日常の影、戦場の叫び
朝の光が窓から差し込む。
破れた肩と腕の痛みがまだ残る。昨日の戦闘の余韻。
影の力も、完全には手に馴染んでいない。
「まだ不安定だな…」
独り言を漏らしながら、リハビリも兼ねて影の制御訓練を行う。剣に変えたり、鎖にしたり、盾にしたり――小さな動作でも意識を集中させる必要がある。
ミオは横で、無言で監視するように訓練を見ている。
「昨日は助かった…」
軽く笑うつもりで言ったが、肩越しに返ってきたのは冷静な視線。
「まだ完璧ではない。油断するな」
少しだけ肩を落とす。だが、そんな緊張感もどこか安心感につながる。
昼、街のカフェで簡単な食事。
普段通りの時間。人々の笑顔。日常。
「これが、戦闘前の最後の静けさか」
胸の奥で小さく震える感覚。平穏は、いつまでも続かない。
モニターが突然赤く点滅した。
「黒斗、緊急だ!」
本部からの報告。オブスキュラスと中型マリス・テンペスタが市街地に出現。
息を呑む。胸が高鳴る。
「…またか」
地下通路を駆ける。影を小さく剣に変え、鎖に変えながら建物の間を進む。
街は既に混乱。人々が逃げ惑う。スプライトの群れがあちこちで暴れ、建物の影を触手のように操る。
テンペスタが黒斗を狙う。素早い攻撃で避けるが、肩に一撃が入る。
「痛っ…!」
影が暴走しかけ、鎖が暴れ出す。動揺する黒斗を庇って、ミオが前に飛び出す。
銃でテンペスタの動きを押さえ、触手の衝撃を受け止める。
「ミオ!」
裂けた衣服と軽い打撲。だが彼女は立っていた。
オブスキュラスの巨大な触手が街のビルを叩き、黒斗を押し潰そうと迫る。
胸の奥が締めつけられる。影の力が勝手に動き、暴走しそうになる。
だがミオが横で指示を出す。
「影を合わせろ!」
黒斗は影を剣に、盾に、鎖に変え、テンペスタとスプライトの攻撃をかわしながらオブスキュラスに応戦する。
完全ではない。だが、少しずつ制御が噛み合い、暴走の兆候を抑えられる。
一瞬だけ、力が意志に従った――影の剣がオブスキュラスの触手に食い込む。
戦闘が収まる頃、街には深い傷跡が残る。
腕と肩には昨日の傷に加え、今日の打撲や擦り傷も残る。
ミオも肩に軽い打撲を負った。二人とも痛みを感じながら、夜の街を見下ろす。
平穏の時間は短く、戦いの余韻が胸に残る。
だが、この戦いで確かに分かった。
影の力はまだ未熟でも、ミオと共に戦えば生き延びられる――その希望がある。
次に来る危機のために、俺はさらに強くならなければならない。
物語は、まだ終わらない――影の力と共に、次の戦場へ。




