初任務
地下本部の廊下を歩きながら、俺は拳を握り締めた。心臓が高鳴る。
ミオは無言のまま先を歩く。背中に黒い輪のバッジが光る。
「今日の任務は…?」
思わず訊くと、ミオは振り返らずに言った。
「外の公園。マリス確認と撃退」
外は夜。静かな街の公園に、黒い影が揺れている。
「…マリスか」
拳を握る。触れた瞬間、影がざわめき、手の中で生き物のように動く。
――まだ完全には制御できない。
影は直感のまま形を変える。剣、鎖、盾、時には勝手に触手のように伸びることもある。
思い通りにならず、攻撃が空を切ることもある。
でも制御できなければ暴走する危険もある。怖いけど、手を出さなければ戦えない。
「よし…行く」
影の剣を振るう。だが、振りかぶった瞬間、鎖に変わってしまい、敵を取り損ねる。
マリスが一歩前に出る。心臓が跳ねる。
ミオは銃を構える。無言で、監視役としての存在感が圧倒的だ。腕がわずかに震えている。
「まだ撃たない」――目だけで伝える。小さな確認だが、安心も、緊張も生む。
再び影を握る。剣に、鎖に、盾に変化する。今度は少しだけ意図通りに動いた。マリスの体を縛り、崩す。砂のように散った。
息を切らしながら振り返る。ミオは目をわずかに細めただけだった。意味は伝わる。まだ、完全に信頼されていないことも、まだ自分も信じきれていないことも。
帰路、地下本部へ戻る途中、胸の奥で違和感が芽生える。
影の力は強力だが、まだ制御しきれない。
もし暴走したら、ミオは撃つのだろうか。考えるだけで手が震える。
本部に戻ると、上層部の視線が俺を貫く。
「初任務、順調だったな」
短く告げる声。評価か、監視か。血の気が引く。
だが安心はできない。影の力はまだ未知数。ミオとの距離も、まだ安定しない。
この先、何が起きるのか。胸の奥で警告が鳴る。
物語は、まだ始まったばかりだ。




