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プロローグ
僕の目の間に凶刃が迫っていた。それは、前にあるものすべてを切り分ける、分離という言葉そのもののようだった。
その凶刃が、身体にふれる瞬間、音もなくただ消え去った。
「え……」
そんな小さな声が耳にとどいた。どうやら驚いたのは僕だけではないようだ。凶刃を放ったと思われる人物にとっても、予想外のことだったらしい。
「なら……これで」
その人物はそうつぶやくと、先ほどの凶刃とは異なる何かを僕に向けて放ってきた。
それが何かはわからない。ただ、それに触れたものは何も残らず、消えていることだけは見て取れた。それは消滅そのものであるように思えた。
その何かが、僕の身体にふれる瞬間、ただ消え去った。