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拾った少女とお話しました。

ブックマーク16件!ありがとうございます!

 真っ赤な夕焼け空が大地を赤く染め上げ、幻想的な光景を作り出す。周囲には人どころか動物の影すら見えず、その静けさが景色の美しさをさらに際立たせていた。


 詩的に語ってみたは良いが、すごく恥ずかしい!


(なんだコレ!いや、仕方ないんだよ。なんとなくそんな風に風景を楽しんで現実逃避してみたい心境だったんだよ。うわー、数秒前の俺消えろー、消えてしまえー)


 俺がひとりあまりの恥ずかしさに悶絶していると、背中でもぞりと何かが動いた。言うまでも無いだろうが、さきほど見つけた少女、ミレアである。


 当初の予定よりもかなり遠くまで来てしまったせいで、まだ半分も進んでいないというのに、もう日が沈みかかっているのだ。

 他にもワイバーンにやられた傷やら肉体的、精神的な疲労もある。その上子供ひとりを背負って歩いているのだから遅々として進まないのも無理はなかった。


 未だにミレアは目を覚ます気配はない。先ほどのように身動ぎはするようになったので、おそらく気絶していると言うよりは、眠っていると言う方が正しいのだと思う。


 多少辛い道のりになってはいるが、それで良かったとも思うのだ。何せ、帰り道にはデルクたちの死体があるのだ。父親の死体など見せて良いものでは無いだろう。その無残な現場を通り過ぎる際、お金や食料、毛布など利用できそうなものは頂いておいた。悪いとは思うが、娘のためだと思って諦めてほしい。


 他にも使えそうなものはいくつかあったが、さすがにこれ以上荷物が増えて移動速度を遅くするのも良くない。村に帰ったら事情を話して、後日改めて取りに来るのがいいだろう。その時、もし運よく死体が残っているようなら、埋葬くらいはしてやろう。死者に鞭打つ趣味は無い。


 日暮れになれば気温はかなり低くなるため、防寒のためにミレアと自分の体を包むようにして毛布を巻きつけておく。二人分の体温であれば多少はマシになるだろう。


 道のりの半分くらいは進めただろうか、と言うところで俺は動きを止めた。体が限界だったというのもあるが、栄養補給もしないまま歩き続けるのは効率が悪いうえに危険だと判断したからだ。


 とはいえ、動かなければ体温が奪われてしまうため、それはそれで危険だ。なので、火を起こす必要がある。


 こんなこともあろうかと、馬車の破片とボロ布の切れ端(俺の着ている服と同程度の品質)を持ってきておいたのだ。いや、最初から適当な場所で休むつもりではあったんだけどね?「こんなこともあろうかと」とか一度は言ってみたいじゃん……言ってみたいよね?


 火種は火口箱をデルクが持っていたのでそれを拝借しておいた。二年も貧乏生活していれば原始的な火の起こし方などお手の物だ。


 それから約三十分ほどかけて、何とか無事火種を焚き火にまで発展させ、額の汗を拭いながら腰を下ろした。そこで瓦礫の中から回収した干し肉を軽く炙る。


「……起きたのか?」

「……」


 返事は無かったが、なんとなく視線を感じていた。小さくため息を吐いてから、ミレアの方を向く。


 目が合った。てっきり寝たふりでもするのかと思っていたので意外だ。しばらく無言で見つめ合っていたのだが、先に俺が沈黙に耐え切れなくなり、再びミレアに向かって話しかけてみた。


「どっか痛いとことか、あるか?」

「……」

「どのあたりまで覚えてる?」

「……」

「答える気が無いならいいや、とりあえずコレでも食っとけ」


 そう言って、炙っていた干し肉を差し出す。それすら受け取ろうとしないので、仕方なく、もう一本の方を食って見せて安全な事を示してみる。

 するとわざわざ俺のかじった方を奪って食い始めた。用心深いのは良い事だが、お前仮にも女だろう……。いや、男装までしてるんだから、その辺りは気にするだけ無駄なのか。


 若干呆気にとられてしまったが、そちらでいいのならそれでいい。俺は差し出したままの状態で放置されていた干し肉を改めて口に運び、よく噛んで味わった。


(そういえば肉なんていつぶりだろう?)


 確か一年くらい前に父親が狩りに成功したとかで、名前も知らない動物の肉を食ったのが最後だ。その時食べた物も今食べている干し肉の三分の一、いや四分の一ほどの大きさしかなかったはずだ。……うん、ちょっと固いけど、旨い。うわ、なんか自分の感覚が底辺過ぎて泣きそう。


「……どうして、泣いてるの?」

「えっ?」


 どうやら本当に泣いていたらしい。え?どうしよう。お肉久しぶりに食べたから、とかこの雰囲気で言えないだろ。とりあえず涙を腕で拭い、何か言い訳を考えるが何も思いつかない。このまま黙っているわけにも行かないだろうと発した言葉が


「なっ、なんでもない」


 コミュ障か?!とか言いたくなったけど仕方ないんだ。二年でかなり喋れるようになったとはいえ、まだ結構怪しいところも多いし、もともと頭の出来だって良い方じゃなかったし……くそう、今度は別の要因で泣きそうだ。


 これ以上醜態を晒すわけにはいかない。そうだ、話題を変えよう。


「そっ、それより!お前は怪我、大丈夫なのか?」

「……たぶん」

「たぶんじゃダメだろ。具体的にどこが痛いとか無いのか?特に頭とか、痛いならすぐ言えよ!」


 まあ、言われたところで何ができるでも無いのだが、なんとなく勢いで言ってしまった。……というか普通に会話できてるな?警戒は解けたのだろうか?


「……頭は、ちょっとだけ痛い」

「え?ちょっと見せて」


 そういってミレアに近づく。逃げられたり、怯えられたりしないかと、密かに心配していたのだが、素直に見せてくれた。こちらとしては変に警戒されたままよりマシなんだが、スムーズすぎて逆に不気味だ。


「頭、どのあたりが痛い?」

「……後ろの方、かな?」


 そう言うので、後頭部の辺りから軽く触れて行く。


「痛っ!」

「あっ、ごめん。大丈夫か?」

「……うん」

「あー、これたんこぶが出来てるな。この水袋でも当てて少し冷やしてみるか」


 そう言って、腰に下げていた水袋を外して、痛まないようにそっと患部に当てた。


「どうだ?痛くないか?」

「……うん」

「良かった」


 一応確認してみたが、血も出ていないし、こぶ自体も大きなものじゃない。おそらく大丈夫だと思う。もし脳内出血などになっていても、どちらにせよ俺の手には負えないし、今できるのはこれが精一杯だ。


 ミレアの様子もかなり落ち着いてるみたいだし、今後の事も話しておくか。


「なあ」

「ん?」

「お前、これからどうする?」

「え?」

「ああ、急にこんなん言われても困るよな。えーと、俺はこれから村に帰る予定なんだが、とりあえずお前も一緒に連れて行こうと思ってる。ここまではいいか?」

「一緒に行くの?」

「とりあえずな。ここから一番近いのが俺の村だし、その方がいいと思う」

「……わかった」

「よし、それで問題はそのあとだ。もしお前の面倒を見てくれるような知り合いがいるなら、その人のところに行った方が良いと思う。そういう人誰かいるか?」


 「母親とか」とは言えなかった。それを言ってしまえば必然的に父親の事にも触れてしまう。その場しのぎとは言え、なんとも小賢しい聞き方だ。


「……いない」

「そうか。……あー、その、なんだ……」

「ねぇ」

「ん?なんだ?」

「あの人たちがどうなったか……知ってる?」


 思わず息をのんでしまった。彼女はどのような心境でその言葉を発したのだろうか。ここで正直に父親が死んでいる事を話してしまっていいのか?ここは知らないふりをした方が良いのか?


 いや、黙っていてもいつかは知る事になる。変に誤魔化すよりも正直に伝えたほうがいいだろう。というより、嘘をつき通せる自信が無い。


「知ってる」

「教えて」

「……死んでたよ。五人全員」

「そっか」


 ……あれ?嫌に軽くないか?あ、もしかしてアレか?あのショックが大きすぎて上手く感情が出せないとか、そういうやつ?うわ、どうしよう、どうしたらいいんだ?というか、間接的にとは言えワイバーンをけしかけてこの子の父親殺したのって俺なんだよな。うわ、どうしよう、罪悪感が凄い。いや、でも因果応報というか、自業自得というか、デルクのせいで村も酷い目にあったんだし、一方的に俺が悪いって訳じゃ、ああでもこの子に罪があるわけでもないし……、恨まれるかもしれないが、ここは正直に言っておくか?嫌だなぁ、ここで謝るのも自己満足で終わりなんだよなぁ。


 さんざん悩んだ結果、正直に話して謝罪する事にした。思考を放棄したわけでは決して無い。


 そう決めたは良いものの、すごく言いだし辛い。やめるなら今のうちだぞ?と頭の中で囁く声が聞こえるが、もう謝罪すると決めたのだ。よし、言うぞ!やれ、言うぞ!


「あ、あの……、ごめんなさい!」

「へっ?」

「あのワイバーン、馬車まで連れて行ったの俺なんだ!だから!ごめんなさい!」

「え?……あ、うん」


 ……ん?それだけ?


「あ、あのさ、俺今結構重大な発言したと思うんだけど」

「……そうだね」

「俺が言うのも変だけどさ、その、何か無いの?」

「何かって?」

「その、お前のせいだったのか!とか、さ」

「そういうの、よくわかんないや」

「わかんないやって……」


 想定外に軽かった。この子に関しては先ほどから予想外な反応ばかりである。いや、変に恨まれたりしないぶん、俺としてはいいんだけどさ。けどなんか、これでいいのかなぁという思いもあったりなかったり……。


「……かげ……だ」

「ん?ごめん、聞こえなかった」

「あっ、えと独り言だから気にしないで」

「あ、うん」


 いろいろ言いたい事はあるが、とりあえず今はこれでいいか。あとは……、そうだ、結局彼女が今後の生活をどうするか聞けてないな。身寄りも無いみたいな事言ってたし、そうなると村で生活することになると思うけど、どうしたもんかな?とりあえず聞くだけ聞いてみるか。


「あの、それでさ」

「うん?」

「さっき、行くところがないみたいな事を言ってたと思うんだけど……」

「ぁ……」

「その、ね。あの罪滅ぼしってわけでもないんだけど、その、良かったらうちの村でしばらく暮らさない?ちょっと、いや、かなり食事は質素だし、貧乏だけど、どう?」


 自分で言っててなんて魅力のない村なんだと再確認してしまった。それでも、しばらく彼女の答えを待っていると。


「うん、その、あの……お世話になります」


 そんな返答を聞けたことで、ひとまず安堵した。


「よかった。それじゃ、もう少し休憩したら移動しようか」

「え?けど、夜移動するのは危ないって……」

「うん、もちろんそれはわかるんだけど、今野営できるような装備を持ってないんだ。焚き火を夜の間中絶やさなければ多少はマシになると思うけど、燃やす物がもう手元に無いからそれも無理だし、枯れ木を集めるのも危険だから無理。そうなると、多少無理してでも村に向かって歩いたほうがいい。もう少し我慢して動いてもらう事になるけど、いいか?」

「うん、そういうことなら仕方ない」

「ありがとう」


 俺が礼を言ったところでミレアは一瞬不思議そうな顔をした後、少しだけ笑みを浮かべた。いや、可愛いんだが、あんな話した後でこんな普通に話せるようになるものなのか?なんとも不思議な子だ。


 脳内でハテナマークを量産しながらも、体はしっかりと休めて少しでも疲れを取っておく。気を抜くと、思い出したように体が痛むので、本来の意味で休息は全くと言って良いほどとれないのだが、もう少しの辛抱だと自分を鼓舞して立ち上がった。


「それじゃ、そろそろ行こうか」

「うん」


 俺が出発を促すと、ミレアは素直に立ち上がる。正直この子が何を考えているのかさっぱりわからない。本心は怒り狂っていて、虎視眈々と復讐する機会を待っているとかそういう類だろうか?なにそれ超怖い。


「あ、そういえばまだ名乗ってなかった。俺はライズ。これからよろしく」

「ミレア、です。こちらこそよろしく」


 どうか平穏無事に暮らせますように。そんな事を考えながら村への道をひたすら歩く。


 道中、ふたりの間にはほとんど会話は無く、結局村に到着したのは明け方近くになってからだった。


やはりプロットなしで書くと内容考えるのに苦労しますね。

その分、発想が自由というかなんというか、これはこれで書いてて楽しいのですが、読んでる方はどうですかね?チラッチラッ

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