襲来
地下本部に戻った俺は、息を整える間もなく検査室に通された。
影の力はなんとか制御できた…かと思ったが、胸の奥で違和感がくすぶる。
手が微かに震え、影が勝手に形を変える感覚が残っている。
「初任務、問題はなかったな」
上層部の声。だが、その目は鋭く、監視していることを隠さない。
「黒斗、影の力の反応が少し異常です」
ミオの淡々とした声。冷たい。
「まだ制御できていない…」
拳を握る。影が手の中で蠢き、剣から触手のように伸びる。
モニターが赤く点滅した。
「緊急報告! マリス複数出現!」
マリスは種類ごとに分類されているらしい――オブスキュラス、テンペスタ、スプライト。
ミオが横で解説する。
「オブスキュラスは大マリス。暗黒の支配者。攻撃力・防御力とも圧倒的で単体でも脅威」
「テンペスタは中マリス。人型で俊敏。戦術的に動き、群れでも単体でも油断できない」
「スプライトは小マリス。数で攻めるタイプ。単体は弱いが、集団になると危険」
現場に到着する。夜の街に黒い影が蠢く。
巨大なオブスキュラスが建物に触手を絡め、影を渦巻かせる。
テンペスタが群れを指揮し、スプライトは数で圧迫してくる。
影を剣に、鎖に、盾に変えるが、まだ制御は不安定だ。
剣にしたいのに触手になったり、盾にしたいのに剣が暴走したりする。
「まずい…!」
テンペスタの素早い突きで腕に深く切り傷が入る。痛みが走り、影の操作も一瞬乱れる。
ミオが一歩前に出る。
「黒斗、下がれ」
銃口が光る。テンペスタの動きを止め、オブスキュラスの攻撃も一部遮る。
その間に影を集中させ、スプライトの群れを封じる。
だがオブスキュラスにはまだ勝てない。触手が暴れ、攻撃は届かない。
壁に押され、肩に軽く衝撃を受け、痛みが走る。影の力が暴走しそうな感覚もわずかに漂う。
「黒斗、影を合わせろ」
ミオの声。指示に従い、影を集中させる。剣を盾に変え、触手でオブスキュラスの攻撃を受け止める。
テンペスタはミオの狙撃で押さえ込み、スプライトの群れも巻き込む。
呼吸を整え、やっと形になる影。だが完全ではない。
力はまだ俺の意志に従い切れていない。
それでも、ミオのサポートがあれば、生き延びることはできる。
戦いが終わる頃、夜の街は破片だらけだ。
腕には深い切り傷、肩には軽い打撲。胸の奥に熱と恐怖が残る。
まだ完全には制御できない力。
それでも、初めて勝ち筋の一部を掴んだ――ミオと組めば戦える。
戦いは、まだ始まったばかりだ。




