出会い8
止まった世界で、蟲と呼ばれる存在を倒した日、およびその次の日は、学園が休みの日であった。僕はその日を使って、花鳥さんにどうやって話し掛けようか考えていた。
しかし、結局、その考えた時間は無駄になった。
なぜなら――
僕らの前に、母さん――美夏ねぇの母親なので、正しくは小母さんと呼ぶべきだが、「母さん」と呼ぶように言われいてる――と花鳥さんが立っている。
場所は僕らの家の玄関。
「こちら花鳥春ちゃん。今日からうちに住むから」
母さんのそんな声が聞こえてくる。
「私たちの旧い友人の娘なんだけど、学園に通うために一人暮らしをするところだったらしいの。その友人に頼まれて、うちで預かることにしたの」
「花鳥春です。学園でも、同じチームってことで挨拶したね。これからよろしくお願いします」
花が咲くような笑顔でお辞儀をする花鳥さん。昨日の朝、止まった世界で見た彼女とは別人みたいだ。
僕はそんな彼女に少し見とれてしまう。
美夏ねぇが僕に抱きつき、力を入れてくる。親が見ている前で抱きついてくるのは、珍しいので少し驚いた。近すぎてよく見えないが、花鳥さんに対して威嚇しているように思える。
「さて、玄関で話をしていてもしょうがないわね。行きましょ」
そういって、母さんは花鳥さんをつれて僕らの横を通り過ぎる。
通り過ぎる瞬間、花鳥さんは、僕の耳――抱きついて来ている美夏ねぇがいない方の耳――に、顔を近づけて、
「明日、またいつもの時間に」
とささやいた。
「アキ君、なにを言われたの?」
「いや、なんでもないよ」
抱きつく力を強める美夏ねぇ。
「いたい、いたいっ。やめてよ、美夏ねぇ。別に大したことじゃないから」
実際には、ここ数日間ずっと思い悩んでいたことが解決するかもしれないので、かなり大したことである。嘘をつくのは心苦しいが、今は美夏ねぇの魔の手から逃れるのが一番大事だ。
「わかった」
そんな僕の返答を聞いて、美夏ねぇは抱きつく力を緩めた。




