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美少女幼なじみに焚きつけられたワナビ俺、青春ラブコメしながらラノベ作家を目指す  作者: 織星伊吹


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第21話 冒頭一ページ


「俺は……そんなつもりは」そうぼやいた矢先――、「すいませんでした。皆さん」とイケメンサイドカーは立ち上がるや否や沈黙する店内に律儀に頭を下げた。

 照明を反射するサングラスが、俺を捕らえる。


「すまねェ、大人げなかったな。一つ、教えてくれ。アマチュアのテメェが書く物語は、テメェの言う“なんちゃってプロ”の俺が書く物語よりも面白ェってのか?」


「少なくとも……アンタの物語よりはね」


「フン、そうか……」イケメンサイドカーが鼻で笑って、唇を曲げる。


「じゃあ言ってやんぜ。テメェの小説な、初っぱなの一行目から少しも興味をそそられねェ」


「……なんだって?」


「冒頭一ページ目で読者の興味が引けねェようなら、その作品はブラウザバックされて終いだ。終盤でどれだけ面白くなろうと、その物語は駄作になっちまうと俺ァ思ってる。小説に……いや、マンガやアニメも一緒だが、“最初から最後まで物語は常に面白くなくちゃならねェ!”テメェの小説がPV(アクセス数)を稼げなかったのはソレが理由だ。これが人気作家の新作書き下ろし小説なら許せるかも知れねェが、テメェはそれをあろうことか毎日が激戦区の戦場、ウェブ小説でやりやがった。こんなもん爆死するに決まってるだろうがよ。テメェはウェブ小説……いや、根本的な物語の作り方がわかってねェ!」


「そんなことない! 序盤が緩やかでも終わりが良ければ作品としてのクオリティは絶対に上がる。すべての作品がテンポの早さだけで進むだなんて思うな!」


「バカかテメェ。序盤で退屈だと思われたらソレで終いだ! 最初の十ページまでに面白いと思わえる要素が一つも無かったら、それ以降読者のテンションの最大値は決まってきちまう。最後まで読めば面白いなんつう言葉は、ごく一部の名作や超人気作にしか許されねェ特権だ! すべての作品がそうであると思うな!」


「…………っ」


 遂に、俺の言葉が止まってしまう。それを見てか、イケメンサイドカーが不敵に笑った。


「お? じゃあ勝負すっか? あァ?」


「……勝負?」


「テメェと俺じゃあ知名度の差がハンパねェ。だからハンデをやる。テメェがご執心の新人賞でどっちの作品が面白ェか、決着を付けようじゃねェか。作品が受賞するか、高次の選考で落選したほうが勝ちだ。そして、勝ったほうが――」

 ユメを一瞥して、


「WanWanさんのイラスト担当っつうことだ。敗者は黙って引き下がる。もしテメェが勝ったなら、おまけして頑張ったで賞で五十万やるよ。どうだ、面白ェと思わねェか」


 俺は完全に舐められている。経験値の差で言えば圧倒的かもしれない。だけど、物語にかける熱い思いなら俺は絶対に負けていない。近年の異世界小説にしか触れてこなかったような男の書く物語よりも、自分の書く物語のほうが絶対に面白いと思ったし、何より舐められたままなのがとても悔しかった。


「良いよ、それで構わない。でも金はいらない。それに、ハンデばかりじゃ悪いからこちらからも譲歩させてくれよ。アンタの得意なジャンル、ハイファンタジーで勝負しよう」


 そう宣言すると、イケメンサイドカーは苦笑いを浮かべて、金色の髪を撫でつけた。


「……わざわざ勝率を縮めてるってことに後から気付いても遅せェぞ」

「アンタの得意ジャンルで、アンタより面白いファンタジー作品を書く……絶対、負けない」


「男に二言はねェな……?」


「ああ、正々堂々やろう」


「テメェのそういう心意気はかなり気に入ったぜ。勝負の内容、詳しい話は後でメッセージを送る。せいぜい対策でも立てておくんだな」


 イケメンサイドカーはニヤニヤと笑みを浮かべながら、用意されていた布巾でテーブルの上を綺麗に拭いてから席を立った。自席の伝票と、ついでに俺たちの席の伝票を奪い取る。


「……それなりに楽しかったぜ、春夢青叶」


「ヘンなヤツだな……アンタ」


「ハッ、作家っつうのは揃いもそろって変人連中ばかりだぜ。じゃあな」そう言い残して、イケメンサイドカーが入り口のレジで会計を済ませて去って行った。


 彼との口論が終了すると、ユメと目が合った。


「アオハル」


「何?」


「わたしは、アオハルの作品を今後も描いていきたいと思ってるよ」


「わかってるよ。ごめん。なんかヘンなことに巻き込んじゃって」


「それは平気。でも……アオハルの思っていることの全部が全部、わたしのやりたいことだとは思わないでね」


「……怒ってる?」


「ううん、そこだけちょっと気になったから。ゴメンね。あんまり気にしないで」


 ユメとの間に、少しだけ微妙な空気が流れる。

 俺は困ったように座っていたチアキに目を向ける。彼女はつまらなそうにストローに口を付けていた。


 間接的とはいえ、俺とユメの関係がチアキに伝わってしまった。




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