表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師見習いと止まる世界  作者: 鞍多 奧夜
調律(デバッグ)
22/53

調律12

「アキヒコ、強引」

 はるさんに非難される。確かに、無理矢理白濁した液体を、春さんの口に突っ込むことをしていた。でも、これって春さんがやれって言ったんですよね?

 春さんは僕の腕で上半身を支えられ、半分地面に横たわっているような体勢である。少し上気した顔を至近距離で見ていることと、身体の感触や体温を感じていることにより、何ともいえない気分になってくる。

 そんなことを知ってか知らずか、春さんは僕の腕から離れ、立ち上がる。

「まず、美夏みかさんと黒河くろかわさんを起こす。静止せいし世界では魔物は動かないし、倒れている者を魔物は襲わないはず。でも、戦って能力を上げてもらうためには起こさないと。私は美夏さんの方に行く。あなたは黒河さんを」

 春さんは、そう僕に指示を出し、

「それとこれ」

 と言って、あるものを渡してくる。僕が砦から借りているナイフだった。

 なんで春さんが持っているのだろうか。ドラゴンに燃やされたときにでも落としたのかな。そういえば、このナイフ、ドラゴンに全然効果が無かったな。ゴブリンなどの弱い魔物向けに作られたナイフだから効かないのだと思っていたけど、一応ちゃんと斬れるのか試してみるか。

 僕は一瞬のうちにそう思って、ナイフで左の袖を斬ってみる。それと同時に、

「……今このナイフに魔術を仕込んだ」

 と春さんが言ってくる。 

「え」

 斬った袖を起点として、凍り始める僕の左腕。あわてているだけで、何もできない僕。

 上から水、いやお湯が降ってくる。そのお湯により、凍っていた腕が溶ける。先の水と同様に回復の作用がつけられているのか、僕はお湯によりやけどしつつ、即座にそのやけどが治るという不思議な体験をした。

「話は最後まで聞いてほしい」

 またも春さんから非難される。ほんと、おっしゃるとおりです。今回に関しては。

「さっき体験したと思うけど付加したのは氷の魔術。静止世界で最後におこなった情報の組み替えがうまくいっていれば必要ないけど、一応保険として。ドラゴンが出てきたら、そのナイフを使って」


 腕が凍るという一悶着があったが――主に僕のせいで――、春さんの指示通り、黒河さんのところへ向かう僕。

 途中ドラゴンが出てきた。春さんの話を聞く限り、魔物について何らかの情報を組み替えたのだと思う。いったいどんな組み替えをしたのか。とりあえずドラゴンが出てこないようにした訳ではないらしい。

 ドラゴンの攻撃をぎりぎりで避けつつ、春さんの指示通りにナイフでドラゴンを切りつける。ドラゴンが凍り、倒れる。非常にあっさりと。

 なんだろう、これ。春さんが付けてくれた氷の魔術が強いのだろうか。

 そんなことを考えている間に、僕は黒河さんのところにたどりついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ