第一話 女神と出会うの
はじめまして。よろしくおねがいします。
2014/9/2 スキル使用の表現追加、一部の文章表現の変更、後書きの女神の口調を変更
「うわぁぁぁ」
「キー」
四ノ宮浅那の悲鳴とイージーラビットの鳴き声が響き渡っていた。今この場では浅那とイージーラビットの鬼ごっこが行われていた。しかもその鬼ごっこは生易しいものではなく捕まれば"死"を意味する命懸けの鬼ごっこだった。
「くっ…………」
このまま逃げ惑うだけでは埒があかないと判断したのか走りながら腰のホルダーからトンファー取り出す。そして反対側を向き腰だめに構えいつでも動けるように備えた。
「さぁ、いつでもかかって来い…………」
その声はどこか震えているような気がしないでもない。よく見ると膝も笑っている事が分かる。それもそのはず四ノ宮浅那はこの世界に来てからまだ5分と経っておらずこの世界では魔物と相対するのは初めてだったからだ。しかし、浅那は両手に持っているトンファーを熟練した動きで使用し、いとも簡単にイージーラビットを屠った様に見えた。
そして浅那はすぐさまイージーラビットの死体目掛けて手を翳し『解体』をかける。
「スキル・解体」
と声を発すると今までイージーラビットが倒れていた場所には毛皮が残った。
そして浅那は辺りを見回し安全を確認すると腰を降ろした。
「はぁはぁはぁ、ふぅ…………異世界に来た途端にこれかよ…………」
ブツクサ言いながら浅那は空を見上げながら日本での事を思い出していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ある日の深夜1時頃、四ノ宮 浅那は自室にあるディスプレイの前に座り、今のめり込んでいるゲーム、サフラン・コードをプレイしていた。サフラン・コードとは約2年前にリリースされたRPGである。サフラン・コードは普通のRPGとあまり変わらないのだが浅那はこのゲームが好きだった。理由としては色々あるがやはり一番最初に触れたRPGということとコミュニケーションが苦手だったのでソロプレイでもある程度はやっていけるということである。決して他のゲームを探すのが面倒くさいわけではない。
それに、1年もやってると愛着が沸くというものである。他のゲームに誘われていたとしても断っていただろう。しかもソロプレイが出来るとは言ってもパーティーを組んだ方が明らかに楽であり安定する。なのでソロプレイ人口は少なかったが浅那はゲーム初心者とコミ障のせいで余りにも他人と関わらずにプレイしてきた。
さらに一度熱心になった事は打ち込むタイプであり負けず嫌いだったので攻略サイトも見ず一人で考え、行動していた。それもあってかいつの間にかトッププレイヤーの仲間入りをしていた。しかしそんな事に興味が無い浅那はトッププレイヤーになった事で面倒ごとが増えただけだと文句を言っていたが。
そしてパーティー勧誘のメッセージなどを見つつうんざりしながら今日ものんびりプレイしていた。今浅那は女神の神殿に来ていた。確か邪神に支配された女神を助けるといったような内容のクエストが過去あったはずだ。いちいち詳しい事なんか覚えていない。結局はボスを倒せばいいだけだ。
しかし浅那はこのクエストはクリアしているので邪神に支配された女神と戦う事は出来ない。だが、あまり有名ではないが倒した後に神殿に行くと女神直々に特訓してくれるのだ。そしてそれに勝つと稀なアイテムや武具が貰えたりと色々な特典がるのだがそれらは中盤までは使えるのだが終盤に近づくにつれ余り役に立たなくなってくるがこれでしか手に入らない物もあり1度は来てみたいダンジョンだ。しかも何度でも戦えるのだ。
だがその女神が待ち受ける再奥までは迷路の様になっていて辿り着くのも容易ではないのでわざわざ挑もうとする者も少ない。だが浅那はもうすでに50回以上はこの神殿に足を運んでいる。
なぜなら女神との"親密度"を上げるためだ。"親密度"とは一部のNPCに設定されており、話掛けたりプレゼントをあげたりクエストをクリアすることにより上がる。そして親密度が一定以上上がるとそのNPCと結婚出来たり、冒険に役立つアイテムをくれたりするのだ。そして最近、女神にも"親密度"が設定されているらしいとの噂が出たのである。それを確かめる為にこうして何度も足を運んでいるいるのである。
戦闘の練習にもなるしアイテムも貰えるしで迷路の面倒さを除くと割といいような気がする。しかしこの迷路が曲者である。なんていったって神殿に入る度に形が変わるのだ。しかも規則性などなく完全なランダムでだ。そのせいもあってかたまに出口が無くなる場合もあるのだが。
しかし浅那はアイテムボックスからあるアイテムを取り出し使用した。すると目の前には神殿の再奥の様子が広がっていた。
このアイテムは女神との戦闘に30回以上勝つと貰えるアイテムで神殿の前で使用すれば一瞬で再奥に転移できるという便利アイテムだ。
さっさと戦うかと一歩その部屋に足を踏み入れると急に画面がまっ黒になる。バクかと焦っていると画面には”GAME OVER”の文字が写し出されていた。
こんなことは今まで無かった。仕方が無いのでコンテニューでもしようとした時”GAME OVER”の下に文字書いてあるのを見つけた。
そこには『あなたはGAME OVERになりました。10時間後にサフラン・コードの世界に行けます。暫くお待ちください』と書かれていた。今はちょうど午前2時。10時間後というとちょうどお昼だ。しかもコンテニューにクールタイムなどあるはずないのだが今まで"GAME OVER"になどなかったのでその不自然さに気付くことはなかった。
「はぁーしょうがない、今日はもう寝るか」
と潔くあきらめるたがは1日の楽しみを奪われたようで肩を落としベットに潜りこんでいった。
朝が明け太陽も昇った頃浅那は眠い目を擦りながら授業を受けていた。
「ここがこうなるから答えは――」
あー満足にプレイ出来なかった事が辛い。教師の言葉が頭に全然入ってこない。などと思いながら時計を見ると11時半を指していた。あと30分でまたプレイ出来る。と思うと少し気が楽になるが家に帰らなければプレイ出来ないのを思い出し気が滅入る。それでも時計の針を目で追いながら、取り留めのない事を考える。
後20分――空から隕石でも落ちてこないかな。
後10分――UFOでも落ちてこないかな。
後5分――超能力が使えたらいいのに。
後3分――魔法が使えたらいいのに。
後1分――異世界に行けたらいいのに
そして時計の秒針が12の文字に重なる。カチッカチッカチッ秒針の音だけが教室に響いている――様な気がする。まぁそんなことある訳が無いしさっさと家に帰り、サフラン・コードをプレイしようと思っていたら突然目の前の黒板が光った。
「は…………?」
思わず目を瞑り考えるが意味が分からない。この学校の黒板は緑色でチョークで書くあの古いやつだ。決して電子黒板などというハイテクなものではない。ただの黒板が光りを発することなどありえないのだ。しかもこの光量は太陽の反射などという生易しいものではなかった。そしてこの不可解な状況を理解出来るほど浅那は長く生きていなかった。まぁ理解出来る者がいるとは思えないが…………。
一瞬のうちにそこまで考えてから目を開けると―目の前には黒板があった。そりゃそうだよ。黒板が光るなんてありえない。ただの見間違え、妄想はたまた夢かと結論づけようとするとある事に気付く。音が聞こえないのだ。いや正確に言うと音を発するものがなくなったのだ。つまり、周りを見回すと誰もいない教室に浅那は一人いた。今度は混乱を通り越し逆に冷静になってしまったほどだ。
すると背後から突然声が掛けられる。その声をかけて来たのは見覚えがない人物だった。金髪ロングで碧眼だ。外国人?また、白っぽいワンピースだかロングスカートだか知らないがそれに似た様な物を着ているせいでその人物が壁画に描かれている女神に見えなくもないような気がしないでもないような気がする。この良く分からない状況において近くにいる唯一の人物なのだ。近くに人がいることに安堵し、コミ障なのに勇気を振り絞り話かけようとするとその金髪碧眼の女神?が話かけてきた。
女神「はい、遂に始まりまったのじゃ。『変態女神が創ったRPGはろくなもんじゃない』ってかひどくないかの?変態じゃなんて。まだ何もしてないのじゃぞ?」
浅那「まだだろ。まだ。それにタイトル長すぎないか?さっさと略称考えろよ」
女神「うっまぁ後で考えとくのじゃよ。ほんとは8月中には出したかったのじゃが……」
浅那「まぁ作者がさぼってたからな。自業自得だな」
女神「うっ厳しいのじゃ……ってかお主、本編とキャラが」
浅那「次回、『第二話 変態女神を尻に敷くの』」
女神「おっお楽しみになのじゃ」