管理者4
鋭い爪で僕に襲いかかってくる魔物。
周囲を照らす魔術により、その様子ははっきりと見えていた。僕は爪をかわしながら、拳の裏で魔物をなぎ払う。
素早く反応できるように構えつつあたりを伺うと、魔物の群に囲まれていることに気づく。僕はその群と向かい合う。囲まれているので、その表現は少しおかしいが。
僕を取り囲んでいるのはヘルハウンドという魔物。黒い大型の犬のような見た目で、鋭い牙と爪を持っている。王都からそれなりに遠い場所で夜によく出現する。かなり凶暴な魔物で、旅の商人が襲われ、全滅したという話も耳にしたことがある。上位の学園生でも数匹を相手にするのがやっとと言われている。……数ヶ月前に遭遇したドラゴンよりは下位の魔物ではあるが。
このままではまずいかもしれない。
僕はそう思い、あたりを照らしている魔術とは異なる、ある魔術を使用する。その魔術が僕自身の身体をめぐる感覚がする。問題なく使用できたようだ。この魔術は、美夏ねぇが使用する身体強化魔術とほぼ同じものである。春さんいわく、よく目にしている魔術の方が、他の魔術よりわかりやすいはずとのことであった。確かに、すぐに利用できる箇所に元となる『クラス』を整理するのは楽であった。
とめどなく襲い掛かってくるヘルハウンド。あるものは爪で、あるものは牙で、僕に向かってくる。
僕はそれをかわしつつ、可能な場合のみ、反撃を入れていった。
相手の数が数であるため、こちらから仕掛けることはしない。迎撃にのみ専念していた。その結果として、ヘルハウンドの群を相手に、僕一人で戦うことができていた。僕の反撃をうけたヘルハウンドが、何故かその一撃だけで消滅してしまっていることもその理由の一つではあるが。
守ってばかりいることによって、じり貧になることはあまり考えなくてはよいはずだ。ある時間がくれば、問題はなくなる。
僕はヘルハウンドの攻撃をさばきつつ、少しづつ目的地と思われる方向に進んでいく。
反撃で少しは倒しているが、守ることを中心にしていたこともあり、ヘルハウンドの数は徐々に増えていく。
さすがにきつくなってきたな。もう少し遅く出発した方が良かったかな。
そう思いはじめたころ、世界が止まる感覚が僕を襲った。
構えを維持したまま、僕は周囲の状況を確認する。
見える範囲のヘルハウンドはすべからく止まっている。
予想していた通り、この世界では魔物たちは動けないようだ。
僕は構えをとき、一息をつく。その後、目的地を確認するため、周囲をと地図を見比べる。
やはりそうか。目的地の方面の魔物の数がやたらと多い。理由はわからないが、ヘルハウンドはどうやら僕が目的地へ向かうのを邪魔するように出現していたようだ。
僕は魔物の多い方へ進む。止まっているため、全く脅威には感じないが。




