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君を泡にはしない  作者: よろず
おまけ
8/9

豆太の一日1

 僕は豆太。柴犬、二歳。

 僕の基地はね、お家のリビング。みんながいつもいる場所。

 おもちゃがね、たくさんあるんだよ。

 ロープでしょ、プピプピ音が出るお人形でしょ、あとね、ボール!

 一人でも遊ぶけど、咥えて持って行くとみんなが遊んでくれるんだ。

 お気に入りの僕のベッドで仰向けで寝てたら、足音が聞こえて来た。これは、湊吾(そうご)だ!

 急いで起き上がって、お座りで良い子に待つ。尻尾が勝手に動いちゃう。だってこれから、湊吾(そうご)は僕と遊んでくれると思うんだ。


「おはよ、豆太。ちょい待ってろ。」


 眠そうに欠伸した湊吾(そうご)がわしゃわしゃって撫でてくれる。

 あぁ舐めたい!舐めたい!舐めて良い?良いよね?


「わかったから、すぐ準備すっから待ってろって。」


 朝のご挨拶で湊吾(そうご)の顔をベロンベロン舐めてたら、笑った湊吾(そうご)が立ち上がる。

 待つ…けど、待てない!

 顔洗って歯を磨いてる湊吾(そうご)の足下うろうろ。でも良い子に待たないとダメだから、お座り。

 あぁでも尻尾が動いちゃう!ブンブンしちゃう!


「お待たせ。行くか!」


 やったね!お散歩だ!

 湊吾(そうご)が上にお洋服着てないから、海で遊ぶんだってわかった。海はね、しょっぱいの。そんで、楽しいの!

 他の人がいない朝は僕は自由!でも良い子だから湊吾(そうご)の言う事聞くの。おりこうさんだから!


「豆太!取って来い!」


 ボールだ、ボール!

 取って戻ったら、湊吾(そうご)は海の中にいた。だから僕も追い掛ける。深い所に行くと怒られるから、怒られない場所まで。湊吾(そうご)の側は、怒られない場所。


「気持ち良いな?」


 うん!とっても!冷たくて気持ち良いよ!しょっぱいけどね!


「ちょい泳ぐから、待ってろよ?」


 あい!波くんと遊んでます!

 追い掛けると逃げる癖に、追い掛けて来るの!変なの!


「豆太、おはよ。」


 波くんに遊んでもらってたら、お姉ちゃんが来た。えっとね、七海ちゃん!七海ちゃんだ!七海ちゃん好き!


「今日も砂だらけだね?湊吾(そうご)さんは?」


 泳いでる!泳いでるんだよ!呼ぶね?


「ワンッ、ワンッ、ワンッ」


 湊吾(そうご)!帰って来て!って呼んだら、僕の声に気付いた湊吾(そうご)が手を振った。

 嬉しくて、僕の尻尾はブンブンブン。


「すごいね?豆太は良い子。」


 七海ちゃんに褒められた!

 七海ちゃんは良い匂い。舐めると柔らかい。湊吾(そうご)とも、おかあさん、おとうさんとも違う。


「おはよ、七海ちゃん。」

「おはようございます。豆太見てるんで、気にせず泳いでて下さい。」

「七海ちゃんも水着でくれば良いのに。」

「あ、中に、着てます…けど、恥ずかしいんで、大丈夫です。」

「この時間泳ぐの、気持ち良いよ?」


 んもう!僕の事、忘れてるでしょ!

 でも僕、空気読める奴だから、伏せて大人しくするんだ。

 湊吾(そうご)は七海ちゃんが好き。

 七海ちゃんも湊吾(そうご)が好き。

 僕、知ってるんだ。

 湊吾(そうご)が海で泳いでると、七海ちゃんはうっとりって顔してる。湊吾(そうご)の体も、ほんとはじっと見たいの。でも恥ずかしいから、赤くなってすぐに俯いちゃう。

 僕のお兄ちゃんは真っ黒海の男だからね!見惚れちゃうよね!


「え?あの!湊吾(そうご)さん?!」


 大変!七海ちゃんが連れ攫われちゃった!

 湊吾(そうご)が抱っこして、七海ちゃんを海に連れて行く。僕も呼ばれたから一緒に行く。


「ダメ!やだ!きゃあっ!」


 ばっしゃーんって、七海ちゃんは海に投げられちゃった。


「ほら、気持ち良いだろ?」

「もう!乱暴です!」


 湊吾(そうご)はにかって笑ってる。

 七海ちゃんも、怒ってるふりで楽しそう。

 僕も一緒で、楽しいよ!

 バシャバシャパシャパシャ、海で遊んで、砂だらけの僕らはずぶ濡れ七海ちゃんを護衛する。

 僕はリード付けられて、湊吾(そうご)は七海ちゃんの事も手を繋いで捕まえてる。

 七海ちゃん、嬉しいんだね?わかるよ!僕も湊吾(そうご)と一緒、すっごく嬉しいもん!


「今日は、お店の方ですよね?お邪魔しても、良いですか?」

「うん。待ってる。」


 二人ともゆるゆるに笑っちゃってさぁ、見てらんないよ!もう!

 七海ちゃんをお家まで護衛した後は、僕と湊吾(そうご)は走って帰る。お腹ペコペコだもんね!でもその前にお風呂。湊吾(そうご)と一緒に泡々になって、綺麗になる。綺麗になったらブラッシングしながら乾かしてもらう。

 これ、気持ち良いんだぁ。

 湊吾(そうご)優しいから、とっても上手なの。おかあさんがやると、乱暴でちょっと痛い。おとうさんは、まぁまぁかな?

 ご飯食べてお腹一杯になったら、僕はねむねむ。

 おとうさんとおかあさんに撫で撫でされて、行ってらっしゃいする。でももう眠くて、ベッドでうとうと。

 湊吾(そうご)も僕を撫でてから、何処か行っちゃった。

 静かなリビングで、僕は夢を見る。

 このお家に初めて来た時の夢。

 知らない場所。知らない人。怖くて、ビクビクだったおチビの僕。

 だけど僕の新しい家族は優しくて、僕はすぐに楽しくなった。

 たくさん遊んでくれるし、ご飯も美味しい。

 大好きなみんな、早く帰って来ないかなぁ。

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