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気付けば魔眼がありました。

プロットも何もない完全見切り発車作品です。気分次第で投稿が早かったり遅かったりすると思いますが、皆さんのお暇つぶしにでもなれば幸いです。

 最近、物語の中でよく見かける設定。異世界転移、または異世界転生。


 世界を渡る際、神やら悪魔やら、とりあえず超高位な存在から何らかの恩恵、能力を授かって向こうの世界でいろいろやる……という物だ。


 俺自身、そういう棚ボタ的な力でやりたい放題、暴れたい放題を繰り広げる物語を読むのは嫌いじゃなかった。

 努力が嫌いだとか、真面目に生きるのが面倒くさいとかではなく、暇を潰すために読むような事が多い俺にとって、妙にリアルで鬱展開が待っていそうな読み物よりも、そういう物語の方が、気分的に都合が良かったという、ただそれだけの理由だ。


 だから決して、そんな展開を望んでいたわけではないし、あくまで創作物の中の話だと割り切っていたわけで……


 まさかそんな小説の主人公みたいな事態に社会人10年目、三十路寸前の俺が陥るなんて、微塵も考えていなかった。



 気付けば俺はそこに居た。目の前には数人の北欧系っぽい色白な少年少女たちが心配そうな顔で覗き込むように俺を見ている。どうやら俺は倒れているらしいと気付いて、上半身を起こした。


 頭に鈍い痛みを感じる。おそらく何かの拍子に倒れて頭を打ってしまったのだろうが、それにしてもこの状況はおかしい。


 まず、さきほどまで俺がいたのは駅のホームだ。帰宅のためにスマホで小説を読みながら電車を待っていただけのはずなのに、今は見知らぬ場所で少年少女たちに囲まれている。理解しろと言う方が難しいだろう。


 さきほどから子供たちが、俺に何やら話しかけているのだが言葉がさっぱりわからない。周囲を見回してみても、牧歌的な風景が広がるばかりで駅のホームとは似ても似つかない。なにより日本人らしき人がひとりもいない。

 痛みでぼんやりしていた頭も、ハッキリするにつれて不安が大きくなる。


 とりあえず立ち上がろうとしたところで、ようやく気付いた。

 立ち上がったにも関わらず、視線の高さが目の前の少年少女たちと変わらない。いや、子供達よりも低いみたいだ。身長が低くなっている。それだけではない、手も足も何もかも小さく色白で、記憶の中の自分の体とは全く違うものだ。思わず声をあげて、その声さえも妙に高かった事に戸惑った。


(どういう事だ?何が起きている?)


 そう考えるが、ひとつだけ荒唐無稽な考えが俺の頭には浮かんでいた。以前、小説でこんなシチュエーションを見た気がする。小説のタイトルも最終的にどうなったかもほとんど思い出せないが、異世界人の肉体に主人公の魂が入り込む、なんてものだったはずだ。


 主人公の魂を宿してしまった異世界人の魂は、消えてしまったか眠ってしまったかで、結局その主人公が、その異世界人として過ごしていくなんて物語だった気がする。


 まぁその主人公は、もともとその肉体が持っていた情報のおかげで、常識やら何やらは最初から身に付けていたようだから、同じという訳ではないが、今の俺に近い状態ではあるはずだと思う。


(夢か?)


 自分が思っている以上に仕事で疲れていて、気付かないうちに駅のホームで眠ってしまったのだろうか?それにしては感覚が妙にはっきりしている気がするが、そういう夢もあるのかもしれない。


 ベンチに座っていたはずだから、事故に遭う事は無いと思うが、財布やらが盗まれたりする可能性もあるし、できれば早めに目覚めてしまいたい。……たとえ中身が千円弱しか入っていないような物だとしてもだ。


 こういう時の定番として、頬をつねってみるというのがあるが……とりあえずやってみたら痛かった。強くやりすぎて頬がヒリヒリする。目が覚める気配はない。


 自然に目が覚めるまで待つしかないのだろうか?もしそうなら、どうせ夢だ。いっそ楽しんでしまおう。


 こういうときは定番としてステータス画面の確認だろう。俺の夢の中だと言うなら表示されて当然だと思う。


*―*―*―*―*―*―*―*

ライズ 男 4歳

Lv.1

魔力2

筋力1

防御1

素早1

器用1


スキル:

ユニーク:初心の魔眼

*―*―*―*―*―*―*―*


 そんな事を考えていたら本当に出てきた。数字を見る限りでは弱いとしか思えない。

 しかし、ユニークという欄にある魔眼というのは良い!なんて中二くさいんだ!実に俺の子供の部分を煽ってくる。ただ効果は一切わからないな。


 まぁ一旦そこは置いておこう。問題は名前と年齢だ。俺は藤原義実(ふじわらよしみ)であってライズなんて名前じゃなかったし、年齢も二八だ。名前の響きが女っぽいかもしれないが、列記とした男だ。


 もしこれが夢なら、このライズという名前は俺のセンスだろうか?……いや、考えまい。今の俺はライズ4歳、元気いっぱいな男の子。うん、気持ち悪いけどいいや、気にしない!


 なんにせよ、不親切な夢だ。言葉がわからなければ会話すらままならないじゃないか。未だに何か話しかけてくる目の前の子どもたちの声を聞きながら、そんな事を思う。


 英語ではないのは確実で、そのほかの言語となると余計にわからない。そもそも外国語などほとんどわからないのだから、もしかしたら適当に外国語っぽく聞こえているだけの言葉なのかもしれない。


 一向に返事をしない俺に我慢ができなくなったのか、近くにいた女の子が突然俺の手を掴み、どこかへ連れて行こうとする。俺自身これからどうしようか困っていたので、そのまま流れに身を任せることにした。


 俺の手を引く女の子は、やはり俺よりも大きい。年齢は、外国人っぽいのではっきりとはわからないが、おそらく七、八歳くらいではなかろうか?長くボサボサの髪は金髪で瞳の色は赤身の強い茶色。少しやせ気味であまり清潔感は感じられない。


 他の子供たちも心配そうな顔つきのままゾロゾロと付いてくる様子を見れば、この体の元主は結構愛されていたのだろうと推測できる。その子供たちも、目の前の少女同様に綺麗とは言い難い身なりだった。どうもここはあまり裕福ではないらしい。


 少し歩いたところにあった質素な作りの家(この場合は小屋と呼んだ方が正確かもしれない)に辿り着くと、間髪入れずにその家の中へと連れて行かれる。ここがライズの家なのだろうか?状況的に考えると、目の前の女の子の家という可能性もある。


 家の中に入ったところで、女の子は俺の方へと向き直り、早口に何か言うとそのまま家の奥へと走って行ってしまった。おそらく「ここで待ってろ」的な事を言われたのだと思うのだが、なんとなくそう感じただけなので確信は持てない。


 そのまま待っていると、先ほどの女の子と共に四十代半ばくらいの女性が慌てた様子でこちらへ走ってきた。その女性は俺の目の前まで走ってくると、早口に何か言いながら俺の体をあちこち確認しだした。


 おそらくこの人がライズの母親なのだろう。手は荒れてカサカサだし、目元や口元などは深い皺ができている。髪の毛の手入れもされていないようで、なんというかみすぼらしい感じだ。


 こう言っては失礼だが、この人が母親だとするとライズの容姿はあまり期待できそうもない。


 と、あまりにもやることが無いためにくだらない事を考えてしまっていた。気付けば母親らしき人物の確認作業も終わったらしく、俺の顔に優しく触れて何やら言葉を投げかけてくるが、なんと言われてもさっぱりわからないため、返事のしようがない。


 結局わけのわからないまま、今度はその母親らしき女性に手を引っ張られ、子供部屋らしき場所へ連れて行かれたかと思うと、そのままボロくて変なにおいのする毛布っぽいものに包まれて寝かされてしまった。


 いろいろやってみたい事はあるが、ここは素直に従っておくのがいいだろう。しばらくの間、俺をここまで連れてきた少女が同じ部屋の中にいたようだが、退屈になったのか再び外へと出て行ったみたいだ。


 部屋にひとり残された俺は、まずステータスについて考える事にした。

 まずはじめに魔力。ライズの能力の中で一番高い値だ。と言っても二しかないのだが……。なんにせよ、魔力と言う項目がある以上、魔法がある可能性が高い。いや、俺の夢の中なのだからあって当然だろう。

 問題は、どういう仕組みで発動するかだが、これもステータスが表示された時同様に気合でなんとかなるものだろうか?


 物は試しとばかりに、適当に何か念じてみるが、特に何か起こる事はなかった。念のためステータスを確認してみるが、こちらにも変化はない。どうやら何でも思い通りになるほど安易な夢じゃないらしい。


 他のステータスも確認してみたいが、どう確認したらいいのかわからない。とりあえず腕立て伏せでもやってみようと思い立ち、行動に移すが十回を超えたあたりで腕が悲鳴を上げ始めた。


 一瞬ショボイと思ったが、よく考えればまだ四歳なのだ。決して悪い数字じゃない……と思いたいが、実際のところはかなり微妙だと思う。

 とりあえず常識はずれの身体能力というわけでは無さそうだ。普通か、下手をすればそれ以下の筋力値だと考えたほうがいいだろう。


 そうなると、他の能力値にも期待できそうにない。だとすると……やはり魔眼か。

 とはいえ、【初心の魔眼】と言われてもピンとこない。一体どういったものなのだろうか?とりあえず魔眼の使用を念じてみるが、発動したかどうかもサッパリわからなかった。


 鏡どころかガラスさえないようなこの場所では、身体的な変化があったかどうかさえ確認できないのだ。漫画やアニメのように、瞳の部分に魔方陣とか浮かび上がってたらいいなぁ……などとバカなことを考えていたが、確認しようがないのですぐに止めた。


 結論、現状何もわからない。

 俺は深いため息を吐く。次に起きた時は見慣れた駅のホームであることを期待して、おとなしく眠ることにした。


作者から登場人物に一言

作者「死なないでね」

ライズ「……」

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