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21話 一難去ってまた一難らしいそうです。


落ちていく中、無力な自分に苛立ちを感じる。

未だに不明だが、何故俺の力が使えない。

そんな事を思っていると何か柔かい物に背中からぶつかる。

その柔らかい物に跳ね、俺は何も見えない暗黒の中、地面だろうか……何かに着地した。

着地と言うより落ちた。


「いったぁ……」


思わず口から漏れる。

そこで直ぐに辺りを見回す。

オルクスさんが不味い、どうにかしないと。

焦りは禁物、まずこの暗黒の中、なるべく目を慣らす事に専念する。


徐々に目が慣れ、見えづらいがシルエットだけが確認出来てきた。

何か真ん丸い何かの隣に、横たわっているのが分かる。

立ち上がり、ゆっくりと近づいていく。


薄暗いが、メイベルさんだと認識する。

先ほど頭を打ち付けているのを見ていた。

だから、体を揺すらず肩に手を起き、


「メイベルさーん、聞こえますかー?メイベルさーん?」


肩を叩きながら少し大きな声で呼び掛ける。

それを数回行う。すると、


「……ぅ」


意識があるのを確認。

さらにそれを続けると、


「ミ、ミナ……ト……?」

「良かった……」


意識が回復した所で、体を起こそうとするメイベルさんを制止させる。

いきなり起きて血の循環が良くなり、体調が悪くなる出血が起きる最悪のケースを避けたい。

メイベルさんに膝を貸し、少しだけ角度を変える方向へ持っていく。


「え……ひ、ひざまくら??」

「はい?それの方が良いかと」


顔を反らし、嘆息を一つ。本当に嫌なのだろう。

男の膝を使う。男嫌いの人からしたら溜まったもんじゃない。

すると、膝に重みを感じて視線を下ろす。

メイベルさんが膝に頭を乗せていた。


「……嫌い」

「あー……すみません」

「でも、これが良いんでしょ?」

「少なからず」

「じゃあ仕方ないじゃない」


会話終了、暫く沈黙という静寂な時間が過ぎていく。ここで思い出す。

あれ、そういえば落ちた時に柔らかい感触は何だったんだ?

思った瞬間だろうか、辺りから這いずる音が静寂な空間から一変させる。

なんだ、辺りから何か……這いずっている音が。


「メイーー」

「……」


声を掛けようとした瞬間、指で口元を当てられ遮られる。

何かと思い、黙り込んでいると、


『……嫌い』

『あー……すみません』

『でも、これが良いんでしょ?』

『少なからず』

『じゃあ仕方ないじゃない』


先程話した会話が正面から流れてくる。

その瞬間、何かの影が声のした方へ飛んでいくのがうっすらと目視した。

何だあれ?と思うと、同時位に胸に手を当てくるメイベルさん。


『喋らないで』


あれ、頭に直接声が……どう返事をしたら良いんだ?


『大丈夫、思えばこっちに聞こえるから』


あー了解。てか、あれは何?


『スライム』


え、序盤に出てくる弱い奴?

なら、俺でも余裕か。


『……何言ってんの?スライムが弱いわけ無いじゃない』


……なんで?


『スライムって体が液状になっているせいで、斬撃、打撃が効かない相手だからよ。魔法も効くけど一部の魔法に関しては一切効かないし、最悪は放った魔法を纏いながら突っ込んでくるんだから』


俺の知っているスライムとは違うな、この世界……。


『へぇ、タカセの世界にも居るんだスライム』


居るにはいる。と言うか、作る。

あんな風に捕食とかしないスライムだ。

と、まぁこの話は置いておいて……どうしたらいい?


『音に敏感だから、小石でも投げて別方向から音を鳴らしてそうしたら、走るいい?』


了解した、因みにメイベルさんは歩けるの?


『無理ね。だから、運んで』


了解。

そう思うとメイベルさんが手を離す。

さてと、そこら辺の石を投げって何か掴んだけど、やけになんか軽いな。

俺は手に握った物を確認すると、それは骨。

それも人骨だろうか、頭部の骨が薄暗い暗闇の中から姿を表す。


……なるほど、ここに落ちた獲物はこうなるのか。

一応掴んだ骨を投げ、スライムを引き付ける。

落ちて音が鳴った瞬間、再度俺達の会話が再生された。

俺はオルクスさんを担ぎ上げる。


正直どっちに行けば分からないんだが?


『そのまま走って』


とりあえず言われた通りに走る。

すると、背後から這いずる音が響き渡る。


『右』


良く分からないが右折。


『ここで下ろして』


オルクスさんを下ろすと近くから這いずる音が響く。


「フラッシュライト」


目映い光の玉がゆっくりと、オルクスさんの手のひらから離れて浮いていく。

やっとオルクスさんの表情を伺える。

思った瞬間、オルクスさんの回りに火の玉が複数個出現した。

こちらを睨む様にしているオルクスさん。

殺気を感じ……。


複数ある火の玉が1つ放たれた。

俺の横をすり抜ける。


殺気は感じない。


多分、後ろにいるスライムに向けて放ったんだろう。

背後を振り替えると、


「え、どちら様?」


スライムではなく、皮膚が爛れ落ちて少し腐敗臭が嗅覚に強い刺激を与える。

思わず、手で鼻を押さえた。

押さえると、よく分からない存在の頭部が吹き飛ぶ。


「グールよ……スライムがいるの何でグールがいるのよ」

「えっと、何で?」

「スライムは基本、テリトリーに入った物はほぼ全て消化するのよ」

「グールって事は……ゾンビ?」

「何、そのゾンビってのは?」

「こっちの世界ではグールって事かな?」

「ふぅん」


そんな中、徐々に光が目映い光を放ち、辺りを完全に照らした。

照らされた瞬間、何故俺とオルクスさんが死ななかったのかそこで完全に理解した。


「巨人?」


巨人、一言で言えばそう。

けど、何故か肌が黒い。

てか、この巨人がクッションになってくれたから死ななかったのか。


「……ミナト、私を担いで走って」

「え?」

「このままじゃ、2人とも確実に殺される。いや、食い殺される」


オルクスさんが言った瞬間だろうか、巨人がこちらに振り返る。

だが、その巨人の顔は口が無く、何故か赤い光を放っている。

てか、何か顔がモヤに掛かった感じがする。


「急いで!」


ハッと我に帰り、直ぐ様オルクスさんを担ぎ上げ走った。

何処に向かえば良いか分からないが走る。


「右!」


言われた通り右に曲がる。

右に曲がってから、聞こえてくる音。

何かが接近している音が辺りを響かせた。

ふと、振り返ると、


「……!!」


ビジュアルが悪い、悪すぎる。

四足歩行する虫の様に、此方に近付いてくる巨人。

いや、マジで生理的に無理です。

悪寒が先程から凄く感じる。

てか、直ぐそこまで来てる!


絶対に追い付かれる。


「『プロミネンス』」


唱えたのだろうか、オルクスさんの頭上から火の玉が背後にいるであろう巨人に飛んでいく。

爆音を背に一心不乱に走る。


「左!」


自己強化が出来ない中走るには、キツいな……体力が尽きそうになる。

そう思った瞬間、


「『身体強化、バイタリティー向上』これでどう?」

「……心の中今読める?」


こんだけ密着してるからね。


『ありがとう、それとごめん。男嫌いなのに』


……時と場合によるわ、今は仕方ない。


『了解。てか、あの巨人何?気持ち悪いんだけど?』


あれは本来こんな場所にいる奴じゃない。

まぁ、言うならあればグールの集合体。


オルクスさんは魔法を発射させながら、俺の問いに答えてくれる。


『集合体、ね。ゾン……グールの集合体って事で良いの?』


グールとスライムの合体。あ、そこ右。


『え、グールとスライムの集合体、ね』


あり得ないわ、見たこと無い。


『そもそも、何故あり得ないのか。そこを聞いても良い?』


気になる。何故、あり得ないのか。あ、多分この心の声も聞こえてる可能性有り。


聞こえるわ、そもそもスライムはテリトリー内の獲物はほぼ捕食する。

そんな中グールがいるのがあり得ない。

スライムのテリトリーは広い、だからこそあり得ない。


『なるほど、じゃあアイツは』


新種ね。近しいのは見たことあるけど、アイツは無い。


『弱点も分からないと』


ミツケタ……。


何か聞こえた。そんな気がした瞬間、


「オォォォォォォォォォォォッ!!」


甲高い咆哮が洞窟内を響かせる。


スッゲェ耳が痛い。けど、鼓膜は……破れてない、三半規管が狂ってないからな。

オルクスさん、大丈夫?


しかし、返答がない。何かと思い視線を下に向ける。


「……ッ!?オルクスさんッ!!」


目、鼻、口、耳から突然出血している。


「タカ、セ……」

「大丈夫ですか!?」

「とまっ……て……」

「えーーッ!?」


足を踏み外し、何処か分からないが下へ落ちていく。

オルクスさんが手から離れそうになったが、しっかり自分の方へ抱き締めて少しでも傷にならない様にする。

数十秒、転がり続け最後に何かにぶつかって停止。

全身に痛みが走る。それもそうか、ほぼ俺が肩代わりしていたのだ。


腕の中で静かに息をするオルクスさん。

脈を図る……まだ、鼓動はしてる。

けど、この状態……長く放置は出来ない。


俺はオルクスさんを消防士搬送と言うか形で担ぐ。

一応、俺が能力を使えるか確認する。

-干渉-身体強化。

体が一気に軽くなるのを感じた。


待て、何故今になって使える?

条件は何だ?

声が聞こえたから?いや、それなら落下中も聞こえたから使えるはず。

思い当たる節が見つからない。


今この状態が好ましい。

なら、今出来ることヒーリング・リヴァイバルを使ってオルクスさんを助ける。

干渉でヒーリング・リヴァイバルを習得。

オルクスさんを地面に下ろして、


「『ヒーリング・リヴァイバル』


手のひらから黄緑色の光が照らす。

しかし、光が突然消えるように散っていく。

再度行うが結果は同じ。

もしかして、オルクスさんが言ってたアンチマジックって奴か?


文字からして、魔法を使えない状態にする魔法か?

それなら何故オルクスさんは使えた?

それも分からない……くそ、どうする?

思うと何か光る物体が視界に入る。


なんだ?

そう思いながら、光る物体へ行く。

近付くと鉱石が薄暗い中、淡い光を放つ。

なんだこれ……。無意識だろうか、その光る鉱石をいつの間にか鑑定していた。


魔吸鉱石、魔力を吸収し、成長する鉱石。

一定の魔力を確保すると、光を放ち、そこから魔力結晶石を作り出す。

なるほど?魔法が使えないのはコイツのせいか。

魔法を使うのに必ず魔力が必要。


魔法を展開して放つ。この行為を行うのに魔力を使用する。

その魔法に対して使った魔力が、この魔吸鉱石に吸われていたって事か。

この過程で話しを進めるなら、尚更オルクスさんがどうやって魔法を使えたのか全く分からなくなる。

ヒーリング・リヴァイバルは使えない、となると……使うしか……。


いや、まず出口を探ろう。

出口を見つけて、そこでヒーリング・リヴァイバルを使う、そのプランで行こう。

能力を使い、今いる空間を探知してこの空間と言うよりも、今いる場所とここの存在に出口を探す。

……見つけた。能力を使って数秒でここの存在、出口を把握。


そこに向けてひたすら向かっていく。

だが、明らかに遠い。ほとんど最下層まで落ちたらしい。

時間で言うなら3日~4日は余裕で掛かりそうなほど、坂道やら曲がりくねった道が待ち構えている。

このままだと間違いなく、オルクスさんは持たない。


出口まで駆け抜けても良い、しかしそれはオルクスさんの事を考慮しないプランだ。

座標を決めて飛んでいくプランはある。

しかし、これは2人で飛ぶと言うのを試したことがない。

もしなにかあっても間に合わない可能性はゼロではないから。


……使うしか、ないのか?

干渉能力をオルクスさん自身に。

この干渉能力、実は便利ではあるが色々と自身以外にはかなりの制約が掛かっている。


1つ目は対象に1度干渉してしまうと、2度と干渉出来なくなる。

2つ目は干渉する場所に対して使うと、その場所だけが干渉対象になる。

例として、味方を守る為に障壁を使うが、その場所から離れてしまうと障壁の効果は無い。追従しないのだ。

3つ目、大規模に対する干渉は行えない。

4つ目、格上相手に対して能力が一切使えない。

この格上の相手に関しては自身の戦闘能力が比例するのかもしれない、これに関しては実証していないのでまだ、確定ではない。

最後に感情操作、記憶の操作が出来ない。


以上が干渉に関する制約だ。


そして、周囲の気配探知に何か大きい物が近付いてくるのを探知した。


21話 終

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