねた。兵の視線は鼻頭ではなく、首元に注がれていた。近衛隊長の首元に、一筋、うっすらと傷が入っていて、血が固まりかけていた。

「ん?ああ。これか。さっき言った、白い女にやられた。」

「隊長ほどの方がですか?」

兵はやはり、自分の事を知っていたらしい。

「ああ。次会ったら確実に殺られるだろう。運がよかったんだろう、たぶん。」

2度、戦った。はっきり言って、生きているのは奇跡に近い、と思う。特に、2度目は。首にかけた金鎖の先についた水晶を掌の中で転がした。お守りなのだそうだ。主のいう事には、だが。

「…そんな。何者、なんですか…。」

頬杖をつきかけて、頬にも傷があることに気付いた。あまりの寒さに、感覚が麻痺して分からなかったようだった。それに気が付いて苦笑する。それなのに、あれだけずぶ濡れで、額を切り裂いても、平気な顔で立ち上がってくる、氷点下の堀の水の中に落ちても、全く死んでいるとは思えない、あの、女は。

「…化け物だったよ。正真、証明のな。」


ちなみにこの人は女性だったりするのですが、本編に関係ないのと出すタイミングを完全に逸してしまったのでここに書きました。


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