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第二話 被疑者は「決闘とか異世界学園モノらしくなってきやがったぜ」などと意味不明な供述をしており……

「フフフン、この学園に入りたければ私を倒していくことね! 決闘よ!」


 学舎に入って早々、エントランスでヘンな女に絡まれた。

チビのちんちくりんが仁王立ちで鼻息荒くイキっている。制服を着てるからここの生徒らしいが、小中高一貫だっけここは?


 なにこれ? と目線をアイレーシュにやると、なんとも気まずいものをお見せしてしまった、というような表情を浮かべていた。


「男がこの学園に入ってくるなんて聞いたからどんなもんか見に来てあげたけど、おやおやぁ? 私の覇気に気圧されて声も出ないようね! まあ仕方ないわ。なんたってこの私だし! 大人しく気圧されたままケ、ケオ、ブフッ! ケーオーされなさい!」


 ダジャレを自分でふいてちゃんと言えないヤツとか、生きてる価値あんのかな。


「さあさあ! いざ尋常にやりましょう。どうせあなたみたなザコの攻撃とか私にとってはそよ風みたいなもんだろうけどね!」


「はあ、そっすか…… よくわかんねえけど、じゃあそうするわ」


 なぜだろう。こいつと話してるとイライラして思考を中断したくなる。何も考えずに体の動きに心をゆだねたくなる。


「いい度胸ね! いっとくけどこの私マナコスレイカは魔術試験上位に位置する学園でもトップレベルのあぎゃブッッ!!」


 先手必勝。まずは左のハイキックを全力で打ち抜く。

まさかちんちくりんとはいえ魔術師がこの程度で終わるハズもあるまい。

あいさつ代わりを捌かれたあとの展開をどう…… は?

普通にクリーンヒットなんですが。日本でこなした試合でもこんなキレイに入ったのなかったくらいいい当たりだったんですが。


 呆然とする俺の横からアイレーシュが出てきて倒れている少女を観察し始めた。


「うわあ。えっぐいわね。みてみて完全に白目むいて泡ふいてる。すごいブサイク顔ね。悲鳴も花も恥じらう乙女が出していい声じゃなかったわ。あぎゃぶって何なのあぎゃぶって。これはさすがの私も引くわぁ。やったほうもやられたほうも」


 と言いながらなぜかうれしそう。ニッコニコやん。

 つーかまじかよ。いじめみたいじゃんこれじゃ。なんかの魔法でかわしてそっから応酬とかするんじゃないのか。

 なにげに異世界の魔術師対地球の総合格闘家、夢のドリームマッチやれるじゃんってちょっと期待もしたのに。

 え? 学生っつってもこっちの世界の魔術師ならみんなけっこうやれるもんだとばっかり思ってたぞ。


「アイレーシュさん。もしかして俺、やらかしちゃいました?」


 思わず敬語になってしまった。


「やらかしちゃいましたですわね。ウチの学園で決闘って言ったら普通、決闘場に行ってそこからレディ・ファイトよ。え? なに? レイイチの国だと決闘の言葉を出した瞬間から死合い開始なの? 出会って五秒で即KOなの? 野蛮っていうかサツバツすぎないあなたの故郷。こわ」


 まさか馬車が走り学園に決闘場などという施設が用意されている剣と魔法の世界の住人に、法治国家たる現代日本が野蛮呼ばわりされようとは。


「そもそも女子に対して手加減なしっていうのも…… まあそこは相手がこの子だったからなのかしら? 初対面でも感じ取れる圧倒的『やっちゃっていいヤツだよねこいつは』感というか…… え? ちょっとまってこの子…… うわ! 漏れてる! 漏らしてる! しかも大きいほう。うわあ、これはもうお嫁にいけないわねこの子」


 なんてこった。さすがにやり過ぎたかもしれない。これはトラウマになりかねない。こんなものを見せられた我々の。


「しまった。いやさあ、なんかこう、こいつなら全力でいいんだねやっちゃって!って。なんでかしらねえけどそう思っちまった。ホントなんでだろ。こいつの頭蹴っ飛ばすのが自然の流れだったみたいな? むしろ蹴らずにいてはいけないような?」


「言わんとしていることはわかるわ」


 わかるのかよ今の説明で。自分で言っててなんだけど。


「この子はそういうキャラしてるものね。なんていうか、イキリっぷりが完全に前フリにしか見えないっていうか」


「それな!!」


 意気が通じた喜びに二人で指をさし合って笑う。


「人ひとり気絶させておいてほったらかして笑ってる場合ではないわ」


「急に真顔になんなや」


 とはいえ、マジでそれどころじゃない。こいつをなんとかしないと。


「ほっといて舌を喉に詰まらせてもマズい。ヘタすりゃ命にかかわる。早いとこ手当できるところに運んじまおう」


「え? 舌なんて喉に詰まって死んだりするの? なぜそんなに人の死のメカニズムに詳しいの? あなた実は異世界人ではなくて死神か何かだった?」


「んなわけあるか! 現代日本人の一般的医療知識じゃ!」


 漫才をしてる場合じゃない。さっさと運んでしまおう。学園と名のつく施設だし医務室くらいあるだろう。


「そんじゃ、じゃんけんで負けたほうが足のほう持つってことで」


「うそ? 足のほうってすごく汚れちゃったほうじゃない。普通こういうときって殿方が引き受けるものじゃなくて? ていうか、あなたの体格ならこの子くらいのちびっこなら一人でも運べるわよね?」


「つべこべいうな。ほらじゃんけん~」


「あ、まってまって。 ~ぽん! ああ……」


「よし。そんじゃしっかり持てよ。ばっちぃがって落っことしたりしないようにな」


「……ううぅ。あなたってこういうとき本当に容赦ないのね。Sなの? ドSなの?」


 やっぱりなぜかうれしそうなアイレーシュ。この人ちょいちょい状況と表情がチグハグになんのな。やっぱりヘンな女だ。

このあともどんどん魅力的な女性キャラたちをだしていけたらなあと思ってます。

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