1章-1 偶然
日々の中で修一の楽しみは、携帯のネットサーフィンをすることである。普段は大手企業で人事の仕事をしていることもあり、多くの人と関わる。そのためニュースだけでなく、芸能関係やスポーツ関係など様々な記事を見ては、気になったことを検索して知識を増やす。このルーティンが修一の1つの習慣となっていた。
その日は休日にも関わらず、いつもの様に携帯の画面を見ていると、ふと1つの広告バナーが目に入った。
黒文字で書かれた記事以外は真っ白な画面の中に、一際目を引くオレンジ色の長方形の枠。
その中には、「生活の中にエッセンスを加えませんか?」と書かれている変わった広告であった。
「エッセンス?また変なサイトへ誘導する広告バナーだろ」
誰もいない部屋の中で、修一は一言そう呟いた。
その勢いで画面を下にスクロールしようとしたとき、偶然その広告バナーに指が触れてしまい、携帯の画面は修一の意と反して、アプリをダウンロードする画面に切り替わってしまった。
携帯の画面の左上には、さっきみたオレンジ色の四角形の真ん中に、Sと大きく書かれた白色の文字が入っているアイコンがあり、その右隣には[シルシ-あなたの声を届けよう]と書かれた文章が並んでいた。