第三話 試し殴りをするの
まだまだ対話中心の説明会が続きます。
2014/9/27 スキルの並び順の表現変更
「なぁ少し質問いいか?」
「なんじゃ妾は今いそがしいのじゃ誰かさんのせいでのう?」
「悪かったな」
「いったい何用じゃ」
「サフラン・コードで神殿に行ったら急にGAME OVERになったんだ。あれはお前の仕業か?あの神殿にいた女神とお前はなにか関係があるのか?」
浅那としてはずっと気になっていなのである。実はこの女神(自称)がサフラン・コードの女神でゲームの世界から飛び出してきたとか。そんなことを期待して聞いたのだ。
「あぁ、あれのことかの。いかにも、あれは妾がやったのじゃ。だがお主が考えているような理由じゃないぞ?」
「口に出してたか?」
「いや、口に出してはおらんわ。じゃが大体の感情は理解できる」
「そいつは厄介だな」
「もっと讃えるがよいのじゃ敬えばよいのじゃひれ伏すがよいのじゃぁぁぁ」
「帰ってもいいか?」
「ちょっと待つのじゃ。今のはすまなかったのじゃ」
「分かればいいんだ。ほら、こうべを垂よ」
「立場が逆なのじゃぁぁぁ」
「話を戻してもらっていいか?」
「う、うむ。GAME OVERになった理由じゃよな?特に深い意味はないのじゃ」
ふんぞり返る女神(自称)
「あ?」
取り敢えず睨む。
「わぁぁぁ。す、すまぬ。強いていうならお主を寝させるためなのじゃ。なぜか今、妾ゾクゾクしてしもうた。」
「は…………?」
「あのままプレイしてたらお主オールする気じゃったろ?そうなると今まで覗き見してた身としては顛末が見えてしまうのじゃ」
「どういうことだ?」
「つまりお主が授業中に昼寝をしてこの世界に来ても寝ぼけたままで話をまともに聞かない事を恐れたのじゃ」
「成程分からないでもないな。ちなみに10時間後にした理由は?それに学校じゃなくてもあの時点でお前が出てくればよかっただけじゃないか?」
「なに、1時間や2時間では手ぬるい。10時間後にしとくか、ちょうどお昼じゃし。みたいな感じじゃ。ついでに妾が撮りだめしていたアニメを見終わるのが8時間かかるとして仮眠時間を入れての10時間じゃ。それに学校でやった方が送料も浮くしのう。うむ、やはりお金は大切じゃの……」
「1つだけ願いがある」
「お主、いったい幾つ願うのじゃ。まぁよい、なんじゃ」
「一発ぶん殴っていいか?」
「イヤじゃ。ダメなのじゃ。そんなことしたら……妾の新しい扉がぁ……うっ……はぁあん……こんなの……こんなのって……初めてなのじゃぁ……」
「きめぇ」
殴っといた。やっぱりスッキリするな。うん。でも『女性には優しく』がポリシーなのに簡単に殴ってしまった。意志が弱いな、自重しよう。と思いながら女神(自称)を見ると、肩を大きく上下させ息を乱している。うん、やっぱりキモイ。忘れていた。あいつは『女性』ではなく『ただの変態』だ。だからといって殴っていいわけではないが変態だからしょうがないな。
「ひどいのじゃーか弱き乙女を殴るなんて」
「何がか弱き乙女だ。お前だってどうせ町を壊滅させたんだろ。おい、何で目を逸らす」
「そんなことより他にあるじゃろう」
「送料がどうだかだったな?」
「そうじゃ」
「どういうことだ?」
「なんと今20人以上を一気に異世界に召喚させると送料がタダになるのじゃ。タダより高い物は無いというが、やはりタダは良いものじゃのう」
どこの通販だよとツッコミたいがほおっておく。
「ということはオレの他にも誰かいるのか?」
「答えはイエスじゃ」
「オレの知っている人か?」
「すまぬ……イエスじゃ。お主のクラスメイトじゃよ。それにもしかしたら他の神も誰かを連れて来るかもしれん」
「……全員が適正者だったのか?」
「……それについては、全員が全員というわけではないが異世界人というだけでステータスにプラス補正がかかる。そうそう死にはしないじゃろう」
「……許可はとったのか?」
「いや、説明はするが拒否したとしても無理矢理連れて行く」
「なるほど、オレも意思に関わらず連れて行く予定だったのか」
「すまぬ、それについては頭を下げる事しかできん」
「まぁいいさ。気にするな。ここで何を言ったとしても何も変わらないだろ?」
「その通りなのじゃ。お主意外と淡白じゃのう」
「しょうがないだろオレはオレで他人は他人だ」
「……そういう考え方は好きなのじゃ。ありがとうなのじゃ。妾は許されてはいけない筈なのに……」
「ん、何か言ったか?」
あまりにも小さな声だったので聞こえなかった。
「いや、何でもないのじゃ。ではそろそろ10の祝福を与えるとするかの」
「あぁ、頼む」
女神(自称)が指を鳴らす。すると黒板に文字が浮かび上がってきた。
「この空間にいる限りやり直しが効くのじゃ。色々試してみて、好きなスキルを選ぶのじゃ」
どうやら五十音順に並んでいるようだ。上の方には『愛の力』なんてスキルがある。どうやらパーティーの親密度が高いと攻撃力が上がるスキルのようだ。そんなスキル使うやつ共々、爆ぜればいいのに。
「目の前に手を翳してみるのじゃ」
言われた通りに両手を前に出し手首をだらんとさせ、キョンシーになり女神(自称)目掛けてジャンプする。
「こ、こないでたもぉーや、やめて欲しいのじゃー。妾、そういうのはホントに無理なのじゃー」
本気でびびってる。オレの事言えないじゃないか。すごいやつだとばかり思っていたから普通の面もあるんだな。と思い、少しだけ親近感がわいたような気がしないでもない。こいつもまともな人物だったんだな……。
「はぁはぁ、でもその危機感こう、妾の何かを刺激するのじゃぁー」
訂正しよう、こいつはただの変態だ。
「そうじゃなくてこうなのじゃ」
女神が手のひらを下に向け指を広げ、何もない空間にその指を置くようにする。すると何か板状の物が現れた。
「この、お主らの言うキーボードとやらでスキルの検索、選択などいろいろできるのじゃ」
なるほど、キーボードか。オレも手の位置をセットする。――何も起きない。
「おい、何も起きないぞ」
「当たり前じゃ。そんなに簡単に出来たら誰も苦労なんぞしないのじゃ。『キーボード・オン』と唱えてみよ」
「あ?『キーボード・オン』おお、何か出てきたぞ」
オレの手の下にもキーボードが現れていた。
「でもお前は無言で出したよな」
「ふふふ、これが『無言詠唱』の力よ。讃えるがよいのじゃ敬えばいいのじゃひれ伏すがよいのじゃぁぁぁ」
「………………『無言詠唱』ってのはスキルなのか?」
なんかどこかで聞いたことのあるような台詞が聞こえたが無視しとくことにした。
「……正確に言うとスキルなのじゃが慣れればスキル無しでも発動出来るのじゃ。じゃからお主にも使えるやもしれん。ちなみに慣れるとスキルを取得することもできるのじゃ」
「ほぅ、ではやってみるとしようか。やり方を教えろ」
「お主、もっとこう人に頼む態度というものが……なんでもない。しょうがないのう。まず頭の中で『キーボード・オン』の『文字』を思い浮かべるのじゃ」
「思い浮かべたぞ」
「そしたらその文字をキーボードを出したい空間に向けて放つイメージじゃ。」
「よくわからん」
「うーん。こう、ぎゅってしてぽーんじゃ」
「わかんねぇよ」
「うーむ難しいのう」
「お前の説明で分かる方がすげぇわ」
「なに?ちなみに女神友達のキャリーはすぐに覚えたぞ?」
「なに?それはすごいな」
女神友達って何だよ。それにこんなわかりにくい説明で出来るなんて……。
「うーむ……浅那にはまだ早いようなのじゃ。普通に唱えよ。ちなみにじゃが魔法やスキルも『無言詠唱』ができるぞ?」
「なに?それを早く言え。必須スキルじゃないか」
「まぁどうしてもできないのなら10の祝福で選べばいいしのう?」
「くっ貴重な枠をそう簡単に使えるかよ。何がなんでも習得してやる」
「まぁ今はスキル選択に集中するのじゃ。妾はお主のせいで仕事が増えたしのう」
ジト目でこちらを睨んでくる女神(自称)。
「いいじゃないか少しくらい。どうせ暇だろ?」
「まぁそうじゃが。ところで作るスキルとやらは何でもよいのかの?」
「そうだな。思いつきで言っただけだしな」
「なに?思いつきじゃったのか?そんなくだらない理由で妾は働いておるのか?」
「まぁいいじゃないか。『ユニークスキル』なんてカッコイイじゃないか」
「腑に落ちないのじゃ。でも仕方が無いのじゃ。こうなったら凄いのを作ってやるのじゃ」
そう言いながら女神は後ろを向き何やらブツブツと呟き何かをしている。
だって異世界トリップ物の主人公は皆自分専用のスキルを持っているのだ。憧れるのも仕方無いだろう。と自分に言い訳をする。
ついでに女神(自称)に心の中で謝っておく。これでいいだろ。今一瞬、女神(自称)がピクッて動いたような気がしたが気のせいだという事にしよう。
暫く黒板を見ていると気になる文字があった。
「なぁ、この『火属性魔法』ってなんだ?」
「なんだと言われても火を操れる魔法としか答えられんのじゃ」
「試してみてもいいか?」
「ここじゃ少し狭すぎるのう。仕方が無い、移動するとしようかの」
女神(自称)がまたもや指を鳴らす。するとまたもや目の前が光で埋った。思わず目を瞑り瞼を開くとそこはもう教室ではなく草原だった。
「…………は…………?」
本日何度目の驚きだろうか。ドラマチックこそが人生の言葉を年中掲げるオレにとっては日々に面白さを求めているが今回のは全てが想像の斜め上をいきすぎているのでなんてリアクションをとればいいのかが分からない。
「これなら存分に練習出来るじゃろ?ついでにカカシでもだしておくかの」
またもや女神(自称)が指を鳴らす。すると前方50メートル位先にボンッと煙と音がしたかと思うと煙の中からカカシが出てきた。
「……もう何があっても驚かんが……どうやってるんだ?」
「ふふん、神の特権というやつよ。讃えるがよ「もう飽きたって言ってんだろうが」うぅ、ひどいのじゃ。妾はそのようなこと聞いてないのじゃ。「当たり前だ。そもそも言ってないからな」やっぱりひどいのじゃぁ」
「あ?」
「ハァハァ、その蔑むような視線、妾をゾクゾクさせるのじゃぁ。もっと睨んでたもぉ」
「この変態が」
うん。神だろうがなんだろうがキモイものはキモイ。変態なのは変態だ
話がすごい脱線した。戻そう。
「黒板が消えたぞ?どうすればいい?」
「ハァハァ、もう一度『キーボード・オン』と唱えてみよ」
「…………『キーボード・オン』おっ何かでてきたぞ」
『無言詠唱』を試してみたが上手くいかなかった。仕方が無いので声に出すとキーボードの上に半透明で板状のウィンドウとでも呼ぶような物が出現した。ナニコレ。
「どうじゃ?すごいじゃろう?ちなみにそのウィンドウは妾が作成したものじゃ。上手くできておるじゃろう?なんて言ったって日本のアニメを参考に作ったのじゃ現実世界には無いといっても意外と馴染み深いんじゃないかのう」
名前はそのままウィンドウなのか。確かにアニメなどで一度は見た事ある。だけど半透明の板が目の前で浮いているのだ現実世界ではありえないことが起こっているのだ。戸惑うのも致し方ないだろう。いやここも現実世界って言ってたかよく分からなくなってきた。
まぁいいや。後で考えよう。とりあえず今は火属性魔法だ。
「なぁ、どうやって発動するんだ?」
「よし、妾が一度見せてやるとしよう。『マホ・ファイア・ボール』」
女神(自称)が詠唱するといつの間にか女神(自称)の前に火球が浮かんでいた。そして女神(自称)がカカシに手を翳すとその火球がカカシ目掛けて飛んでいった。その火球がカカシに当たった途端にカカシが燃え上がる――――
なんてことはなかった。カカシに当たった瞬間に大爆発を起こしたのだ。草は燃え、炎の絨毯ができ、爆心地にはクレーターができていた。
「…………」
絶句。言葉を失うとはこのことだ。
「…………魔力量を間違っちゃったのじゃ。てへぺろ。えいっ」
女神(自称)がまたもや指を鳴らすと燃えていた草や爆発によってできたクレーターなどが全て元に戻った。
「よし、妾が一度見せてやるとしよう。『マホ・ファイア・ボール』」
「何しれっと無かった事にしようとしてるんだよ」
「誰にでも失敗はあるのじゃ許してたもぉ」
「まぁ別にいいんけどな」
「え?いいのかの?許してくれるのかの」
「ああ、第一オレに許しを請う必要がないだろ」
「おお、そうじゃったのう。でもありがとうなのじゃ。優しいのう、お主は。これからはご主人様と呼んでお慕い申し上げるのじゃ。まずは手始めに妾を罵ってたもぉ」
「きめぇ」
「はぁはぁ、もっと、もっとじゃご主人様よ。その蔑むような目だけじゃまだまだ足りないのじゃぁ」
「しつこい、さっさと続きを教えろ」
「仕方がないのう。まずは魔法の原理を理解しなければならんのじゃ。」
話が長いのでまとめると――――
『魔法』は通称『マホ』と呼ばれているということ――
『魔法』には大別して『火属性』『水属性』『風属性』『土属性』『光属性』『闇属性』があること――
またそれらの『魔法』を『属性魔法』と呼ぶこと――
『魔法』を使うには『元素』を生成して使う必要があること――
『元素』の生成には魔力を消費すること――
しかし『元素』は目に見えないだけで周りに存在していること――
たとえば『火属性魔法』を使うには『元素』を『火元素』に変換してから使う必要があることを――
「ゆっくりやるからよく見ておくんじゃぞ」
ちなみに『元素』は『魔力感知』のスキルにより視認することができる。
女神(自称)が手のひらを上に掲げた。その上の空間に目を凝らすとなにか赤い靄のような物が集まっていることにきずく。その靄がある程度集まると火球が出来上がる。
「いいかの。『魔法』はイメージが大事じゃ。まずは身の周りには『元素』があふれていることをイメージするのじゃ。そして手のひらの上にある『元素』を『火元素』に変換するには……そうじゃの、赤い色を付けるとでもイメージするとやりやすいかもしれぬ。まずはここまでやってみよ」
「ずいぶん簡単に言ってくれるな」
「まぁの、『火属性魔法』のスキルをとっておるなら威力はとにかくまず失敗することなどほとんどないしの」
「……イメージさえできればオレでもあの威力をだせるのか?」
「今のままじゃむりじゃな。『スキルレベル』というものがある。ご主人様のレベルはまだ1じゃ。『スキルレベル』を2にして力を凝縮すれば何とか……というレベルじゃな。ちなみに、レベルは5までじゃが、その上に『Level.MAX』というのがあるのじゃ。『Level.MAX』ともなればもはや人外レベルよ」
「何だよ、人外レベルって……」
「それにLevel.1では戦闘で使い物にならん。鍛練するんじゃな」
「ちなみにあんたのレベルは?」
「ふふふ、秘密じゃ」
「まぁいいか。じゃあさっそくいくぜ。『マホ・ファイア・ボール』」
先程の女神(自称)を思い出す。できるだけ威力を上げようと体中から魔力を右手に集め、凝縮させるようにする。右手のひらを上に翳すと何かが体から抜ける感覚の後に若干の倦怠感が右手を中心として全身を襲う。右手が……うずく……静まれぇオレの右手ぇぇぇ。そして、小さいが火球が出来上がる。
「おい、これからどうすればいい」
「言ったであろう。魔法はイメージじゃとその火球を飛ばすよう、イメージしてみよ」
「まったくまたもやいとも簡単に言ってくれるな」
オレはイメージした。そう、野球のピッチャーがボールを投げるように。軽く握ってみる。うん、別に熱くないな。どちらかというと優しく包まれているような温かさだ。触ってみて火傷しました。じゃシャレにならんしな。今度はしっかりと握り、振りかぶって投げる。するとオレの手から放たれるボールが一瞬本物の野球ボールに見えたような気がした。そしてそんなスピードが出るはずないのだが高校球児顔負けのスピードで飛んでいく。あれ?これプロ目指せんじゃね?軽く投げたつもりだったのに、あんなスピードで飛んでいくとは……。まぁ、魔法の力なんだろうな……。
「ほう、一発であのスピードを出すか。むっ……?」
そして、火球がカカシに当たる。するとカカシの胸の真ん中に穴ができ、そのまま貫通し、遠くへ飛んでいった。残ったカカシは燃えだし、炭となって消えた。
「……なぁレベル1じゃ戦闘で使い物にならないってさっき言ってたよな?」
先程女神(自称)には遠く及ばないにしてもさすがにこれ程の威力は想像すらしていなかった。精々、表面を焦がす程度だと思っていたのだ。
「……あぁ、そうじゃが……。なぁご主人様よ、いったいどれ位の魔力を込めたのじゃ?」
「……感覚でいいならある分だけ全部だが」
「……なるほどそれならある程度は理解ができ……ぬな……全魔力を使ったとしても常人ならあれほどの威力にはならんし……それに魔力切れによる『反動』もないようじゃし……」
女神(自称)がなにやらブツブツと呟いている。
「ご主人様よ今すぐ『ウィンドウ操作』のスキルを取ってはくれぬか」
「……は?『ウィンドウ操作』もスキルなのかよ……。取ったぞ」
「『ウィンドウ・オープン』と唱えてくれまいか」
「おう。『ウィンドウ・オープン』なんか出てきたぞ」
それは『キーボード・オン』で出現した。ウィンドウと似ていた。表示されているものが違ったが……。
「どうすればいい?」
「右下に『可視化』のボタンがあるじゃろ?それを押してくれまいか」
言われた通りにボタンを押す。女神(自称)が周りこんで来てオレのウィンドウをのぞき込む。ウィンドウはオレが動くと一緒に移動してしまう。そしてウィンドウがオレのちょうど目の前にあるのだ。そしてそのウィンドウを覗きこんでいるのでグイグイ押される。つまりなにが言いたいかというと――何がとは言わないが腕に当たっている。まぁ相手は変態だから何とも思わないが。
「ふぅむ、やはりか。思った通りじゃ。しかしこんな事は……」
またブツブツ言っている。放っておこう。ボタンを押してから、特に何かが変わったようには思えない。第一最初から視認できてるし……。すると女神(自称)がこちらの雰囲気を察したのかウィンドウから顔を上げ上目遣いで話かけてくる。
「『ウィンドウ』という物は普通、他人からは視認できんのじゃ。自分では気づくことができんから注意が必要なのじゃ」
なるほどそういうことか。
「何か分かったのか?」
「ああ、どうやらご主人様は常人より『魔力量』が多いようなのじゃ。それに『元素』を周りから摂取することなく自ら生成したようなのじゃ。だから威力の割に飛球の大きさが……」
どうやらまた自分の世界に行ってしまったようだ。
「おい、どういうことだ?オレに分かるように説明しろ。それに……当たってるんだが……?」
「あててんのよ」
女神(自称)が気持ちの悪い笑みを浮かべてからオレと向き合うように移動する。そしてなぜか赤いフレームのめがねを取り出しかける。どこか知的に見えなくもないが本性を知っているからかあまり変わらない。
「まず『元素』についてまだ説明していなかったことがあるのじゃ。それから説明することにしよう。『元素』は身の周りには存在するのじゃがそのままだといわゆる『無属性』なのじゃ。それに自らの『魔力』を使い『属性』を与えるのじゃな。しかし、すべての『魔力』が『元素』に『属性』を与える為に使われるわけじゃないのじゃ。『元素』に『属性』を与える過程で無駄な魔力が消費されてしまうのじゃな。まぁ『元素』を生成すところからやるよりは効率が大分よいがの。とまぁ関係ない話はここら辺までにしとくかの」
「……は?関係なかったのかよ」
「ああ、関係ないぞただの豆知識じゃ」
「殴っていいか?」
「もちろんじゃ。逆に頼みたいくらいじゃな。はぁはぁ、あの痛みをもう一度ッ……」
顔を惚けさせ、息づかいが荒い。何回見てもキモイ。まともな人物だと思っていたらただの変態だったのだ。詐欺である。
「……説明を続けろ」
「殴ってはくれぬのか?ご主人様から言い出したのじゃぞ?遠慮などしなくていいのじゃぞ。妾は大歓迎じゃ」
もちろん無視である。
「……後で絶対にイジメてもらうからの」
まだ言うか。
「しょうがない、話を戻すとするか」
「当たり前だ」
「ご主人様は厳しいのう。でもその厳しさがまた……」
「話が進まねぇ」
「はぁはぁ、分かったのじゃ。それでは話を進めるとするかのう。自ら生成する『元素』はなにも『無属性元素』を生成するだけではない。いきなり『属性元素』を生成することも可能なのじゃ。こうすることにより、消費魔力は増えるが『無属性元素』から『属性元素』へと変換する手間と無駄な魔力消費を省略することが可能なのじゃ。そして自ら生成した『元素』の方がより強い力を持っておる。つまり、ご主人様は多量の魔力で『属性元素』を生成しそれで『マホ』を放ったのじゃ。それに全魔力は使用しておらん。まだ残っておった。じゃから『反動』もなかったわけじゃな。うむ。」
「おい、ひとりで納得するなよ。『反動』ってなんだ?」
「ふむ、『反動』とは魔力を使い過ぎてしまった場合や、『マホ』の発動に失敗してしまった場合に起こる現象じゃ。例えば倦怠感に襲われたり、ステータスにマイナス補正がかかったりするのじゃ。ちなみに『反動』とまではいかなくても若干の倦怠感に襲われる場合もあるのじゃ」
なるほどあのときの倦怠感がそうなのか。あまり『マホ』は使いたくないが常人よりも『魔力量』が多いということは有利にはたらくな。
「なぁご主人様よ。説明したんだからご褒美が欲しいんじゃ」
「……オレは何も持ってないぞ?」
嫌な予感がする。
「なに、少し妾を罵るだけでよい」
「ちょっと武器を試してくる」
オレは何も聞こえなかったかのように振る舞い、カカシの方へと歩き出した。そして歩きながらウィンドウを操作し、先程見つけた『武器』という文字をタップする。すると目の前の空間から『トンファー』が出現する。もらえるのはスキルだけじゃなかったのかよ……。歩きながら何度か素振りをする。うん、なかなかいい感じだな。そして女神(自称)を一瞥するとカカシに向き直った。
**********
「まったく、照れ屋じゃのう、ご主人様は。もっと遠慮せずに妾をイジメてもいいものを……。はぁはぁ。あっこっちを睨んだのじゃ。何度睨まれてもいいものよのぉ。おっご主人様がカカシの前に着いたようなのじゃ。どれ、腕を見てやるとするかの……」
するとさっきまでカカシの前にいたはずの浅那が消え、気がつくとかなりの距離があったはずなのに目の前に出現した。
「なぁ、ずっと言いたかったことがあるんだ」
「なっなんじゃご主人様」
突然のことすぎて対応できない。だがその一瞬が命取りとはよく言ったものだ。
「その『ご主人様』ってのやめろ」
その言葉と共に『トンファー』が振り落とされ、殴られた。
女神「せぇぇぇぇぇふぅぅぅぅぅーーーーー」
浅那「アウトだ、変態。今この時点で、ちょうど一時間オーバーだ」
女神「すまぬのじゃぁーごめんなのじゃぁー」
浅那「っていうかタグがおかしいことになってるぞ。『主人公にdisられる』とか『サブタイトル詐欺』だとか『もはや後書きが本編』なんてのも……。まったくオレとしてはdisってなぞいないというのに……」
女神「ご主人様よ。1つ間違ってるのじゃ」
ご主人様「だからやめろよ。『プレイヤーネーム』まで『ご主人様』になってるじゃねぇか。それで、間違いってなんだ?」
女神「だれもご主人様が『主人公』だとは言ってないのじゃ」
浅那「……え……?それってどうい(ry」
女神「次回、『第四話 ついに異世界にいくの』お楽しみになのじゃー」
浅那(オレの台詞が……え?オレ、主人公じゃなかったの……?)