殺し屋さんの日々。
「あのさぁ、派手すぎるんだよ」
足元に転がるものを見つめながら、女は言った。
「何がでしょうか?」
ナイフを片手に、少年は聞き返す。
「やり方がだよ!床は汚いし、おまけにお前も汚いしで・・・もっと他にも方法があるだろ」
いちいち説明を乞われたのが気に入らなかったのか、少しキレ気味だ。
「どうしたんですか~?そんなにピリピリしちゃって。いつもはそんな事、言わないじゃないですか~」
女の機嫌が悪い事など御構い無しに、少年はふざけた様なニヤケ顔で答える。
女はその顔に余計ムカついたのか、軽く舌打ちをして言い返す。
「いつもならな。だが今日は状況というか、環境が全く違う」
それを聞いた少年は、何を言っているんだコイツは?みたいな顔をして言った。
「この国に来る前にも言っていた気がしますが、どういう事ですか~?」
「あぁ言ったな。そしてお前は私の説明に『は~い』だの『バッチリで~す』だのと返事をしていたものだから、当然理解しているものと思っていだが?」
「ゎ~・・・何に対して返事をしていたんでしょうね、僕?」
害虫を見るかのような目を向ける女に、少年は引きつった笑顔で答える。
当然、呆れてその場を去って行く女を少年は慌てて追いかける。
「待ってくださいよ、すいませんでしたって~。あの時は徹夜明けで眠かったんですよ~、勘弁してくださいよ~」
歩きながらまるで必死には聞こえない謝罪を述べる少年に、女は苛立ちを抑え歩きながら説明を始める。
「ここが日本だからだ」
「いやだな~、そのくらい知ってますっよ~。その為に日本語もマスターしてきたんじゃないですか~」
いちいちイチャもんをつけてくる少年を睨み、女は二度目の舌打ちをしてから説明を続ける。
「そういう事じゃない。日本という国は他国と違って圧倒的に融通が利かないという事だ」
「なるほ・・・ど?」
いかにも全く分かっていないであろう少年の為に、女はさらに説明を付け足す。
「要するに、警察が優秀なんだよ」
それを聞いた少年は少しは理解はしたようで、女に質問をし始める。
「はいは~い!優秀とはどのくらいですか~?」
謎のテンションの少年は無視して、女は質問の答えだけを考える。
「とりあえず、今回の仕事は確実にニュース行きだろうな」
「わ~お!それは優秀だ・・・ん?それって警察が優秀なんですか~?」
女の答えに、少年は本当に疑問んい思ったような顔をしている。
「まぁ、私たちの稼業に日本って国は天敵って事だよ」
「あれれ~?もしかして誤魔化しました?」
「黙れ殺すぞ」
「ワー、コーワーイー」
少年がクスクスと笑う横で、女は三度目の舌打ちをした。
*―――――*
次の日、午後。
とあるマンションの一室で、無残な姿で死亡している男が発見されたというニュースが世間を騒がせた。
テレビ画面に事件現場のマンション入り口付近の映像が流れる中で、テロップと共にニュースキャスターが緊張感のある声で説明をしている。
『死因は、男性に無数の刺し傷があり出血性によるショック死とされています。なお犯人は今だ不明、設置されていた防犯カメラにも男性の死亡推定時刻付近の映像が記録されておらず、捜査は難航している模様です』
本当は連載にするつもりで、これはプロローグ的なものだったんですが・・・。
とりあえず短編にしてみました・・・短編が作りたかったんです。