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「…おはよう。」
「…おはようございます。」
扉の前で固まって返事をした2人をアリアは半眼で眺めるようにして見た。
「…朝から淑女の部屋の前で騒ぐのはどうかと思いますが。」
シグルーンはぎくしゃくとアリアの方へ向き直った。
「あ―うん。すまん。…なんか…昨日と雰囲気が違うぞ、ハインツ。」
後半は小声で傍らの男に言った。
「そうですね、聞いてたのと違いますね。」
彼もまた、小声で返す。
そんな彼らを紅い瞳でひと睨みすると、アリアは色のないため息をついた。
「…もういいですよ。で、そちらの方はどなたですか?」
シグルーンの傍らの長身の男を見上げて尋ねた。
「ああ、こいつはハインツ。遊撃隊の副隊長だ。」
「正式…表向きには、近衛兵隊隊長、という事になっています。アリアさん、でよろしいですか?」
彼は高身長を少し屈めるようにしてアリアに片手を差し出した。
背は高く、金髪。糸のように細い目のせいで笑っているのか、そうではないのか、表情が分からなかった。
「どうぞ、よろしく。」
アリアが差し出した手を握って、ハインツはそう言った。
「あ、はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」
「それから、こいつ、いつも目は開いてないがばっちり目が開いていたら要注意だ。その時は本気だ。」
横からシグルーンが少し愉快そうに付け足した。
「なんですか、それは。」
アリアから手を放したハインツが不服そうにシグルーンを見る。
「そのままだろ。お前の目が開いているとき、ロクな目にあった覚えがないぞ。」
「気のせいでしょう。」
シグルーンは逃げるようにハインツから目をそらし、アリアに視線を戻した。
「ま、そういうことだ。よろしく頼む。」
「はぁ…。まぁ、いいでしょう。」
ハインツが溜息をついた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。この先、私事により更新頻度が下がりますが、なにとぞよろしくお願いいたします。