Icy memory 2-3
「それでね、これくれたの!」
いそいそと腰の物入れから何かを取り出した。
「お前…今日はそれが見せたくてここに来たんじゃろ、本当は。」
半ばあきれ気味で老婆は呟く。
「帰るぎりぎりのところでね、まて、っていわれてね、これもらったんだ。あかいひとみによくにあう、っていわれた!」
子供は老婆のつぶやきも気にしない。
「ほぉ…。耳飾り…これはルビーか。これまた、立派なお土産をもらったもんじゃな。」
「いいでしょ!」
「うむ。これは立派じゃな。」
「でしょ!」
「ところで、おぬしも何かやったりはしたのかね?その王子に。」
「うん。」
あごをつきだすようにして、うなずく。
「なんじゃそれは。」
老婆は突き出された顎とちょん、とのかった鼻の孔を見る。
「すいしょうあげた。」
老婆はまた眉を上げたが、やはりよく分からなかった。
「あの水晶はお前の宝物じゃろ?」
「うん。」
子供はうなずきながらまた顎を突き出す。
「はは、でも、気持ちよくあげたんじゃろう?」
「うん。」
3度、子供は顎をしゃくった。
「そう気にせんでいい。これは水晶よりずっといい品じゃぞ。」
「ほんと?」
顔を元の位置に戻して子供は顔を輝かせた。
「ああ、本当じゃ。」
老婆は優しげに笑った。
「ほんとにほんと?」
ぐいぐいと子供は身を乗り出す。
「ああ。」
「そっかぁ。ありがと、ばあさま!」
そう言って子供は飛びあがるように立ち上がった。
「ほんとにそれだけかい。」
老婆が声をかける前に、子供は先程自分が破壊した扉を外側に無理やり開けると、あっという間に斜面を駆け登って見えなくなった。
老婆がどっこらせと立ち上がり、扉を見に行くと、扉を固定していた下の方が外れて、扉は斜めになっていた。
「これも直さにゃならんか…。まぁ、凍るようではいかんから、そろそろ直し時ではあったし…良しとするかのぅ…。」
大きくため息をつくと、そのまま外に出て、眼下を見下ろす。西日に照らされ、はるか遠くに広がる王国を眺めながら老婆は独り言ちた。
「まあいい。王子に逢った、か。なかなか良い収穫じゃないか。さて、隣国の脅威はすでに募りつつあるぞ、幼き王子殿。そなたの行く末までは見届けられるかのぅ…?わしはなかなかに年を食ってしまったようじゃしの。伝承と記録をつかさどる一族として、見届けたくはあるが。しかし…あやつにルビーとはなかなか面白い王子だの。わしに気に入られた所でどうと言うことはないんじゃろうが、まぁ、わしはお前さんが気に入ったよ。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。今回はだいぶん長かったので3つに分けさせていただきました。




