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18話 使い道があまり無いそうです。

ソイレーンネキ300万ポンッと自分にも分けて欲しい。

c-5の残りを消去するため、この島のマフィアのアジトへ足を運ぶ。


「白銀貨3枚、何を作ってくれるのかしらぁ?」


隣でニコニコと笑いながら言うミーシャ。

待て待て、一体全体何故ミーシャが楽しみにいている?


「ミーシャ」

「あ、着きましたよぉ?」


ミーシャの一言と同時に、


「あ?何だてめぇら」

「c-5を持ってますよねぇ?」

「知らねぇよ、帰れ」

「帰れないな」

「なら、痛い目に会いたいんだな?」


何処からともなくナイフを取り出し構えた。


「最高の通告だ、帰れ」

「さっさとどけ」


私達を切りつけようと腕を上げる。

その瞬間に距離を縮めて上げた腕を掴む。

掴んだ後に相手の足を払い、そのまま態勢が崩れた所を地面へ向かい投げた。


「命令に従ってか、あるいは力量の見れぬ阿呆かだな」


今の出来事で中が突如騒がしくなる。

そして、武装した組員が勢いよく出てきた。


「てめぇらただじゃすまねぇって分かってんだろうなッ!」


鬼の形相を浮かべ、こちらを睨む組員。

思わずため息が出る。

隣ではあらあら、と困っている様に言っているが表情は笑っていた。

まぁ、ミーシャも面倒なんだろうな。そう思う。


「良くまぁこんなにも阿呆共が集まるな」

「ですねぇ」

「ぶっ殺せッ!」


掛け声と共に迫り来る組員。

正直、武装するまでも無い。

素手で対処をしーー


「それにしてもぉミナトさんの料理本当に楽しみですぅ」

「は?何故ミーシャが楽しみなんだ?」

「死ねぇぇぇぇぇッ!」


切りかかる組員を殴り飛ばしていく。

それもミーシャも同様に。

てか、待て待て。何故にミーシャがミナトの料理を楽しみ?食べるのか?


「えー?だってぇ作ってくれるんですよねぇ?」

「ああ、私にな」

「んー?私はぁ?」

「金は払ったか?」

「出してませんねぇ」


会話しながら相手を蹴散らしていく。


「な、何だコイツら!」

「は、話ながら俺らを相手にしてやがる!」

「クソが!」

「何なんだ、さっきからうるせぇな」


何か会話している気がするが、今は。


「ミーシャ、金も払わずに食事をするのはどうなのだ?」

「でもぉ、ちゃんとお支払いすれば良いんですよねぇ?」

「ぐ、確かに……だが、ミナトの料理はダメだ!」


あの味は私が先に見つけたのだ。

独占権はあるはず。


「ゼフニさん!アイツらやっちゃって下さいよ!」

「用心棒として雇われてんだ、まかせろ」


ノシノシとチラッと確認したが、体格だけの男が近づいてきているのが分かる。


「おい、テメェ!俺が誰だか分かっているのか!」

「「うるさい」です」


誰だか知らないが、今はそれどころではない。


「食べたんですよねぇ?」

「ああ、食べたさ。だからこそ、これ以上広めたくない」

「それはミナトさんが望んでいるのですかぁ?」

「料理は手間が掛かる。望んでいると言う話でない」


とりあえず中に入り、組長のいる気配を辿る。

何か妨害のような感じで、知らない奴が割って入ろうとしているが、邪魔だから蹴散らす。

それはミーシャも同じであった。


「ミナトさんなら、問題ないのではぁ?」

「いやいや、時間は掛かる。と言うことはミナトの時間も削るわけだ」

「……ミナトさんのお時間を削るのは事実ですねぇ」

「そうだろう?だから、諦めた方がーー」

「ーーシオンも時間を削らせているのでぇシオンも辞めましょう」


待て待て。


「いや、それは」

「ミナトさんのお時間を削る。んですよねぇ?」

「それはそうだが」

「なら、貴方も辞めましょうねぇ」

「わ、私はお金を払っている」

「ミナトさんなら、あのお金ぇ使いませんよぉ?それは貴方も少しは分かるのではぁ?」

「……」


確かに、その可能性はある。

いや、むしろ大いにあると言えよう。

そんな事をしていくと、組長のいるであろう部屋の前にたどり着く。

勢いよく扉を開けると同時に飛び掛かってくる。


「死ねやぁッ!」

「うるぁぁぁぁぁぁッ!」


飛び掛かってきた相手に裏拳を放ち、顔がめり込む。

そして、そのまま滑り落ちてその場に伏せた。

ミーシャに関しては払っただけだが、吹き飛ばされ、壁に埋め込まれている。

豪華な机に座り、煙草を吸わんと口に咥えて火を着けようとしている。

因みに左右に女性が居たが、今の出来事で怯えて腰を抜かして床に尻を着けている状態。


煙草に火を着け、一吸いして煙を吐く。

その後、こちらを見据えてきた。


「十傑……」

「分かるなら話が早い」

「c-5か?」

「それ以外にあるか?」

「……」


すると、組長は机から束になった書類を取り出して机に置く。

煙草の火を消し、椅子から立ち上がる。


「調べはつけてある。後は好きにしてくれ」


光が指す窓の方へ歩き、こちらに背を向ける。

私は書類に手を伸ばして、目を通していく。


「……これはお前がしたことじゃないのか?」

「麻薬を取り仕切るのが私達だ。だが、行きすぎた物は処分している、が……どうやら、私をこの座から引きずり落としたい奴が居たらしくてな」


その言葉に私は再度書類に目を通すと、


「副長か」

「バカな奴だ、今私と副長の派閥があってな。c-5で儲けた金、人材を使って私を消そうとした」

「……副長は?」

「隣だ」


煙草を片手に持ち、もう片方の腕で隣の部屋を指す。

罠の可能性を考慮しつつ、ゆっくり扉を開ける。

中は薄暗く、中心で椅子に座り目元を隠し、拘束されている人物。多分この組の副長だろう。

近づいて良く見ると至る所から血を流している。


なるほど、制裁を加えた後って事か。

息をしているか確認するため、首もとに指を付ける。

脈はある。だが、非常に衰弱している。


「ミーシャ」

「分かってまぁす」


ミーシャが副長を担ぎ上げ、その場を後にしていく。

私は再度組長と向き合う。


「c-5はどうした?」

「燃やした」

「本当か?」

「誓おう。少なからず俺はこの島を麻薬から守りたい」

「……何故だ?」


煙草を一吸いして煙を吐く。

そして何かを思い出すかの様にうつ向く。


「親を麻薬に殺された様な物でな……だから麻薬が嫌いだ。嫌いだからこそ、ここでの管理としてルート確保をしている」

「販売はしていないと?」

「10傑のアンタならこの島にc-5以外の麻薬の販売があったか、分かるだろう?」

「念のためだ」

「来ては燃やしの繰り返しさ。この島で絶対に麻薬の販売は許さん。だから俺はアンタらが来るのを拒絶しないし、副長を引き渡した。さぁ、話すことは話した……出ってくれ」

「……協力に感謝する」


それから私はミーシャの後を追うようにアジトを出ていく。



ーーー



白銀貨3枚も貰ってしまったが、正直そんなにいらないな。

まぁ、後で返そう。

そんな事を思いつつ、俺は大通りの露店街へやって来た。

さてはて、ソイレーンさんは基本美味しいと言ってくれる。


多分俺の作る料理が珍しくて美味しいと言っているのだろう。

しかし、ミーシャはどうだろうか。

シスターとして働いているなら、それなりの食事は取っていると思う。

んー……それに嫌いなものを聞き忘れると言う失態だ。


どうした物か……勝手なイメージだが教会の料理は量が少ないが味はしっかりしてそう。

例えばパンとシチュー、ミルクとかその位。

この考えで行くなら、そのメニューで安定だが……分からない。

いっそ、店を出してる店主に聞くか。


「すみません」

「あいよ!何だい?」

「分かるならで良いので、お答えして欲しいんですけど……」

「ほう? それで、何だい?」

「教会の人達って何を食べるんですか?」

「あー教会かぁ……噂ではシチューとか食べているみたいだけどな」

「噂では?」

「悪いなぁにぃちゃん、これにはわけあってな。実は教会の人達はそれぞれ、食べられない物や作り手が変わるらしいんだ。それでちゃんとは分からないのさ」

「ほうほう、なるほど?」


では、何故シチュー何だ?

俺と同じでこの店主もシチューを食べているイメージなのか?


「では、何故シチュー何です?」

「近くの教会では良く、お昼にシチューを出すことが多くてな。それを食べに行く奴もいるんだ」


なるほどな。お昼にシチューを出して、そこでお金を貰っているのか。


「ありがとうございます。あと、ここでは何を売ってるんですか?」

「これだ! 日持ちもするし、どうだい? 買うかい?」

「これは……買います!」

「あいよ!何袋だい?」

「どの位入ってます?」

「300位だ」

「なら、それを3つお願いします」

「ほい、毎度あり!銀貨1枚だ」


お金を払い、俺はその場を後にして必要な物を買っていく。

メニューは決まった。シチューを食べれるなら、あれも食べれる筈だ。

食材を買っていき、船に早足で戻る。

船に着いてから食材をキッチンに置いてから、手洗いうがいを行う。


「さてはて、作って行きますかな!」


まず、オニオンを食べやすいサイズに切っていく。

そのあとに鶏肉、オニオン、じゃがいもを入れる。

フライパンに油を注ぎ、火を着け熱していく。熱くなった所で具を入れてから、火を弱めて炒める。

しなびた所でミルクや調味料を入れてから、小麦粉を投入。


ゆっくりかき混ぜていき、とろみが付いた所で熱に強い。

まぁ俺の世界では耐熱皿だな、耐熱皿に移して上にチーズを散らしてオーブンに入れる。

てかこの世界、意外とオーブンとか色々ある。電子レンジは無いけどね。


焦げ目が付いた所で取り出して、粗熱を取り除く。

そのあと、タオルなどで保温して、


「完成だ」


まぁ、帰って来るとき少しだけ温めれば問題は無い。

そんな事を思っていると、


「ミナト、戻ったぞ」

「ミナトさぁん、お腹空きましたぁ」


良いタイミングで帰ってきた。

俺は早速もう一度余熱で温かくなっているオーブンに入れておく。

そうすると、ソイレーンさんとミーシャが広場に姿を表す。


「良い匂いだ」

「何でしょう?少し甘い香りがぁ」

「フフ、ちょっと待ってー」


俺はカウンターに耐熱皿を2つ出す。

それからお盆に乗せて、2人の座っている席に運ぶ。


「はい、おまちどおさま。グラタンです」


スプーンをそれぞれに渡す。

ソイレーンさんとミーシャは顔を合わせる。


「グラ、タン?」

「何ですかぁ?それはぁ?」

「あーいや、ミーシャの嫌いなもの、もしかしたら食べられない物があったのかも知れなかったんだけど……教会の人は良くシチューを作るって聞いたから、それなら食べられるかなぁと」

「……シチュー?これがぁ?」

「まぁ、厳密には違うけど使ってるものはほぼ変わらないかな。あ、もしかして、何かダメだった?」


キョトンとしたあと、フフフと笑い出すミーシャ。


「い、いえ……フフフ、そこまで考えてくれてたなんてぇ……嬉しくてぇ……」


両手を着け、ミーシャ。


「神よ、本日も豊かなお恵みを頂けることを感謝致します。頂きます」


祈りが済むと、スプーンを取りグラタンすくい口へ運んだ。

因みにソイレーンさんは何故かニヤニヤしながら、ミーシャを食べるのを待っていました。

……何故に?まぁ良いか。


「……お」


グラタンを口に運んでから硬直、数秒後、


「美味しいです!何ですかぁ!これはぁ!」


その発言に思わず胸を下ろす。


「良かった。さて、俺も頂きます」


口に運ぶ。うん、野菜の旨味とミルクの甘味、ほのかにある塩っけ。

これは我ながら美味しいと思う。


「うむ!流石、ミナト!相変わらず旨いな!」

「ありがとうございます」

「と、ところでミナト……」

「何ですか?」


改まって、何だろう?てか、何処かよそよそしい。

実は俺、何かやった?

いやぁ……身に覚えがない。

とりあえずは謝罪の準備だけはしとこう、うん。


「白銀貨は使ったか……?」

「……あー、いえ……使ってませんが……?」

「ほぉら、言った通りじゃないですかぁ」

「グ……確かにその通りだったな……」


何が起きているか分からないが、そのやり取りの後、2人はグラタンを3皿ずつ食べるとは、俺は思わなかった。


18話 終

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