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「着いたぞ、この辺にあるはずだ。」
乱雑にものが置かれているというより積み上げられて崩れた跡といった風情の部屋…もとい、倉庫についた。
「ずいぶんと、適当ですね。」
「いや、だから敬語じゃなくていいと…。」
「嫌味です。」
「あ、そう…。」
ざっと倉庫の中を見回してアリアはため息をついた。
「この中に本当にあるんです…あるの?」
「たぶんな。」
「たぶんって…。」
しかたない、と呟くと手近な山を崩しにかかった。
「アリア、お前どんなものを探してる?」
「とりあえず、帯。飾り帯だけど剣を佩けるようになってる。太めの奴で…す。じゃない。太めの奴。」
「これか?」
「あ、それ…早いですね。」
「なら他のもこの辺にあるんじゃないのか?」
アリアはシグルーンから帯を受け取ると腰につけた。
「確かに。」
「それ、帯というか、鎧の一部って感じだな、どちらかというと。」
「そう?」
腰から胸の下までを固めの飾り帯が覆っていて、背中の部分で帯は分かれており、その分かれ目をひもで編み上げたところをくくり、固定するようだった。そして、そこに上下二段になった平行に剣を固定する金具があり、2本の短めの剣を携帯できるようになっていた。
「確かに多少のことでは傷はつかないけど。」
アリアはそう言いながら、シグルーンの捜していたあたりから2本の長めの短剣を拾い上げた。
「ちょっと見せて貰ってもいいか?」
「どうぞ。」
一本をシグルーンに渡すともう一本を腰の後ろに差し込んだ。
シグルーンがすらりと抜いた剣は、短剣というには少し長めで、しかし、剣と言うにはかなり短かった。
「片刃か…。」
刀身を光に透かして呟いた。
からん、と鞘の中で音がした。
「何か入ってるぞ?」
ひょいっとシグルーンがアリアに鞘を放る。
「あ、どうも。」
受け取った鞘をひっくり返すと、中から2つの赤い石が転がり出てきた。
「ルビーか。よく似あうな。」
「どうも。」
先程と同じ返事をしながら赤い石の耳飾りを真っ白な髪の中に留めた。
手元の剣に目を戻したシグルーンは剣の刃の柄の近くにある紋章に目を留めた。そこには盾を背後に女性の横顔が描かれた戦女神の紋章が刻まれていた。
「次、靴探してください。」
シグルーンの手から剣を取って先に帯につけておいたらしい柄の中に差し込んだ。
「これか?」
山の中からシグルーンは茶色の革靴を取り出した。
「違います。もっと長い奴。形はそんな感じで、だけど。」
「言葉の端々が気になるな…。」
「あった!」
「ほんとに長いな。」
さっさと革製の編み上げのついた靴に足を通す。見た目は普通の長靴と何ら変わりはないが、膝の上までを覆っているという点だけが異質だった。
「そうですか?確かに。雪の中を歩くので、長さがないと埋まってしまいますからね。」
彼女が太ももの近くで、編み上げた紐の先を結びだしたあたりで、紳士的に背を向けたシグルーンの靴に目を向けて言った。
「ああ、で、これで最後。」
「終わったか?」
後ろを振り向いたシグルーンに最後に山から掘り出した籠手を着けた両手をひらひら振りながらアリアは立ち上がった。
「ありがとうございます。手伝ってもらったのと、返してもらったのと。で、帯刀してていいの?一応、城の中だと思うんだけど。」
ぱたぱたと腰をはたきながら立ち上がったシグル-ンは
「偉い人に見つからなきゃ、大丈夫だろ。」
と、少し悪そうな笑顔をした。




