表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師見習いと止まる世界  作者: 鞍多 奧夜
調律(デバッグ)
23/53

調律13

 あんまり(なんて)見ないようにしよう(いい眺めなんだ)

 黒河くろかわさんを見た瞬間、僕はそう思っていた。心の中で、理性と欲望に分かれ、相反することを思っている。

 黒河さんは普段の、身体をすっぽりと覆うローブ姿では無かった。おそらく、ローブは燃えてしまったのだろう。

 黒を基調として、ところどころ白をあしらった服だった。そして、スカートや袖がヒラヒラしている。黒河さんに似合わないとは言わないが、小柄な春さんの方が良く似合いそうな、そんな服であった。そんな服に、上半身の一部がかなり大きい黒河さんが包まれているため、なんとも妖しい魅力を放っている。また、胸の部分の布がかなり少なく――ローブと同様に燃えてしまったのかもしれないが――、豊かな二つのものが結構露出している。加えて、水で身体全体が濡れている。そのせいで、ところどころ透けていたりもする。

 なんかもう色々とすごい眺めだった。個人的にはとても良い方向で。

 僕は黒河さんを見ていた。じっくり凝視していたといっても過言ではない。しかし、すべきことを思いだし、腰に手を回す。そして、薬をとって、黒河さんに飲ませる。

「……ドラゴンは?」

 黒河さんが意識を取り戻すと、開口一番に聞いてきた。やはり、それが一番気になるだろう。

「とりあえず、なんとかなったよ」

 僕は方法や理由などを一切説明せず、起こった事だけを伝えた。

 そういえば、黒河さんと美夏みかねぇの二人に、はるさんはなんて説明するつもりなのだろうか。対応聞いておけば良かったかな。

 幸い、黒河さんにはそれ以上聞かれはしなかった。

 とりあえず春さんと合流しよう。美夏ねぇが、飛んでいった辺りに向かえば、きっとすぐに会えるだろう。

 僕は春さんを探して、黒河さんを支えながら歩き出す。 


 予想通り、数分で合流することができた。

 

 なんて(あんまり)いい眺めなんだ(見ないようにしよう)

 僕は、美夏ねぇを見た瞬間、不覚にもそう思ってしまった。欲望が理性を上回っている。心の中だけでだが。

 美夏ねぇの上半身の服は、見事に裂けていた。縦に。そしてその結果、見えていた。女性の上半身にある何かが。見えそうで見えないとかではなく、美夏ねぇが動くと普通に見えてしまう。男が僕だけしかいないためか、美夏ねぇはまるで隠そうとしない。

 むしろ気にしている僕がおかしいのかとさえ思えてくる。いや、たぶん美夏ねぇが変なのだろう。黒河さんが、自分のことでもないのに顔を赤らめて気にしているようだった。体動かすの大変そうなのに、身振りで隠してと伝えている。美夏ねぇには全く伝わってないようだが。

「状況を説明するわ」

 春さんが、普通の声音――感情豊かとまではいかないが、決して平坦ではない声音――で発言する。そういえば、美夏ねぇや黒河さんがいるときは、声や表情を作っていたな。今となっては、そんな春さんは不自然だなと、僕は思ってしまうのだけど。

「さっきのドラゴンは、私の魔術で簡単に倒せた。おそらく黒河さんの魔術が、かなりの痛手を負わせていたのだと思う」

 なるほど。そういう理由で倒せたことにするつもりだったのか。

「そうなの? それは光栄ね」

 黒河さんが軽い返答をする。

「不意打ちをされるのが一番大変だと思うから、ある程度ドラゴンを倒してから進みたいかな」

 その春さんの発言には、誰も同意を示さなかった。美夏ねぇと黒河さんはきっと、ドラゴンと戦うことに不安があったからだろう。

 なお、僕はそれどころではなかったので、返答できていなかった。

 僕は話に全く集中できていなかった。美夏ねぇの様子と、ローブのない薄着の黒河さんを支えていることがあいまって、頭の一部で、完全に他のことを考えていたからである。集中できていないだけで、一応聞いていたし、考えてもいたが。

「アキヒコにも戦ってもらいたい。黒河さんは私がささえるわ」

 そういって、僕から黒河さんを引きはがす春さん。間近で感じていた体温が急になくなって、少し寂しく感じた。

 ともあれこれで、僕も話に集中できる。

「僕は具体的にどうすればいいの?」

 僕は質問をする。春さんは、僕らとドラゴンを戦わせたいと思っているようなので、暗に春さんの考えに賛同するように。

「アキヒコは、攻撃をかわしながら、そのナイフでドラゴンに攻撃を仕掛けてほしい。美夏さんは、アキヒコと一緒に動いて、ゴブリンと戦った時と同じように攻撃を。黒河さんは私が支えるし、薬も飲ませるので、二人がいない方向のドラゴンに魔術を使って。ちなみに私は、みんなを守ることを全力で行うわ」

 その発言に対して、美夏ねぇと黒河さんの二人は、同意もしていないが、拒否もしていなかった。

 春さんが話し終わった後すぐ、ドラゴンが現れた。

 そのため、なし崩し的に、僕らは春さんの提案通りに動くことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ