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Railway  作者: 口羽龍
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 2人は豊橋駅前にやって来た。豊橋駅前には路面電車が発着している。愛知県どころか、東海地方唯一の路面電車だ。駅前を起点に、赤岩口、運動公園前を結んでいる。


「これが路面電車か」


 2人は発着する路面電車を見て、興奮している。路面電車は、見ているだけで興奮する。


「そうだね。確か、東海地方最後の路面電車だっけ?」

「うん。ここもなかなか面白い路線だね」

「井原駅の近くに日本一の急カーブがあるんだよね」


 赤岩口と運動公園前の1つ前に、井原という停留場がある。運動公園前に行く電車は、ここで右に曲がるのだが、そのカーブの半径が11mで、日本一の急カーブだ。ここもまた撮影スポットだ。超低床電車のほっトラムはこのカーブを曲がれず、駅前と赤岩口の限定運用だ。


「そうそう! ほっトラムは曲がれないんだよな。800形は最初、曲がれなかったけど、足回りを改良して走れるようになったんだ」

「そうそう! あれ、最初は名鉄の美濃町線で活躍してたんだけど、廃止になって豊橋鉄道や福井鉄道に譲渡されたけど、みんな豊橋鉄道に集まったんだよね」


 その他にも、曲がれなかった車両がいた。800形だ。800形は元々、岐阜にあった名鉄美濃町線の車両だ。だが、2005年3月で廃止になり、1両がここにやって来た。だが、部分低床車である800形はここを曲がれなかった。だが、足回りを改良して、曲がれるようになった。さらに、福井鉄道で余剰になった2両も追加して、合計3両になった。


「どうして最初から豊橋鉄道に行かなかったんだろうね」

「そうだね。単車だから輸送力が少ないのに」

「うん」


 福井鉄道に譲渡された2両は、単行で定員が少なく、しかも連結器がなかったため、使いづらかったという。だったら、どうしてここに全部譲渡しなかったんだろうかと思う。


「その他にも、都電から譲渡されたものもあるんだよ」

「そうそう!3500形だっけ?」


 3500形は都電で活躍していた電車だ。元となった7000形は足回りを改良されて、7700形に改番されたうえで、今でも都電で走っているという。


「うん。足回りを馬車軌間から狭軌に履き替えてるんだよな」


 と、そこに800形の802号がやって来た。黒い外観で、側面にはブラックサンダーと書かれている。


「あっ、来た来た! ブラックサンダー号だ!」

「本当だ!」


 豊橋市にある有楽製菓で作られているブラックサンダーのラッピング電車だ。


「今のは2代目なんだよな」

「うん。初代は初代ブラックサンダー号のまま引退しちゃったんだよな」


 現在のブラックサンダー号は2代目で、初代は3200形の3201だったという。これがとても話題で、豊橋限定のブラックサンダーのパッケージにも描かれていたという。2代目に変わると、そのイラストも802に変わった。


 明子はその先を見た。すると、そこにはほっトラムもある。


「見て! あそこにはほっトラムがある!」

「これ、1本だけなんだよな」


 ほっトラムは1両だけで、どのダイヤで運用されるかは時刻表でわかるようになっている。


「うん。そして駅前と赤岩口だけの限定運用」

「仕方ないよ。超低床電車だもん」

「そうだね」


 駅前を電車が出ていく。現在の主力、780形だ。


「あれがここの主力車両、780形だね」

「これも元々名鉄の車両だったけど、岐阜市内線の車両なんだね」


 780形も元名鉄の電車だが、こちらは岐阜市内線、揖斐線で活躍していた。800系と共に豊橋鉄道にやって来たという。これによって、名古屋市電最後の生き残りだった3100形が引退した。


「うん。廃止になって、800形と一緒にここにやって来たんだね」

「これで残っていた名古屋市電からの譲渡車は引退したんだね」


 ふと、明子は考えた。乗った事はないが、確かに名古屋市にも路面電車はあった。名古屋市営地下鉄の桜通線の桜山駅には、その壁画があるという。


「うん。名古屋にも市電があったんだね」

「ああ。この豊橋鉄道には3700形もあって、これは少しスリムなんだよな」


 その他にも、豊橋には同じく元名古屋市電の3700形も走っていた。3100形よりもスリムで、晩年はレトロ電車として親しまれたという。


「うん。だけど晩年はレトロ電車として活躍してたよね」

「ああ」


 と、明子は思った。路面電車に乗ってみようかな?


「ちょっと乗ってみようか?」

「うん」


 2人はホームにやって来た。すると、ほっトラムが入線してきた。


「これがほっトラムだね」


 ほっトラムのドアが開いた。本当に段差がない。これなら車いすやベビーカーでも楽々だ。


「ほんとだ! 段差がない」

「超低床電車は熊本の路面電車が日本で初めて導入して、全国の路面電車で導入されていったんだよね」


 日本での超低床電車は、熊本市交通局に導入されたのが始まりで、それから徐々に全国の路面電車に広まっていった。


「特に岡山電気軌道のはすごいと思わない?」

「うん。確か、JR九州のデザイナーの水戸岡鋭治がデザインしたんだよな」


 岡山県の岡山市にある岡山電気軌道にも超低床電車が走っている。名前は桃太郎にちなんで『MOMO』という。


「そうそう! 水戸岡さんのデザインって、木をふんだんに使ってるのが印象的で、奇妙なのが多いよね。だけど、これが目を引く」


 考えてみればそうだ。水戸岡鋭治のデザインした電車は、外観が個性的で、内装のいたるところに木を使っている。特に明子が最高傑作だと思っている『ななつ星in九州』は、まるで高級ホテルのような木目調の内装が特徴で、いつかはこれに乗って九州を旅したいと思えてくる。


「僕的には821系がすごいな」


 821系は2018年にデビューしたJR九州の電車だ。同時期にデビューしたYC1系とよく似た外観だ。この電車の最大の特徴は、左右の下だけではなく、車体の縁にもライトがあり、夜になるとそれがとても目立つ。その外観から、『イカ釣り漁船』、『パチンコ屋』などと言われている。だが、現在は縁のライトを消したり減光したりしているそうだ。


「ライトがたくさんあるやつでしょ?」

「そうそう!夜に走ると異様に目立つよね」


 明子も知っている。実際に乗った事がある。


「だけど、それがJR九州らしいから好き」

「僕も!」


 ふと、大介は思った。いつか2人で九州を旅したい。そして、いろんな電車を見て、撮りたいな。


「いつか一緒に九州を旅したいね」

「ああ」


 路面電車に乗りながら、2人はこれからの日々の事を考えた。

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