29話 試験が始まるそうです。
大通りを抜け、噴水広場に出た。
すると、
「さてぇ、ミナトさん。今からぁ商業ギルドにぃ行きますぅ」
「お願いします」
「はぃそうしたらぁ、目の前ありますぅ」
「あ、これ?」
広場に大きく横と縦に大きい建物がある。
そこを差すミーシャ。
明らかに冒険者ギルドより大きい。
「何か、冒険者ギルドより大きいような」
「はぃ、こちらの方が大きいですぅ」
「んーその差は?」
「冒険者ギルドはぁ討伐や採取、探索がメインになりますぅ。それに対してぇ、商業ギルドは商いに関わるほぼ全てに関与しているからですぅ」
「あーなるほど、需要の差ね」
確かに商いに関わるほぼ全てとなると、冒険者ギルドよりも多く稼いでいる。
なら、少し頭の良い奴なら危険な冒険者出はなく、商人になった方がいい筈だ。
「ミーシャ、気になったんだけど良いか?」
「どうぞぉ」
「少し頭の良い奴なら、冒険者よりも稼げる商人になった方が良いんじゃないか?」
「そうですねぇ、それが正解何ですぅ」
「ならーー」
「ーーけどぉ、ダメなんですねぇ」
「何がだ?」
「それが今から分かりますぅ。行きましょー」
そう言って笑みを浮かべながら、商業ギルドの扉を開ける。
扉を開け、中を見るとロビーチェアが一定間隔で設置され、そこに人がほぼ埋め尽くす様に座っていた。
それだけでなく、書類を記入するスペースがあり、そちらにも人が何か書類を記入している。
カウンターがあり、受付の男性や女性が各自対応していた。
いや、完全にこれ俺の世界にもあった、登録するための役所だ。
この世界にもこんなにしっかりしている所あったのか。
「ミナトさん、とりあえずぅ受付しましょうー」
「あ、ああ」
とりあえず、俺はミーシャに着いていく。
着いていくと、カウンターの男性の目の前に立つ。
「すみませんー宜しいでしょうかぁ?」
「こんにちわ、どの様な内容でしょうか?」
「こちらの方にぃ、お料理をお出しできるぅ必要な許可証が欲しいのですぅ」
「なるほど、商業登録やその他の認可書ですね。分かりました、でしたらあちら」
丁寧に手で記入する場所を差し、
「あちらにて、この商業ギルド加盟書、商業登録書、飲食店認可書に飲食店認可試験申し込み書のご記入をお願いします。あ、因みに何ですが開く場所が決まっているのでしたら、設営所在地登録書も必要になりますので、一応お渡ししておきます。何か他、分からない事がありましたら、隣のカウンターがお問い合わせ、相談カウンターになっていますので、そちらでお聞き下さい」
おお、凄いしっかりしている。
俺の世界とほぼ似たような事しているな、うん、いやまぁ、ちゃんとは知らないんだけどね。
「とりあえず、書きますか」
「……」
反応が無い、むしろそのまま突っ立っている。
何だ? どうした?
ミーシャの表情を伺うため、横に立ち確認する。
「……」
口を開けてフリーズしていた。
「ミーシャ……?」
「ハッ! だ、大丈夫ですぅ。さ、さあ、書きましょう、書きましょう」
何処かおかしい、というか固い。
何だ、どうしたんだ?
思うなか、ふと辺りを見回すと、
「あの、こちら未記入です。後、こちらは間違いなので訂正をお願いします」
「え、あ? ま、また? い、良いじゃん、ね?」
「いけません。規則ですので」
と言う人もいて、
「えと、書類書類……あ、1枚忘れました……貰っても良いですか?」
忘れる人、
「この区域で販売したいです!」
「では、設営所在地登録書にご記入して下さい」
「あ、はい」
「あと、気になったのですが、こちら何の販売ですか?」
「よくぞ聞いてくれました!こちらです!」
カバンから小さい、ハニワ見たいのを取り出した。
それを見た瞬間、職員の目から光が消える。
「大変申し訳ございませんが、そちらを販売する場合、月どの程度収入を得ようとしていますか?それと、そちらの販売価格はおいくら程ですか?」
「ええ!まず、こちらはですね!約100年前の代物でしてぇー何せ古い物ですからねぇ!それに歴史もありましてーー」
「ーーおいくらですか?」
「え、あ、そ、そうですねぇ……金貨1枚で、どうでしょう?」
「……見直しが必要になりそうなので、お隣の相談カウンターへお願い致します」
最後は笑みを浮かべながら、相談カウンターへ案内する。
これらの光景を見てから思う。
あれ、実はこの世界の人達って店なり、会社を経営するって言う意識がかなり低い?
とりあえず、渡された書類に目を通してみる。
何だ、書いてある事が大体分かる。
氏名、年齢、住所、店舗区分。
「ミーシャ」
「は、はぃ……何でしょうー?」
「俺達の住所ってある?」
「あぁ、それなら空挺の番号が代わりになりますぅ」
「なら、空挺の番号を教えてくれないか?」
「KTN1010ですぅ」
「ありがとう」
ふむ、後は店舗区分だけだ。
店舗区分は食品取り扱い店。
設営所在地は先程のKTN1010。
これで、大丈夫だな。
「よし、出来た」
「え?」
「ん?」
「ほ、本当ですかぁ?」
「ああ、問題ないと思う」
俺はカウンターへ足を運び、書類を提出する。
本来なら、順番待ちだろう。
だが、提出用カウンターには誰にも並んでいない。
多分、となりの受付と相談カウンターでほぼ弾かれている。
「お願いします」
「はい、確認します」
だから、この様に通るのだ。
受付の女性が一通り目を通すと、口角を僅かに上げ、
「問題ございません。では、試験を行います。日程は如何致しましょう?」
「ありがとうございます。では、一番早くていつが空いていますか?」
「……なるほど、ご存じ無い感じですかね?」
「何がですか?」
「基本何時でも受け付けております。営業時間内なら、ですが」
「あーなるほど、でしたら早めが良いので本日は如何ですか?」
「畏まりました。では、只今からお受けします。この建物の2階の奥が試験会場になっております」
「ありがとうございます」
俺は言われた通り、建物の2階へ向かおうとした。
「何かぁ慣れてますねぇ」
「まぁ、俺の世界にも似たような場所があったから」
「なるほどぉ」
話しつつ、会場である2階へ上がる。
すると、立て札がありそこには、飲食店認可試験場と書かれていた。
矢印案内があったので、その通りに進む。
進んでいくと、正面から男女がこちらに歩いてくる。
ある程度近付いた所で、
「もしかして、アンタら飲食店認可試験受けるつもりか?」
話を掛けてきた。俺はミーシャと顔を合わせ、
「そうです」ぅ」
「止めといた方が良いぞ」
何故か止められた。
ーーーー商業ギルド1階、カウンター内。
この日、久々にまともな方が来てご満悦な受付嬢。
鼻歌を小さく歌いながら、仕事を進める。
「そういえばさ、さっき来た男の人ーー」
「ーーそうそう、凄いよね!こっちから言うこと無いのが凄い! あーあ、あれだけまともな人来てくれれば良いのに」
「それはそうなんだけどさ、違うのよ」
「何が?」
首を横に傾げる。
何が違うのだろう、そう思う受付嬢。
「今年の飲食店認可試験官誰だか覚えてるの?」
「あ!」
マズイ、非常にマズイ。
何がマズイのか、それはその試験官は元シェフ。
それもシェフと言ってもただのシェフではなく、世界トップ10のシェフ。
そして飲食店認可試験官の中でも一番偉いし、とても厳しいのだ。
それに飲食店認可試験は年間で3000以上ある。
1日約10人以上が来ること。
何より、昨年の合格者は約100人。
しかし、この方が試験官となると大幅に減り、5人~20人位しか合格しない。
「受かれば良いけど」
ただ祈るのみ。それしか受付嬢には出来なかった。
ーーーー2階飲食店認可試験場手前
「元世界トップ10に入ったかシェフか何だか知らないけど、ケチが凄いから!」
「そうそう!飾り付けがなってない、匂いがしない、美味しくない、何て酷い!」
男女は握りこぶしを作り、震えている。
そして、互いに胸の高さまで上げてから、
「「だから、止めた方がいい!」わ!」
熱弁してきた。
アハハーと乾いた笑みを浮かべたが俺は、
「でも、やるだけやります」
少し微笑みながら答える。
「そっか、なら頑張れ!」
「応援してるわ!」
それから2人と別れ、俺とミーシャは会場へ向かう。
さてはて、どんな人なんだろうか。
少し気になるな。
そして、試験会場の扉の前に到着する。
息を整え、扉をノックする。
「お入り下さい」
扉の向こうから返事があり、俺とミーシャは一声掛けてから扉を開けた。
「「失礼します」ぅ」
部屋に入るとそこにはキッチンがあるが、何故か仕切りも存在している。
他にも受験者が椅子に座っていた。
それだけではない、実は会場に近付くに連れて、良い香りがしていたのだ。
そして、扉を開けた瞬間に食欲がそそられた。
キッチンは1つ出はなく、幾つか存在している。
料理を作り終えたのだろうか、2人が前の席で座っていた。
試験官は3人で横に並びながら座っている、ちなみに全員女性だ。
紙に何か書いており、中心の女性に左右の女性が紙を渡す。
「これで試験は以上です、お帰り下さい」
「待ってくれ、私の料理の感想を聞かせてくれ!」
「良いのですか?」
「参考までにしたいのです!」
「分かりました。では、オッホン」
咳払いを1つ着くと、左右にいた女性が顔を伏せ、あちゃーと言わんばかりに顔に手を当てる。
「とりあえず」
「はい!」
「美味しくない」
「はい!?」
「美味しくないのよ」
「え?え?ちょ、ちょっと待って下さい! 貴女達なら分かる筈だ!これらの食材が全て高級である事が!」
「ええ、そうね」
「それで美味しくない訳がないだろう!」
受験者の発言にため息をつく女性達。
その流れだろうか、
「あ、因みにそこの方は、ここは料理を発表する場所ではないの。ご家庭で出てくる料理を提供するお店に行きたいと思わないので、お帰り下さい」
その発言に頭に来たのだろう、立ち上がり座っていた椅子を取り飛ばして会場を出ていった。
「彼にレッドサインを、ここ5年間はこの試験に受けれない様にリストに載せといて。あ、貴女も早くお帰り下さい」
「な、納得がいかん!高級食材だと分かっていて、それを豊富に使ったこの料理が美味しくないだと!!」
「事実です」
「それが納得いーー」
「ーーそもそも、高級食材を豊富に使ったとして、それが美味しいとは限らない。それにそれを食べるお客様は上の層限定ではなくて?」
「そ、そうだが?」
「……三流ね、もう一度『料理』と言うものを改めて勉強してから、ここに来て下さい。以上です」
「納得がいかーー」
「ーーこれ以上騒ぐようでしたら、貴方もリストに載せますが宜しいでしょうか?」
「……なら、本当にこれだけ教えて欲しい。何故美味しくない?」
男の発言にまさかだったのか、3人が顔を合わせてから、
「そこから?」
「え?」
「……試験は終了です。本当にあらためて『料理』を勉強してから、来年挑んで下さい」
「ま、まーー」
「ーーリストに載せられたいのですか?」
ぐぬぬ、と言わんばかりに男はその場を去った。
そして、嘆息を1つ付いてから、
「お待たせ致しました。飲食店認可試験の筆頭試験官のネイザンです。左右の2人、右がラクラで左がニーヤです」
一礼する2人に頭を軽く下げる。
「さて、試験は至って単純です。私達に料理を提供して下さい」
「分かりました」
「因みに何ですが、ここで落ちますと来年まで受ける事は出来ませんのでご注意下さい」
やっぱりね、さっき来年挑んで下さいって言ってたし。
「では、初めて下さい」
飲食店認可試験始まりました。
29話 終