ご尊父の死
これは小説習作です。とある本を開き、ランダムに3ワード指差して、三題噺してみました。
随時更新して行きます。
【お断り】「虫、恩、未来」の三題噺です。
(以下、本文)
【危篤】
ゲラのまま用意していた遺稿集
返せない親の恩義も虫の息
【臨終】
老衰とは気休めばかりの大団円
お迎えに今度はつべこべ言うなよな
未来派と意味も知らずに父は言い
父よりも二十五年は先があり
子なきゆえ伝える術なき親不孝
郭公は居直ることに上達し
【通夜】
義理のない通夜の客こそ仏さま
【本葬儀】
喪主あいさつ 父への嘘のつき納め
自治会の人に教わる父の徳
恩讐を川の向こうに丸投げし
念仏の他に遺徳を求めるな
【骨拾い】
孫含め十年ぶりの家族旅行
そう言えば空港施設によく似てる
親子は一世 次に会う時ゃ分かるまい
【The day after】
八日目にやっと気が向く西部劇
着て脱いで喪服が一の功労者
【愛犬一家】
葬式の皺をこうむる親子犬
泣くも遺族泣かぬも遺族と犬が哭く
犬の目に次の家長は誰と見る
【相続】
「あいつは敵」そんなに遺産が大切か
共産主義 遺産争い起こるまい
伯父叔母を泣かせた土地がこの荒れよう
売り物件 検索したらナビ真っ赤
積み上げて布団もかけぬ墓じまい
【遺品整理】
断捨離の続きは子がやる負の遺産
恥かくし初めてやった親孝行
大悪尉父の本気は捨てられぬ
無理するな生きてる内は遺品じゃない
【冷却期間】
話聞きゃ級友みなが横ならび
【一周忌】
繰り言で父は偉人となりにけり
愛と言う 妻とはかくも良きものか
似た顔のコピーがあると伯母が言い
形見とは我が身なりやと一周忌
【中間総括】
父と子で見解一致は阿弥陀仏




