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略奪者6

 僕は、三着の服を買うことになった。基本的に二着を着回し、一着は予備にする予定だ。僕の服とは別に、はるさんが二着、黒河くろかわさんが一着の服を買い、その店を後にした。


 僕らは、黒河さんに率いられ、次の目的地へ向かう。僕は買った服をそのまま着せられていた。その服に慣れるためというのが、主な理由である。

 目的地までの道中、美夏みかねぇは僕に抱きついてこなかった。

 理由を尋ねてみると、

「近くからはたくさん見たから、次は少し遠くから全身を眺めたい」

 という意味は分かるが、理解はしたくない言葉が返ってきた。今はスカートを履いているので、後ろから抱きついて、スカートを押さえてもらいたかったのだけど。

 結局、僕の思いが美夏ねぇに伝わることはなく、スカートの中が見えてしまわないかという不安を感じながら歩くことになった。

 恥ずかしがりながらスカートを押さえつつ、僕は歩いていた。そんな僕の様子は、端から見たら挙動不審なものだったに違いない。美夏ねぇは、可愛いとしきりに言っていたけど。

 

 しばらくして、僕らはある店の前に着いた。

 男一人では決して入りたくない、女性と一緒でもあまり入りたくない店であった。そこは、女性用の下着が売っている店だった。

 そういえば、下着について考えがあると黒河さんは言っていたな。この店に黒河さんの求めている物があるのだろうか。

 僕以外の三人は普通に店の中に入っていく。ここが目的地である以上、自然な行動である。躊躇していた僕は取り残された。

 とてもやばい状況になってしまった。女性用下着を売る店の前に、女装した男が立っている。変態という言葉ですませられる範囲を完全に逸脱している。

 一瞬、店の前から立ち去ることも考えたが、やめておいた。強制的に店の中に連れて行かれることが、目に見えていたためである。その方がよっぽど目立つ。

 僕は何食わぬ顔で店に入ることにした。内心大変なことになっていたので、普段通りの顔ができてたかどうかの自信は無いけど。

 

 店の中に入り、四方を下着に囲まれた僕は、どこをみていいのかわからない状態になっていた。

「はい、これをはいてみて。今着ている服だったら問題なく合うはずよ」

 そんな僕に、黒河さんが声をかける。

 手には、布で作られた何かを持っていた。この店の商品だと思うから、おそらく下着だろう。しかし、それは、あまり下着に見えない物だった。僕が想像していた女性用の下着より、圧倒的に布の量が多い。長さは半ズボンよりも少し長いくらいで、今着ている服みたいに、ところどころひらひらしている。

「これ何?」

「ドロワーズという下着よ。あまり下着っぽくないけどね」

 たしかに、これは良いかもしれない。

 僕はそう思った。心の奥では、自分の服に対する認識がおかしくなってきているのをひそかに感じながら。


 黒河さんからその下着を受け取り、躊躇無く着替える。そんな行動をとった理由として、あまり下着っぽくないもので、戸惑いが少なかったためというのもある。しかし、自衛のためという理由が一番が大きい。前の店みたいに美夏ねぇに脱がされるわけにはいかない。 

 悪くないと僕は思った。感覚的にもかなりましになったように思う。一応下着という話だが、スカートの下に、丈の短いズボンをはいているような感じである。


 今着ている服を見た当初は、黒河さんを少し恨んだ。しかし、今、僕は黒河さんに心の中で少し感謝した。

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