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22話 敵が強い訳ではない無いそうです。

大変お待たせ致しました。


最新話になります。よろしくお願いします!


何かが来る。それを探知した俺はオルクスさんを担ぎ上げる。

担ぎ上げてから数秒後、背筋が凍り付くような感覚に襲われる。

鳥肌が立ち、本能的に告げた。これは危険だと。

その瞬間、


「オォォォォォォォォォォォ」


悲鳴の様な甲高い声が洞窟内を響かせた。

俺は直ぐ様、出口の方へ走る。

間違いなくヤバい。


「ァアアアアァァアアアアッ!!」


女性の悲鳴、と言うより憎悪に近い叫び声。

その声から感じとるのは、おぞましい程の殺意。

背中が凍り付く様な感覚を覚えながら、振り返らずひたすら走る。

すると、目の前突如現れた四足歩行の何か、サイズ的に牛とか馬位だろうか。


その牛か馬のサイズの何かを跳躍して、飛び越える。

飛び越えてから数秒後、


「ヴォォォォォォォォォォッ……」


悲鳴の様なのを最初に上がったが、直ぐに収まる。

間違いなく死ぬ。追い付かれたら殺される。

走り抜ける事数十秒、正直まだ能力が本調子ではない為、完全に強化が出来ていない。

とりあえず、焦らずに出口に向かおう。


体力的にはこのままの疾走は間違いなく、追い付かれる。

俺の体力が切れればそれまでだから。

なら、どうする? いや、実際には択はある。

しかし、それは本当の本当に最悪なケースのみ。


探知して他の魔物がいるのは確認出来ている。

それも多少強い魔物だ。

多少強い魔物をぶつける、この手が今のところ良い。

だが、デメリットはこちらも非常に危険だと、言うことだ。

今追っかけられているが、この追尾がいつまで続くのか……これに関しては相手次第。


それ以外なら洞窟内を、もう一度探知して一番崩れそうな所に攻撃して、瓦礫の壁を作る。

しかし、これはこれで巻き込まれる可能性がある。

俺自身は大丈夫だが、オルクスさんはどうしようもない。

ここでオルクスさんに障壁を展開して、もし相手が実態は無い存在なら、そこで詰み。


このケースがあるのだ。

相手に実態があるのか、無いのか。

実態はないなら、何で殺されるのか。

それすらも分からない状況。


ふと、振り返る。最悪だ、振り返った瞬間やってしまったそう思ったがもう遅い。


「ああああああああああアアアアアアアアアッ!!!!!!」


目が合う、その瞬間耳障りなノイズ音と共に視界がモザイクの様に霞む。

そして、頭の中が真っ赤にナル。死といウ文字、頭が可笑しク、な……。


「『ー干渉能力ー 自動障壁展開』」


……ら、ない。いや、実際はなりかけた。

障壁が無かったら間違いなく発狂して殺されてた。

てか、追っかけて来てるの怖すぎる。

黒髪ロングで顔が見えない程長く、後ろは膝下まであった。


それが四足歩行して、てけてけと這いよる。

むしろ、てけてけ以外の表現が思い付かない。

とりあえず出口へ走りながら、どうするか考える。

まず、俺は魔法が使えない……待て?


そもそも俺は能力でやってきた強化は身体強化のみ、


魔力強化を1回もしたこと事がない。


普段、能力で相手に干渉か自身の強化でどうにかなっていたから、そこが抜け落ちていた。

というか、俺自身に魔法を使うという概念が薄かったから、今まで強化しなかった。

そうと分かれば話が早い。


干渉-魔力強化-


何だろう、何かが全身を駆け巡るような感覚。

気持ち悪く無い、むしろ心地よい。

多分これが魔力を感じる、と言う事なのだろう。

なら、とりあえず後ろの殺意マシマシに対して魔法を放つか。


「火よ、敵を打ち出す弾となれ、『ファイアーボール』」


オルクスさんに教えて貰った初級魔法、ファイアーボール。

詠唱が成功し、火の弾が形成される。

よし、消されないな。なら、そのまま飛んでけ。

勢い良く発射されたであろうファイアーボール。


数秒経った瞬間、


「ーー!?」


背後から突如大爆発が起きたのか、激しい轟音と共に発生する衝撃波と爆風により背中から勢い良く吹き飛ばされる。

干渉能力で自身の周りに障壁を展開して、吹き飛ばされても障壁がクッション代わりになり、何事も無かった様に済む。

それから障壁を解き、地面に着地して後ろを振り返る。

激しい炎とえぐれた地面、火のついた石が辺りに散らばっていた。


放った弾

火の玉ならぬ

業炎か


ファイアーボールに思った一句。

いや、マジでファイアーボールのはずが、C-4で爆破させた威力だったぞ?

これなら流石にーー


突如、耳鳴りが止まず、頭が痛い。

爆風に当たったせいか?それならす、ぐに……。

膝が落ち、地面に着く。

頭をかち割る様な痛み、そしてキーンと言う高音が鳴り止まず頭を押さえる。



「がああぁぁぁぁあああああああッ!!」


地面に頭を伏せながら押さえる。

ダメだ、痛すぎる。

ふと、視線を上げると、


「……」


目が合う。


長い前髪と前髪の間から、目を見開いた何かと目が合う。

身の毛がよだつ。

頭痛から一転、頭の中がぐちゃぐちゃなっていく。


記憶が可笑しい、さっきあった事、昨日あった事、過去にあった事、今日あった事が混濁しいる。


可笑しい、可笑しイ、可笑シイ、可カシイ、オカシイ、おかしい、おカしイ、オかシい。


ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ。


したでねている、おんなにめがいく。


うざい、しね、ころす、うるさい、ころす、しね、ころす。


ころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすここここここここここここ。


「み゛な……ど」


その声でハッと我に帰る。

何か力強く握っていた。

視線を下ろすと、顔色を変えて腕を掴んでいるオルクスさんがいた。

直ぐに手を離す。


「ゲホッ……カッ……ッハァ……ハァ……」

「……オルクスさん、俺」

「……精神、汚染……」

「精神、汚染?」

「……相手の、思う……通りに、動く……人形」


マインドコントロールって奴か。

そんなのに掛かる何て……バカか俺は。


「クソッ……クソッ!」

「はぁ……はぁ……」


自身の軽はずみの行動で、どうにかなる筈の出来事がどうしようも無くなっていた。

横たわり、息をするのも苦しそうなオルクスさん。


目、鼻、口、耳に至る所から出血、そして満身創痍なオルクスさん。


「お、怒らないで……」

「……怒るさ」

「……」


怒り、俺は地面に向かって拳を作り叩く。

痛みが走る。だが、オルクスさんに比べたら軽傷だ。

しかし、オルクスさんは俺の手の甲に手を乗せ、


「ヒール」


自身が死ぬかもしれないのにも関わらず、俺の手を治してくれたのだ。


「なんで……!」

「タカ、セ……貴方の手は……大、切よ……美、味し……い料理、を作れ……る手、何だ……から」

「……ッ! ありがとう……必ず助けるから」

「う、ん……」


激しい動作、衝撃は彼女の……オルクスさんの命に関わる。

深呼吸を一回……。自身を最大限強化を施す。

そして、辺りの気配察知や構造把握を行う。


やたら強いのもいる……それも一番近い道がそこしかない。

時間を掛けて別ルートになるなら、オルクスさんは命を落とすだろう。

そんな事はさせない、必ず救う、そう決めたのだから。

キツイだろうが、オルクスさんを消防士搬送と呼ばれる方法で担ぐ。


そして、そこで沸々と憤りが湧き始める。


……少なからず、俺は過去を振り返らない。


……俺の過去は良いものではないから。


……思い出すことを止める為に過去に興味を無くした。


……本当に、ふとした時以外基本思い出さない。


……思い出しても直ぐに忘れる。興味がないからだ。


……けど、そんな俺の過去をよくも、


「よくも、思い出させたな」


本当に久しぶりに怒りを覚えた。



ーーー


洞窟内、全ての生物がこの瞬間、危機感を感じた。

危険信号を鳴らし、即座に狩りを止め巣へ帰る。

中には危機感を覚える処か、闘争心を燃やして興奮する奴もいた。

だが、1人の人間の周辺には全ての生物が恐れをなして逃げ去る。

それは、ある意味1人の人間を怒らせた元凶ですら、それは例外ではない。


あの殺気は恐ろしい、寒気、危機感、萎縮、畏怖、圧力。

その全てが恐ろしい程に逸脱している。


そう感じたのだった。



ーーー



怒りに任せて動くな。感情的になった時が、相手の思うつぼだ。


良い言葉だな。落ち着け俺。

まずは能力がどの程度使えるのか、そこからだ。

……強化可能、転移は……無理、探知……可能。

なるほど……なら、なるべく早くオルクスさんをここから出て助けないといけない。


オルクスさんに近付き、意識があるか確認する。


「オルクスさん、聞こえますか? オルクスさん」

「……」

「意識はない、と」


なら、一応状態を調べるか。

能力を使い、オルクスさんの状態を確認する。


衰弱、出血多量、聴覚低下、視力低下、臓器一部低下、魔力低下。


……思っている以上に深刻な状況だな。

魔力低下も危険だ。以前、本で読んで記載していたことがある。


魔力低下による、身体への影響。

疲労困憊、生命力低下、魔力餓失。

問題なのは生命力低下と魔力餓失だ。

生命力低下は言わば生きる力が低下する。


魔力餓失は魔力が無く、生命力で補っている状態。

普段なら、魔力餓失になっても倦怠感、疲労困憊、吐き気など風邪の様な症状。

しかし、ここに怪我をしている状態、つまり今のオルクスさんの状態であると最悪の組み合わせだ。

生きるために止血しようと、身体の中で働こうとするが、生命力低下のせいでそれが出来ない。


それを解消するにはまず、魔力の補給をしてから、治して行かなければ助ける方法はほとんど無い。

魔力に関しては、補給する方法が分からない。

魔力を相手に送れれば良いが、実際送ったらどうなるか分からない。したことがない。

能力を使えば送れるだろう、しかし相手にどの程度送れば良い?

そこの細かい調整は出来ない。


便利そうで不便な能力だ、神様。

とりあえず、ここから出なければ。

オルクスさんを担ぎ上げ、探知して把握した出口へ駆ける。

少し走った所だろうか、そのタイミングで再度叫び声が背後から響き渡る。


……やっぱりくるよな、そう簡単には逃がしてはくれなさそうだ。

それに奴の強さ………これもオルクスさんのおかげなんだが、アイツ多分ここが結界内の可能性がある。

限定的だが、その結界内であれば驚異的な力を得ることが出来る契約。

そして、デメリットはその結界内からは出ることが出来ない。


背後から駆け抜けてくる音が響き渡る。

とりあえず急げ、出口まで行けばどうにかなる。

思い俺は少しだけペースを上げた。

だが、オルクスさんに負担をかけられないので無理の無い程度で。


掛ける抜ける最中、やたら強そうな魔物とすれ違う。

しかし、その直後魔物達と共に出口の方へ走る。

そして、背中から伝わる殺意の気配。

分が悪すぎる。


何度も言う様だが、後ろの魔物に関しては逃げる一択。

洞窟を駆け抜けていくと、一筋の光が視界に入る。

能力で確認した出口だ。


「……ゥ」


肩から背中に掛けて少し湿ったい。

少しだけ、肩を確認するとオルクスさんが吐血している。

マズイ、あともう少しなんだ。


「持ってくれ、オルクスさん……!」


それから50m……30m……10m。


「で……ぐち、だぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


叫びながら洞窟を出た。

出た瞬間、背後を確認する。

無数の白い手が伸びて、こちらを掴もうとしていた。

しつこい、終わらせよう。


そう思い、能力を発動しようとした瞬間、知っている気配を2つ感知した。

安心からか思わず口角が上がるのが、自分でも分かる。


「安心だな」


伸びた手が切り落とされ、勢いよく出てきた本体は洞窟内の魔物を吸収したのか、目視した時よりも倍以上に巨大化していた。

その巨体が洞窟内から出て来ていたのだ。

そして切り落とされた痛みで叫ぶ。

しかしその叫び、ハウリングボイスも瞬時に何事も無かったかのように黙る。


「ミナト!!」

「遅くなりましたぁ」

「遅いよ、ソイレーンさんにミーシャ」


出口前で待機していたのだろうか、ソイレーンさんとミーシャが腕を切り落としてくれた。

そして、先程のハウリングボイスもミーシャの重い一撃で黙り込む。

2人の攻撃に怯み、少し後退ってからこちらを睨んでいる。

って……ヤバい、頭が可笑しくなる!


「2人とも奴を見ーー」


言おうとしたが……むしろ、問題無かった。


「ん?何かあったか?」


こちらを見ながら降り注いでくる手を切り落としていくソイレーンさん。

ミーシャは聖歌だろうか、透き通る歌声で歌う。

その聖歌によってか、分からないが奴から黒いモヤの様な物が吹き出る。

そして、巨大化した身体が徐々に小さくなっていく。


マズイと思っているのか、ミーシャに攻撃しようとするが、ソイレーンさんが全て防ぎきる。

小さくなっていくにつれ、弱々しくなっていくのが分かる。


いや、本当に俺の出番はほとんど無いそうです。


その後、オルクスさんを船に運び医務室へ預けた。



ーー木造の天井。

徐々に意識が回復していくのが分かる。

ここは……何処だろう。

身体を起こそうとするが、体に痛みが走り起こすのを止める。


右に顔を向けると木造の壁、左に顔を向けると机に処置様の薬などが置かれている。

あぁ、ここは私達の船だ。

助かったんだ、私……。

助かった事が分かり、胸を下ろす。


だが、思い出した。


タカセは?あの後、私が意識を失っていた筈……まさか!

私は勢い良く身体を起こした。

その瞬間、体の内部から激しい痛みが伴う。

けど、今は関係ない。タカセを彼が無事かどうかが重要だから。


痛みが伴う中、私はタカセや他の奴がいるであろうラウンジへ駆ける。

ラウンジの入り口が視界に入り、入り口に手を付け中を確認した。


「ーー!?オ、オルクスさんッ!?」


厨房からこちらに顔を出して確認しているタカセ。

私が起きてきたのに驚いているのだろう。

そのまま厨房を出て近付いてくる。


「目が覚めたんですね!ってか、ダメですよ!安静にしてないと!」


彼の言葉を聞き、彼を良く見るとあちらこちらに包帯やガーゼなどが貼られていた。

こんなに傷だらけで……私を守っていたんだ。

そして何より、


「良かっ……た」


もう誰も目の前で死んで欲しくない。


「よか……た……」


声が震える。もうダメだ、堪えられない。

顔をしたに向けると涙が溢れ、頬を伝うのが分かる。

そんな中、優しく頭を撫でてくれる。

ふと、顔を上げると、タカセが優しい笑みを浮かべ私の頭を撫でていた。


「……ごめん、オルクスさん。心配かけて」


彼は悪くない。それに彼は私を守ってくれていた。

ボロボロになりながらも、この世界に不慣れなのに、良く知らないのにも関わらず努力した。

そんな彼を男という理由だけで、嫌うのは止めよう。

彼を仲間として、尊敬しよう。


「……サラ」

「え?」


いつの間に涙は止まっている。

頭を撫でてくれたお陰だろうか、精神が安定している。

私は口角を上げ、微笑み。


「親しい人にはサラって呼ばせてるの、だからサラって呼んで」


驚いている。それが分かる、その後彼も笑い。


「なら、俺の事はミナトって呼んで欲しいな、サラ」

「分かった、よろしくね。ミナトッ」


22話 終

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