影との対話
霧が山肌を覆い、冷たい空気が黒斗の体を刺す。
彼は立ち上がる。昨日より確実に影の存在を感じるが、まだ暴れが残る。影が背後で揺れ、呼吸するように微かにうねる。
「……行くぞ」
黒斗は深く息を吸い、影に手をかざす。
刃、鎖、盾――三つの形が勝手に動き、空気を切り裂く。
だが、微かに反抗し、黒斗の意思を試すように暴れる。
「くそ……! 逃げるな!」
影が突如、黒斗の体を押すように動く。
足元が不安定になり、岩を砕いて転びそうになる。
「黒斗、落ち着け!」
ミオが呼ぶ。銃を構え、影の動きを観察する。
支援は最小限。今回は、黒斗が“自分の影”と向き合う場だ。
「……わかってる」
黒斗は膝を折らず、踏み込み、影を受け止める。
刃が前方に飛び、鎖が巻き付き、盾が後方を守る。
微かに反抗する影を、呼吸と意思で押さえ込む。
影が荒々しく揺れ、鋭い先端が黒斗の体にぶつかる寸前、彼は咄嗟に反応する。
「くっ……!」
痛みと衝撃が体を貫く。
だが、暴れる影の中に、わずかに呼応する動きを感じる。
「面白い……!」
思わず笑いがこぼれる。
恐怖と興奮が混ざり、心の奥が熱くなる。
ミオが小さく頷く。
「……それでいい、黒斗。恐れず受け止めろ」
玄真が一歩前に出る。
「いいぞ、黒斗。だが忘れるな。揺れは力だ。恐怖じゃない。恐れるのは、制御できない自分だ」
黒斗は拳を握り、影を全身で抱え込む。
影の一部が勝手に飛び、地面の岩を砕き、黒斗の体に圧をかける。
だがその暴れは、逆に力を増幅させる。黒斗は息を荒くしながらも、影の動きを利用して鎖を振り、剣を振るう。
「……これなら、次の段階に行けるかもな」
影は荒々しいが、呼応する意思が見える。
刃は空気を切り裂き、鎖は岩を巻き込み、盾は微かな揺れを受け止める。
黒斗の体は揺れるが、恐怖ではなく集中が支配する。
ミオが小さく微笑む。
「よし、この調子で行こう」




