幕間 3
「ただ今、戻りました。」
「ああ。ご苦労。首尾は?」
「上々かと。」
「結局あの男にしたのか?」
「ええ。魔道などと…愚にもつかないことをしている割には、自分の立場は分かっていたようですね。」
「国が揺らげば国庫が揺らぐ。国庫が揺らげば真っ先に首が飛ぶと考えるくらいには自身の仕事が役に立たんと知っているのだな。」
「詐欺師なんでしょう。そういう人間は人に取り入るのも上手いですが、自分の立場が危うくなることにも聡い。」
「そうだな。ならきっと――向こうの王宮でも熱弁をふるってくれるだろう。」
「詐欺師、ですからね。人を乗せるのも上手いでしょう。」
「こちらとしてはそうあって欲しいと祈るだけ、しかできんがな。」
「しかし――無礼とは思いますが。その、あの国の連中があの阿呆の口車に乗せられたとして、うまくいく保障、というか、根拠はあるのですか?」
「氷の一族と人間の間で交わされた古の盟約。これを人間が一方的に破ったのなら…彼等は、どうするだろうな。」
「ですが…いくら書状が残っているとはいえ、この国の建国時の物なのでしょう?それ以来全く音沙汰がないどころか、そもそも、氷の一族が存在するのかすら疑わしいかと。」
「はは…。手厳しいな。…私も最初はそう思っていたさ。だが、以前会ったことがあってな…その氷の一族に。伝承通り、雪のように真っ白で、冷たい一族だった。」
「そう、だったんですか…。」
「だが、もし氷の一族が存在しなかったとして…彼らが盟約を違えた人間どもに対して、何もしなかったとして…我々にできることは何もないのだ。」
「そんな。」
「本当の事だ。わが国にはもう何の猶予もないのだ。…すまないが、これからも引き続き任務に当たってもらう。」
「はっ。」