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略奪者1
わたしは、馬車の荷台に乗せられていた。手足を縛られて。
まわりには、同じように手足を縛られた少女や女性が数名いる。
「アニキ、今回もいい女たちをさらえましたね」
「おうよ。親分も喜んでくれるといいんだが」
そんな会話が聞こえてくる。
そう、わたしたちは、誘拐されている。
何人かの少女が、恐怖で顔を曇らせている。その少女たちを励ましている女性が目に入る。
「大丈夫だから、きっと誰か助けにきてくれるから」
そんな声が聞こえる。具体性の全くない励ましでも、無いよりはましだなと思う。
わたしは、周りから浮かないように、怖がっている振りをしている。本当に怖い訳ではない。わたしは、助けが来ることを知っていた。正確には、助けを呼ぶことができるということになるが。
わたしがさらわれることは、僕たちのチームが頼まれた依頼に必要なことであった。
僕は、今の現状に至る経緯について、思いを馳せる。
あ、いけない。言い間違いで正体が露見しないように、心の中でも、わたしを使うようにと、美夏ねぇに言われていたのだった。