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略奪者11

 やはり多い。

 無数に『クラス』が存在している。

 僕は目的のものを探しはじめる。


「これほどとは……」

 しばらくして、はるさんがつぶやいた。

 一旦、『クラス』の検索を中止して目をあけ、春さんの方を見る。

 春さんと目が合う。春さんを抱きかかえたまま、見つめあうことになる。

 春さんが、僕を少し驚いたような感じで見ていた。表情にあまり出さない彼女が、こんな顔するのは初めてのことなので、そうとう驚いているのだろう。

 春さんの顔を観察していたが、僕は顔が赤くなるのを感じる。そのため、春さんから顔をそらし、前を向く。

「これでは、『クラス』の検索が苦手でも仕方がない。逆に、なぜ時間をかければ、ある程度目的の魔術が使えるのか不思議なくらい」 

「一応、簡単に見つかる『クラス』がある」

「どんなもの?」

「『現象』と『物質』という、ほとんど情報が無い『クラス』」

 その言葉を聞いて、春さんは視線を前に戻し、少し黙り込んだ。

 静かな時間が流れる。

 『クラス』の検索と会話で、意識をそらしていたが、そろそろ限界のようだ。僕は、自分の腕の中で抱きしめている春さんを意識し、理性が遠のいていくのを感じた。


「……わたしにはその二つの『クラス』は見えない。それらの『クラス』から魔術を使う様子を見せて」

 自分の煩悩と格闘していたが、惨敗し、春さんを抱きしめている手を動かそうとしていた僕に、春さんが言ってくる。

 なるほど。『クラス』を探すために黙り込んでいたのか。いつもの魔術を使うのあんなに速いのに、今回は結構時間かかったな。無い物を無いと確定させるのは、単純に見つけることより時間掛かるってところかな。

 そんなことを考えつつ、

「わかった」

 と僕は返す。

 そして、魔術を使うため、集中しだす。


 炎を出す魔術で良かったっけ。

 そう考え、まず『現象』を複製する。

 複製したものに、かなりの時間をかけ、炎に必要な情報を付加していく。その後、位置情報を付け加え、現実に反映する。


 これで、炎は出せたはずだ。いつも通り結構時間かかったけど。

 そう考え、僕は目をあける。

「アキヒコが何をやっているか、分からなかった。アキヒコを通じて、何らかの『クラス』があることは見えたけど。わたし自身が見えない『クラス』は、中身やそれに情報を付加させる過程が見えないみたい」

 目をあけた僕に、春さんはそう言い、

「一応、出した炎を少し観察してみる」

 と続けた。

 春さんは僕にのったまま炎を観察しだした。棒のようなものを魔術で出し、炎をつついたりしている。


「これ少し触って見て」

 ふいに、火遊びをしていた春さんがそう言ってくる。先程、炎をつついていた棒を手に持っている。

「え、熱くて火傷しない?」

「大丈夫」

 僕は、半信半疑ながら、その棒に触れる。その棒は冷たかった。ひんやりするとかではなく、かなり温度が低いようだ。

「何これ?」

 僕は不思議に思って質問する。

「アキヒコが出した炎は温度を上げるのではなく、温度を下げる効果があるようだった」

 ふむ。どうやら付加する情報を少し間違ったようだ。魔術を使うのに意識を集中しているつもりだった。しかし、女の子を抱きしめたまま、他のことに集中できる男がいるだろうか。いないだろう。悪いのは僕じゃない。

 僕は、少しへこみながら、心の中で自分の間違いに対する言い訳をした。

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