勇者パーティーから追放される
「お前、パーティ抜けろよ」
1週間かけてようやく森を脱出し、やっとの思いで到着した宿の一室。夕食をすまし、パーティーリーダーのグランに呼び出された。
「なっ…!?」
いきなりのことで感情の整理が追いつかない。
「どうしていきなりそんな事を!これまでパーティーとして仲良くやってきたし、ここまで進んできたじゃないか」
グランは勇者だ。
神様からの信託を授かった勇者は特殊なスキルを有し、規格外の戦闘力を誇る。しかし、そんな勇者も万能ではない。回復や斥候のスキルを勇者は持ち合わせていない。そのために僕たちのパーティが結成された。
「僕が呼び出した武器やモンスター達も役立っていたはずだよ!」
僕の持っているスキル————【召喚】。場所を関係なくありとあらゆる生物から無機物まで、契約した対象を召喚できるスキルだ。
このスキルを使ってこのパーティーでは多くの役割をこなしていた。索敵、荷物運び、時折戦闘。そして何より、契約している数多の武器をパーティーメンバーに貸し出し、戦闘に貢献していた。
「俺もこの村に着くまでそう思っていたさ。でもな…アーシャ」
グランがパーティメンバーであるアーシャさんを呼び出した。聖女であるアーシャさんの手には二本の剣が握られている。
「それは、僕が召喚した…」
「あぁ、そうだ。これはお前が俺に渡していた剣だ」
僕が契約した強力な武器を、このパーティーメンバーに貸し出すこともあった。主に勇者であるグランが使用していた聖剣レーヴァテインは、その中でも最高のランクに位置する。
そしてアーシャさんの右手にある剣は確かに僕が【レーヴァテイン】だ。契約者である僕には繋がりを感じられる。
「そして、これはこの村に売っていた剣」
グランはアーシャさんの左手に握られた剣を指出す。まるっきり同じ装飾が施された剣が左手に握られている。
「お前は俺様に貸し出すこの剣は世界に二本と無い名剣だと言っていたな」
頷いて肯定する。
レーヴァテインは数百年前、先代である勇者が使用したとされる名剣。なぜか僕と契約することになったけど、それが伝説の剣であることは間違いない。
「ならどうして同じ武器が何本も武器屋で売られてるんだよ!」
グランは声を荒げながら、僕の胸ぐらを掴み上げた。掴み上げられて息が詰まりそうになりながら、この状況を俯瞰して考える。
どうやらグランは何者かから、レーヴェテインが偽物、もしくは僕が嘘をついていたと吹き込まれたようだ。
日頃のグランなら何も考えずにレーヴァテインを使い続けたはずだ。それなら僕も引き下がるわけにはいかない。僕は嘘をついていないのだから。
「グラン、騙されているよ。アーシャさんが持っている武器は偽物だ」
ここで下手に強く出てもグランにも、パーティーにも損失になる。僕だってこんな装飾だけが似ている剣に、レーヴァテインが間違えられる事自体が腹立たしいけど、怒っても何にもならない。
僕たちは魔王を救うために旅に出たんだ。僕の下手な感情でグランを逆撫しても意味がない。
落ち着いて対処しよう。
そう思い、アーシャさんが持っている偽物に目を向ける。明らかに僕が召喚したモノよりも等級は低い。
「それは偽物————っ」
全てを言い切る前に床に叩きつけられる。
「俺も初めはそう思ったさ。ならこの鑑定紙はなんだよ」
ポケットから鑑定紙を取り出し僕に見せつける。
鑑定紙は武器や人の能力を写し出すアイテムで、【鑑定士】スキルを持っているモノにしか生成することはできない。
彼が取り出した鑑定紙にはこう書かれている。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
名前:剣
属性:剣
HP:+0 MP:+0
腕力:+100
スキル:剣技Lv.1
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
至って普通の能力値。僕が出身の王国の新兵に配られる標準的な武器がこのくらいの能力値だ。
「だから、それは偽物だって!」
どうやら丁寧にレーヴァテインの鑑定紙まで偽装されている。僕をこのパーティーから追い出そうとしている者はかなり用意周到なようだ。
少しずつイライラしてきた。どうしてレーヴァテインと偽物を二本持って同じものだと思うんだ。
「まだ、しらばっくれるつもりかよ。お前は勇者の俺を騙して、クソ武器を使わせてたんだよ」
「違うって言ってるだろ!勇者なのに、どうして武器の区別も——————」
次の瞬間、頬に強烈な一撃が入る。扉に叩きつけられ、そのまま崩れ落ちた。
「さっさと消えろよ…。こんなクソ武器くれてやるからよ」
アーシャさんからグランは僕が召喚した武器を奪い取り、僕の目の前に放り投げた。
勇者の全力の拳。一般人とほぼ同じステータスの僕にとっては致命傷になり得るほどの威力だ。だけど、こんな濡れ衣をかけられて落ち落ち気を失っていられない。
「元々僕の剣だよ……」
できる限りの皮肉を吐き捨てる。
「グラン様、さっさとこいつを放り出してくださいませ。私たちは明日からも旅の続きがありますのよ?」
グランはその言葉に頷き、僕に向かって手をかざす。
–––––詠唱
グランの冷たい視線が僕を貫く。このままここにいれば、勇者の魔法の餌食になってしまう。
「––––っ」
慌てて目の前の武器を掴み取り、部屋を飛び出す。
そうして僕は、勇者パーティを追放された。
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