調律2
「君たちのチームに依頼がある」
それだけ告げ、僕の机に数枚の紙を置き、去っていく教授。
少なからず動揺する僕、美夏ねぇ、黒河さん。教授に伝えられた言葉は、春さんを除く僕ら三人を驚かせるものだった。
「そんなに不思議なことなの?」
僕の隣に座り、教授がいる間も僕の方を向いていた春さんが、そのまま姿勢を変えず聞いてくる。僕の観察という指令を受けているとはいえ、そこまで徹底しなくてもいいのでは、と思う。
「私とそこのシスコンの能力判定にEがあるからよ。学園生の安全を考慮して、E判定の学園生がいるチームは依頼を受けられない。もちろん、頼まれもしないはずなの。それよりあなたたち何があったの?」
答えは黒河さんから飛んできた。余分な質問と共に。あと、家族を好きで何が悪い。
「なるほど。そういった決まりがあるんだ。私がアキヒコを見ている理由なら、ごく個人的なもの。詳細は秘密」
黒河さんは「姉だけではなく、新しく入った子まで。こいつのどこがそんなにいいんだ?」という顔で僕を見てくる。
春さんが秘した詳細を知っている僕は、それが勘違いだと知っている。しかし、それを指摘して良いわけもなく、もどかしく感じる。同じチームなのだから、黒河さんともできるだけ仲良くしたいのだが。
現状では、どう取り繕っても無駄だろうと判断し、教授に渡された紙を取り、それに意識を向ける。正確には、教授が適当においていっただけで、渡されてすらいないけれど。