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「なっ…。な、なら、王子…なんですか…?」
アリアは驚愕に目を見開く。
「まぁ、一応は。とは言っても、第4王子で王位継承権はかなり低い。権力の方は、…色々あってほとんどないに等しいだろうな。」
半ば口を開いたまま、アリアは沈黙した。そんな彼女を見たシグルーンは、
「ない、とは言ってもお前の身柄一つくらいなら何とかある程度は自由にできるしな。…そう固くなるな。」
と付け足した。
「何で…何で王子が遊撃隊の隊長をやってるんですか…。この国ではそれが普通なんです…?」
アリアは掌を額に当ててため息をついた。
「いや、表向きは俺の親衛隊ということになってるな。で、これがその親衛隊の入隊書類だ。ここに署名してくれ」
シグルーンは先程から何やらごそごそしていた紙を差し出した。既に書類には彼の名が書かれている。
ふらふらと覚束ない足取りでアリアは近づいてくると、
「アリア、でいい…?」
と彼に尋ねた。
「あ、ああ…。」
少々驚いた顔でシグルーンが答えた。
さっさと署名すると、くる、と向きを変えてシグルーンに差し出した。
「確かに、受け取った。これでお前が俺の隊にいる間、お前の身柄は俺が保証しよう。…晴れて我が隊の一員となった訳だが…詳しい話はおいおい話そう。」
アリアは、はー、と長いため息をついた。
「分かりました…。」
「そうだな、今日はそこの隣の部屋でも使ってくれ。まだ何も決まってないしな。」
「ん…。」
覚束ない 足取りのまま、ふらふらと隣の扉を開けたアリアはしかし、またもその場で沈黙した。
「…。…この部屋…誰か後から来ます…?…すごく広いんですが。」
「いや?今のところそんな予定はないが。…何か問題があるか?」
「いえ…。それならいいです…。」
ぱたりと扉が閉まり、後にはひんやりとした冷気だけが微かに漂っていた。
「悪く、思わないでくれ…。」
ひっそりと呟いた。