あまりにもむごい残酷教育
「あなたは、あなたの臓器提供の為だけにこの世に生まれて来たの、それがあなた人生」
そう、言われ続けて、梨花は自分の運命を痛感する。
やがて、手術の日を迎える。
佐藤美由紀は、信号待ちの、ある女子高校生に目が止まった。
美由紀は、その女子高校生が妊娠しているのではないかと考えたのである。
普通の肥満とは全く違うからだ、美由紀は、なにげなく、その女子高校生を喫茶店へと誘った。
美由紀は、それとなく聞く、すると、やはり、その女子高校生は妊娠していたのだ。
女子高校生の名前は、前田沙友里と言う、沙友里は、男遊びが激しい。
沙友里のお腹の子どもも、誰の子どもだかわからない。しかし、もう手遅れだ。
おろす事はできない、産む事しか選択肢はない、沙友里は毎晩、毎晩悩んでいた。
どうしよう、どうしよう、しかし、沙友里が妊娠している事実は誰も知らない。
友達からは、「太ったね、太ったね」と言われていた。
誰一人として、妊娠している事に気がつかないのである。
美由紀は、やさしく、ある提案をする、
「大丈夫、私が責任を持って、誰にも知られず産ませてあげるから」
「本当に、嬉しいです」そして、妊娠している事を悟られない様に、服装などにも、注意を与える。
すると、沙友里の表情が急に明るくなった、今までの暗い表情とは、全く違う。
「良かった、良かった、本当に、良かった」これで安心だ。
二人は、連絡先などを交換して、別れる。
そして、沙友里の出産の日を迎える、美由紀は、産婦人科に20年間も努めていた。
もう、ベテランだ、それは、美由紀の一室で行われる。
そして、無事出産する、元気な女の子だ。
美由紀は、その女の子を預かり、沙友里と別れる。
そして、沙友里は、もう二度とその女の子に会う事はできない、又、美由紀とも会う事もない。
二人は固い約束を交わす、沙友里は、勿論、納得ずくである。
沙友里にとって、この子は美由紀によって、素晴らしいその子の人生が待っていると信じていた。
しかし、美由紀は悪徳業者だったのだ、臓器提供の悪魔なのである。
勿論、その事は、沙友里の知る由もない。
しかし、、必ず、その子に、幸せな人生が待っていると、沙友里は、信じていた。
そして、自分の子に別れを告げる時、沙友里は、その女の子の顔を撫でる。
必ず、幸せな人生を送って欲しい、母親としての最後の願いだ。
美由紀は、何度も固い約束を交わし、沙友里と別れる。もう一生会えない。
美由紀が、きっと、この子を幸せにしてくれるだろうと、沙友里はそう信じていた。
しかし、美由紀は、悪徳業者だったのだ、そして、その牙をむく。
その女の子には、あまりに残酷な悪魔の運命が待っているのである。
その事実を、沙友里は、全く知らない、そして、美由紀と笑顔で別れる。
そして、二人は、もう二度と会う事はない。
美由紀は、ある悪徳病院と契約していた。
それは、臓器提供の契約を結んでいたのだ。
臓器提供の代わりに数千万の報酬を貰うと言う契約なのである。
その女の子は、梨花と名付けられた。
勿論、住民登録もされていない、もし死んだとしても、何も証拠がない。
病院には、完全に消去できる高性能の粉砕機がある。
そして、高加熱完全消去処理機もある、もう完璧である。
証拠は確実に全く何も残らない、まさに完璧だ。
梨花の住む部屋は、ビルの一室である、そして、二重の扉がある。
絶対に外へは出られない、ここで一生過ごす事になる。
そして、梨花の15歳の誕生日が、運命の手術の日である。
その部屋には、テレビもある、梨花は現在の生活状況を十分に把握できる。
しかし、スマートフォンなどの携帯電話は所持できない。
そして、梨花が3歳になると、その性格がだんだん分かってくる。
それは、驚くほど、優しく素直な性格なのである。
梨花の15歳の手術の日に、睡眠薬で眠らせて、いきなり手術する方法もある。
しかし、美由紀は、残酷な教育を行う。
物心ついた時から、本当の事を言う。
「あなたは、臓器提供の為だけに、この世に生まれてきたの、それが、あなたの人生」
勿論、梨花は毎日テレビも見ている、毎日好きな事をして、自由で幸せな人生が待っている。
そして、80歳から90歳の楽しい人生、とにかく毎日楽しく暮らせる。
それが、一般社会では当たり前の人生だと言う事も、梨花には分かる。
しかし、現実の梨花の人生は違う、たった15歳で死ぬ運命だ。
テレビなどに出てくる、ごく当たり前の幸せな人生とは全く違う。
梨花は死と隣り合わせの、あまりにも残酷な運命が待っているのである。
そして、テレビ放映では、次々と毎日幸せに暮らす生活が繰り広げられる。
勿論、梨花には、何もない、テレビだけが梨花の楽しみでもある。
そして、梨花が6歳になった時、ゲーム機が与えられる。
とにかく楽しい、もう梨花はゲームにも夢中だ、楽しい、本当に楽しい。
そして、テレビとゲーム、それは完全に梨花の生活の一部となっていた。
やはり、梨花が一番好きなのは、テレビアニメだ、もう、最高に面白い、
最高に楽しい、梨花は、最高に楽しい幸せな時間を送っていた。
しかし、自分の人生は15歳で終わる運命だと言う事も梨花は分かっていた。
梨花の頭の中は、常に自分は臓器提供の為だけに、この世に生まれて来たと言う意識がある。
ここから、出る事は絶対にできない、自分自身に自問自答しながらの生活だ。
そして、自分の15歳の誕生日には、確実に死が待っているのだ。
毎日が最高に楽しい、しかし、死との背中合わせの毎日が続く。
そして、梨花が13歳になる頃から、更に残酷な教育が始まる。
それは、ビデオ動画だ。
今は、臓器提供の人が少ない、日本から、わざわざアメリカまで行って手術をする人もいる。
数千万のから一億もする、しかし、手術を待ちきれずに亡くなって行く人も多い。
現実は厳しいのだ、そして、亡くなって行く子供に泣き崩れる両親が映し出される。
もう、涙、涙だ、本当に本当に辛いのだ。
それは、毎日見させられる、次々と亡くなって、涙、涙の場面が現れる。
すると、梨花に変化が起こる、梨花が涙を見せ始めたのだ。
そこに、梨花の優しさが現れる、本当に優しい性格がにじみ出る。
そして、次には、手術が成功して、喜ぶ両親の姿が映し出される。
父親も母親も、もう涙、涙だ、「助かったのだ、本当に助かったのだ」
「嬉しい、本当に嬉しい」そして、助かって喜ぶ姿が次から次へと映し出される。
それは、毎日、毎日見せられる、そして交互に。
亡くなって泣き叫んでいる姿、そして手術が成功して喜ぶ姿。
それは、梨花の心を大きく揺さぶる事となる。
そして、一年が過ぎた頃、自分から驚く事を言い始めた。
「梨花の臓器をみんなに提供してください、お願いします」
梨花は知っていた、自分の臓器提供で3人の命が助かる事を。
すると、美由紀は、笑顔で「あなた、偉いわ、立派よ、素晴らしいわ」
そして、梨花の手を握り勇気をたたえる、すると、梨花も美由紀の手を握り返す。
二人の強い友情が結ばれた瞬間だ。
そして、梨花も笑顔でいっぱいだ、梨花の晴れ晴れとした表情が印象的である。
やがて、梨花の手術の日の三日前、美由紀は梨花を連れ出す事にした。
行く先はディズニーランドである、今まで外出した事は一度もない。
初めての外出だ、梨花は嬉しくて仕方がない。
それは、美由紀の判断だ、もう、梨花は、完全に洗脳されていると感じたからだ。
しかし、少しの不安もある。
やはり、ディズニーランドは凄い、それは、もう、梨花にとって感動、感動の連続だ。
「どう、ディズニーランドは、楽しい」
「勿論、ディズニーランドは最高に楽しいです、もう、最高に楽しいです」
しかし、梨花には、三日後、死の試練が待っているのだ。
その時はまだ、その空気を読み取る事は全くできなかった。
そして、喜びに満ち溢れた、施設のイベントに、もう、興奮、興奮の連続だ。
もう、最高だ、最高に楽しい、梨花の喜ぶ姿は美しい、最高に美しい。
やはり、ディズニーランドは凄い、梨花にとって生まれて初めての感動は留まる事を知らない。
そして、大いに楽しんだ後、ベンチで梨花が、アイスクリームを食べたいと言ってきた。
すると、美由紀が、買ってくると言って腰を上げる。
しかし、梨花が、「いいの、私が買ってくる」と言うのである。
勿論、梨花は今まで、一度も買い物はした事はない。これが、始めての買い物だ。
梨花はどうしうても始めての買い物がしたいのである。
仕方がない、美由紀は、お金を渡して、アイスクリームを買いに行かせた。
梨花は、笑顔で出かける、美由紀は、ベンチで待つ事にした。
しかし、不安が残る、梨花がこのまま逃げてしまえば、もう、どうする事もできない。
もし、梨花を無理やり呼び戻そうとしても、警察ざたになる。
そして、三日後には、梨花の確実な死が待っている。
果たして、確実な自分の死の為に、梨花が戻って来るかどうかである。
このまま逃げてしまえば、死ななくても良い、幸せな人生が確実に待っているのだ。
最高に楽しい人生の方が良いのか、確実な死を選んだ方が良いのか、これが最後の分岐点だ。
もう、チャンスはない、これを逃せば確実に死が待っているのだ。
美由紀は、ベンチでソワソワしながら梨花が戻って来るのを待つ。
このベンチでからは、梨花の姿は全く見えない。
果たして梨花は、確実な自分の死の為に、本当に戻って来るだろうか、不安が募る。
しかし、心配はいらなかった、梨花は、アイスクリームを二つかかえて笑顔で戻って来た。
梨花が選んだのは、100%確実な、死を選んだのである。
二人は、笑顔で顔を見合わせながら、アイスクリームを食べる。
すると、梨花は、「今日は本当にありがとうございます、人生は本当に楽しい事を実感する事ができました、美由紀さんのおかげです、もう最高に楽しいです、メチャメチャ楽しいです、本当に、本当にありがとうございました」
梨花は、笑顔でいっぱいだ、その笑顔は美しい、最高に美しい、美由紀のいつわざる心境だ。
やがて、手術の日の当日を迎える。
病院に着いて、白い服に着替えて、梨花は手術室へと向かう。
梨花は、美由紀の手を強く握りしめ、感謝の気持ちを伝える。
「今まで、母親同然に育てて頂きました、美由紀さんには、感謝、感謝でいっぱいです、本当に、本当にありがとうございました、テレビやゲーム、そして、特にディズニーランドは、私の最高の宝です、もうメチャメチャ楽しかったです、梨花は、最高に幸せものです、本当にありがとうございました、そして、今から、私の心臓、肝臓、腎臓を困った人に移植してあげます、これも楽しみです、手術が成功して、最高に喜んでいる姿が目に浮かびます、勿論、それを自分で確認する事はできません、しかし、私のお墓の前で、私に伝えてください、お願いします、私は、この世に生まれて来て良かった、最高に良かったと思っています、梨花は幸せものです、本当に幸せものです、世の中の困った人の為にお役に立てる、私の臓器がみんなのお役に立てる、もう最高にうれしいです、それが梨花にとっても最高に幸せな事なのです、
私の臓器提供の為に、ご苦労頂いた美由紀さんには感謝です、もう感謝、感謝でいっぱいです、本当に、本当にありがとうございました」
そして、梨花は、美由紀の手を固く握り締め、手術室へと向かう。
そして、手術室の扉が締められる。
死んだはずの梨花だ、しかし、梨花の目が開けられる、梨花は生きていたのだ。
「ここは、何処」すると、看護師が 「ここは病院よ」
梨花は、もしかして、天国へ行ったのではないかと考えたのだ。
しかし、梨花は、本当に生きていたのである。
そして、美由紀が、現れる。
「ごめんなさい、これは、大きな実験だったの、あなたを試す実験よ」
そして、梨花に謝る、ごめんなさい。
その大きな目的は、愛である、自分の命を犠牲にしてまでの、愛があるかどうかの実験だ。
梨花は見事に合格である、これは、佐々木一郎が計画していたのだ。
一郎は、世界平和実現には、必ず、愛が必要だと確信していた。
勿論、愛が地球を救うと言うテレビ番組もある、しかし、それは、お金集めだ。
真の愛ではない、一郎は、真実の愛が欲しかったのである。
すでに、梨花は住民登録もされている、そして、別の男の子にも同じ様な実験をしている。
そして、結果もやはり同じだ、一郎は、この二人を結婚させて、その動向を見る。
愛が、地球を救う、その、革命が今から始まる。
佐々木一郎の、地球愛は留まる事を知らない。
そして、世界中の誰もが望んだ、劇的な世界平和実現が、すぐそこに待っているのである。
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