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凍てつく王国  作者: 玖波 悠莉
前編
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21/86

Icy memory 2-3

「それでね、これくれたの!」

いそいそと腰の物入れから何かを取り出した。

「お前…今日はそれが見せたくてここに来たんじゃろ、本当は。」

半ばあきれ気味で老婆は呟く。

「帰るぎりぎりのところでね、まて、っていわれてね、これもらったんだ。あかいひとみによくにあう、っていわれた!」

子供は老婆のつぶやきも気にしない。

「ほぉ…。耳飾り…これはルビーか。これまた、立派なお土産をもらったもんじゃな。」

「いいでしょ!」

「うむ。これは立派じゃな。」

「でしょ!」

「ところで、おぬしも何かやったりはしたのかね?その王子に。」

「うん。」

あごをつきだすようにして、うなずく。

「なんじゃそれは。」

老婆は突き出された顎とちょん、とのかった鼻の孔を見る。

「すいしょうあげた。」

老婆はまた眉を上げたが、やはりよく分からなかった。

「あの水晶はお前の宝物じゃろ?」

「うん。」

子供はうなずきながらまた顎を突き出す。

「はは、でも、気持ちよくあげたんじゃろう?」

「うん。」

3度、子供は顎をしゃくった。

「そう気にせんでいい。これは水晶よりずっといい品じゃぞ。」

「ほんと?」

顔を元の位置に戻して子供は顔を輝かせた。

「ああ、本当じゃ。」

老婆は優しげに笑った。

「ほんとにほんと?」

ぐいぐいと子供は身を乗り出す。

「ああ。」

「そっかぁ。ありがと、ばあさま!」

そう言って子供は飛びあがるように立ち上がった。

「ほんとにそれだけかい。」

老婆が声をかける前に、子供は先程自分が破壊した扉を外側に無理やり開けると、あっという間に斜面を駆け登って見えなくなった。

老婆がどっこらせと立ち上がり、扉を見に行くと、扉を固定していた下の方が外れて、扉は斜めになっていた。

「これも直さにゃならんか…。まぁ、凍るようではいかんから、そろそろ直し時ではあったし…良しとするかのぅ…。」

大きくため息をつくと、そのまま外に出て、眼下を見下ろす。西日に照らされ、はるか遠くに広がる王国を眺めながら老婆は独り言ちた。

「まあいい。王子に逢った、か。なかなか良い収穫じゃないか。さて、隣国の脅威はすでに募りつつあるぞ、幼き王子殿。そなたの行く末までは見届けられるかのぅ…?わしはなかなかに年を食ってしまったようじゃしの。伝承と記録をつかさどる一族として、見届けたくはあるが。しかし…あやつにルビーとはなかなか面白い王子だの。わしに気に入られた所でどうと言うことはないんじゃろうが、まぁ、わしはお前さんが気に入ったよ。」

ここまで読んでいただきありがとうございます。今回はだいぶん長かったので3つに分けさせていただきました。

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