8話 能力が(強すぎて)無いそうです。
レイラからの口付け後、祝福を獲得した俺は何を得たのか、確認を行う。
確認と言っても、心の内に浮かび上がる。
『超再生』、死に至る傷ではない物以外は完全再生を行う。腕を切られても、再生可能。
いや、マジこれズルくね?
壁に激突して、土煙を上がるなか何もしてこないギネンモドキ。
てか、何してんだアイツ?
実は干渉を使って土煙の中を覗いていた。
何もせず、ただ制止している。
だが、突如土煙を一気に払う。
『……テメェ何者だァ?』
「ただのEランク冒険者だ」
『イィランクゥ?』
「そうだ」
『……イィランクにしてはァどうにも強すぎるゥ』
「知らんよ、俺はEランクと認定されてるからそれしか言えないし。他の人がどれくらい強くてEランク以上なのかはっきりと分からないからな」
『フゥン……だけどォお前のその力、明らかに能力では無いな』
レイラにもバレてるけど、そんなに分かりやすいものなのか?
『祝福だなァ。それも最上級だ……神様にでも貰ったのかァ?』
鋭いな……てか、その前に。
「おい」
『何だァ?』
「お前の事を何て呼べば良い?」
『ラースド』
「ラースド……ねぇ、分かった。ラースド」
『あァ?』
「その身体から出ていってくれないか?そうしたら、何もなかった事にするから」
『……』
俺の言葉に驚愕したのか、そのまま突っ立つ。
しかし、ラースドの姿が一瞬にして消える。
『調子に乗るな、人間風情が』
強烈な一撃がラースドから放たれた。
だが、まあ当然俺には当たらないけど。
『まだこんなんじゃ、終わりじゃないんだよォッ!!』
しかし、俺に当たっていると感じているのだろうか、ラースドの攻撃が止まない。
先程とは別で障壁に当たった瞬間、爆発が起きる。
『フ……やはり口先だけかァ』
ラースドがレイラ、ハート、ソイレーンさんの方を向く。
『安心しろォ?痛みは一瞬だァ』
レイラとソイレーンさんが構える。
「何勝った気でいるんだ?」
『ーーッ!?な、何故ェ!?』
「だって、当たってないもん」
『ふざけるなァ!確かに……確かに手応えはあったァ!!』
「ああ、俺の障壁に当たってたな」
『何を……言って、いるゥ?』
「いや、だから俺の障壁にあたーー」
『ーーそんなわけある筈無いだろォォォォッ!!! 今の俺はその女以上の強さだァ!! 竜帝と世界最強の騎士以上だぞォォォォッ!!!』
「まぁ、お前から見たら俺何てそんなに実力は無いだろうな。本当にEランク位の実力だろう」
『じゃあ何故ェ!』
「俺はある方から特別な力を貰ったんだ。そうだな、この力があって俺と同等なのは多分、1人位だろうな」
1人と言うのは、河野君だ。
まぁ、河野君は俺と同等かそれ以上かもしれないけど。
思ってるとラースドが何故か怯え始める。
『待て、まさか貴様ァ……!元から祝福持ちだと言うのかァ……!』
そもそも祝福と能力の差が分からないんだよな。
まぁ、ここで変な反応してもあれだし、
「ああ、そうだ」
さてと、ラースドの能力を封印使えなくしよう。
干渉でラースドの能力を封じる。
「よし、もう良いだろう」
『クハハハハハ!何だァ?反撃するのかァ?』
「ああ」
『良いことを教えてやろう』
「何?」
『この身体はギネンの物だ。私が傷つくと言うことは奴の身体を傷付けると言うことだ。意味が分かーー』
「ーーだからどうした?」
ラースドが話している最中だが、瞬時に近付いて顔を片手で掴み、そのまま投げる。
投げると余りの勢いに石壁を貫いて外へ出ていく。
「あー力入れすぎた?」
俺は飛んでいっているラースドの元へ干渉して飛んだ。
飛んでいった瞬間に回し蹴りをラースドへ放つ。
そのままレイラ達のいる場所へ飛んでいくラースド。
俺は山に干渉してラースドがぶつかった時に起きる衝撃を無くす。
無くした瞬間にラースドはレイラ達のいる場所へ到達する。
ラースドよりも先に飛んでから、鋭い一撃を飛んできているラースドへ放つ。
吹っ飛びそうになるラースドと俺の空間に干渉してその空間を無くす。
無くしたと同時にもう一撃放つ。
その行動を4回繰り返した後、最後に踵落としを放った。
『……』
「ふぅ……てか、頑丈だなぁー普通弾け飛んだり、千切れたりするんだけどな」
俺は視線を感じて、そちらの方へ向く。
ソイレーンさんとハートが目を丸くして口を開け、驚愕している。
レイラは口元を押さえているが、目を丸くしている。
「あー……ソイレーンさんが、消耗させてくれたから! うん! 俺のおかげじゃない!」
「いや、それは無いだろうミナト……」
「え、いや……でもーーッ!」
俺は殺気を感じ、ソイレーンを守る為に抱き寄せてから、片腕で何かを防いだ。
「ーー危ないじゃん」
「え?」
何故かソイレーンさんが驚愕しいる。
『お、可笑しい……!何故だァ!この身体はギネンの物だぞォ!』
「ああ、そうだな。でも、ヒーリング・リヴァイバルでどうにかするし、生きてさえいれば、ね」
『く……狂っていやがるゥ!』
「さて、ラースドもう一度言おう」
指を差し、
「その身体から出ていけ、今なら見逃してやる」
再度ラースドへ警告するが、ラースドから怒気が溢れるのを肌で感じる。
と言うより、空気がヒリつく。
『祝福だよりの雑魚がァァァァッ!!調子に乗るなァァッ!!』
「あそ」
空間干渉し、
「なら、ブッ飛ばす」
ラースドとの空間を無くし、本気の一撃を放つ。
『ゴフッ!!!』
流石のラースドも本気の一撃には耐えられず、吐血する。
すかさずヒーリング・リヴァイバルをラースドに掛け、何事も無かったかのようにする。
それを数回行うと、
『わ、分かったァ!分かったからァ!出ていく!出ていくからァヤメロォ!!』
堪えたのかラースド自身が折れて、ギネンの身体から黒いモヤが飛び出る。
なんで、黒いモヤがギネンの身体から出たのに停滞しているな……何でだ?
『我、望む』
は?え、何?
『依り代となる者』
……だから?
『貴様の身体、頂くぞッ!!!』
しゃべり方チガくね?
『うるさいッ!!!』
キャラ作り?だった?
『憑いた時にその人物の波長とかで変わるのだッ!!!』
ほーん、へーなるほど?
「ミ、ミナト……そろそろ、離して……欲しい、のだが?」
「あ、あー!ご、ごめんなさい!」
顔を赤く染め、恥ずかしがるソイレーンさんから直ぐに離れる。
マジで失礼な事してたわ。
「ミナトッ!」
レイラが突然俺の名前を叫ぶ。
何かと思い、レイラの方を見る。
その瞬間、身体に何かが入った。
「『クフハハハハハハ!バカが入ーー』」
「ーーっても、残念。それを待ってました」
正直、ヤツが俺の中に入ればそのまま封印してやろうと思ってたから丁度良い。
それに少しだけ、喋らせたのもしっかり入ったか確認するためだ。
問題は無さそうだな。と、思っていると、妙に視線を感じてそちらの方を見る。
「「「……」」」
「あー……大丈夫。こうやって……出すから」
俺は黒いモヤを自身の身体から取り出し、そして握りつぶした。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』
おお、スゲェ断末魔。
と思うと三人が耳を塞いでいた。
「流石に聞こえるか」
「う、うん」
「まぁね」
「まぁな」
三人とも同タイミングで凄い。等と感心していると、冷静になったのかソイレーンさんが近付いてくる。
「……ミナト、お前は何者だ?」
「……」
流石に隠しきれないか……あの馬鹿が色々言ったからなぁ……仕方無い。
「俺はーー」
レイラとハートにすら言ってない事、
「ーー異世界から来た転移者だ」
自身を打ち明ける事になった。
8話 終