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魔術師見習いと止まる世界  作者: 鞍多 奧夜
調律(デバッグ)
16/53

調律6

 ゴブリンが集まっている洞窟の一角に、大きな炎が生まれる。その炎により、多くのゴブリンが燃え尽き、消え果てる。

 これほどの威力の魔術は、美夏みかねぇやはるさんでは出せないだろう。当然僕にも無理だ。

 先の魔術を使った黒河くろかわさんが、倒れかける。すぐそばに、密着していたと言ってもいいほど近くにいた僕が、そんな黒河さんをしっかりと抱き止め、支える。

 僕は、腰に下げてある瓶をとり、その中の白濁した液体を黒河さんの口に無理矢理流し込む。

「ありがとう」

 意識を取り戻した黒河さんが、少しのぼせたような顔で、僕にもたれ掛かりながら、感謝の言葉を告げる。

 直後、先ほどの一角とはまた別の箇所に炎が生まれ、ゴブリン達を消滅させる。

 立った状態から、垂直に崩れ落ちそうになる黒河さん。僕は、彼女を無茶な体勢から支えようとする。なんとか支えられたものの、黒河さんの大きく柔らかいものを、容赦なく鷲掴みにしてしまう。

 ふむ。とても良いものをお持ちで。

 少し指を動かしながらそんな感想を抱いていたため、手を別に箇所に移動させるのが遅れてしまった。

 戦闘中だし、誰も見ていないのではと淡い期待を抱いたが、そんなことはなかったようだ。美夏ねぇが、すごい笑顔でこっちを見ている。おかしい。笑っているのに、なぜこんなに恐怖を感じるのだろうか。

 僕を見ていないで、近くにいるゴブリンを見て。僕はそう心から願った。

 美夏ねぇが再び戦いはじめるのを見届けた後、再度白濁した液体を黒河さんにのませる。

 再び発生する大きな炎。

 やはりすごい。僕は黒河さんを素直に尊敬していた。

 僕と黒河さんの二人がかりとは言え、二人以上の働きをできている。

 一に一を足すと二になるのは普通だ。だが、僕と黒河さんは魔術師として、間違いなく一人前に満たない。零に近いくらいだ。零に零を足すことで二人以上の働きができている。

 彼女は、魔術を使用する持久力がないことを克服するのではなく、魔法薬を使用することで回復することを考えた。しかし、自分一人では薬を飲むことはできない。そこで、僕に協力を依頼したのだ。魔術を使った後すぐに薬を飲ませるようにと。僕は、今回の依頼に対して、役に立つための策を考えることすらしなかった自分を情けなく感じ、素直に黒河さんに協力することにした。

 黒河さんのこの秘密兵器により、付近にいたゴブリンのうち、大多数は消滅している。余裕が出てきたため、僕は周りを見渡す。

 美夏ねぇは、遊撃として動いていた。ゴブリンの大群は黒河さんが消滅させるので、群れていない数体のゴブリンを相手取っている。美夏ねぇの電気をまとった蹴りにより、ゴブリンが二つに裂ける。使っているのは、身体能力強化の魔術と、電撃の魔術のようだ。

 春さんは、僕らチーム全体の防御を主に担っていた。見えない壁を出す魔術で、動くことができない僕らを守ったり、敵と接触する機会が多い美夏ねぇを、適宜守ったりしている。

 黒河さんは、僕にささえられて、固定砲台と化している。その威力はすさまじい。しかも、魔術を使うごとに、威力が増している。

 ただ、今の黒河さんの状態は、僕の精神上あまり良くなかった。薬をこぼしたり、飲むのを失敗したりしたことにより、ローブや口元に白濁した液体をつけたままである。魔術を酷使した疲れにより、のぼせているような状態と相まって、今の黒河さんはかなり扇情的に見える。その彼女を至近距離で、抱き止めているのだ。戦闘中とはいえ、いろいろとくるものがある。

「これで、さいごっ」

 そんな美夏ねぇの言葉が聞こえてくる。

 どうやら目に映る範囲のゴブリンは全て倒し終えたようだ。

 休憩などはとらず、僕らはそのまま洞窟の奥に向かって、周りを気にしながら慎重に進み出した。

 実際に周りを気にしていたのは僕だけだが。美夏ねぇは僕を責めるようにじっと見つめているし、黒河さんは、かろうじて足を動かしているが、僕にもたれ掛かり、目をつぶっている。春さんは、まわりを何も気にせず普通に前に進んでいた。

 洞窟のある箇所を過ぎた時、僕は違和感におそわれた。

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