略奪者2
「今回の依頼では、アキちゃんに女装しておとりになってもらいます」
学園長のその言葉により、僕は凍りついた。
その日、僕らはいつも通り、チームの部屋に集められていた。
薬草の件以降、いくつか依頼を頼まれることがあったので、今回もそうだろうなと思っていた。
しかし、普段と異なり、教授と一緒に学園長が入ってきた。
そして、さっきの一言である。なお、教授は、学園長が話を始めた時に、部屋から出て行っていた。
「はーいっ、はーいっ」
と言いつつ、手を上げる美夏ねぇ。
さすがに美夏ねぇも、この学園長の発言には反対してくれるんだよね。助かった。
「大賛成」
全く助かって無かった。賛成どころではなく、大賛成ってなんだよ。
「私も見たいわ」
春さんも同意する。僕は泣きたくなった。
「……あなたたち」
黒河さんが、かなりの間、僕をじっと見て、普段より大きなめな声で、言葉をはなつ。
さすがに否定してくれるよね、と僕はすがるような気持ちで、黒河さんを見つめ返す。
「アキちゃんに似合いそうな服がおいてある店を知っているの。服に関しては譲らないわ」
僕に味方はいなかった。黒河さんに、学園長の僕に対する呼称がうつってるし。
みんないったい何を考えているんだ。
僕以外の同意によって、この依頼は半ば強制的に受けることになった。
背が低いこと以外、自分の姿形はあまり嫌いではなかったが、今回の件で、さすがに少し嫌いになった。
その後、楽しそうに僕の女装について話をする、チームのメンバーと学園長。その光景を視界の端にとらえながら、僕は考えるのをやめた。
数日後、完全に忘れていたとばかりに――というか、忘れていたことを謝る文面と共に――、学園長から依頼の詳細が書かれたものが届く。
女装に意味があったということがわかり、一応は納得した。僕でなくてもという思いは残ったが。ただ、本気なのか冗談なのかわからない文章も記載されており、その部分には心の中でつっこみをせざるをえなかった。
依頼内容: ある盗賊のアジトの調査(補足に記載の依頼のため)。そのために、アキちゃんは女装し、わざと誘拐されるという作戦。アジトに着いたら、魔術を使い、アジトや盗賊の情報を他のメンバーに送ること。
依頼理由: 以下、三点。
一点目、盗賊が女性を魅了する術を使うという噂があり、女性では、この術にかかる危険があるため。
二点目、アキちゃんは、魔術以外では、学園生平均以上の能力は持っているため。また、魔術についても、発動が遅いだけで、今回の作戦で用いる魔術については問題が起こりづらいため。
三点目、最大の理由、アキちゃんが可愛いから。
補足: 学園へ依頼された内容や調査の現状は以下である。
女性をさらう盗賊がいる。その盗賊にさらわれた女性たちが、全く帰ってこない。その原因調査、原因解決、および女性たちの帰還が、依頼の全容である。
独自の調査から、盗賊の頭は女性を魅了する術を使うという噂を入手した。女性が帰ってこないのは、この術が原因の可能性もある。その場合、機関および学園では、解決できないおそれがあるため、個人的なつてで、他にも依頼している。




