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美少女幼なじみに焚きつけられたワナビ俺、青春ラブコメしながらラノベ作家を目指す  作者: 織星伊吹


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第19話 イケメンサイドカーとミルクたっぷりラブリー贅沢いちご100%パフェ


 ユメがイケメンサイドカーとの打ち合わせのために外出してから約三分後、変装用の全身コーデを決め込んで家を出る。


 メールに載っていた打ち合わせ場所と集合時間は覚えている。目的地は徒歩で十分程度の喫茶店だった。どこに住んでいるのか知らないが、こちら側に都合を合わせてくれる辺りは人間的に信頼できるかもしれない。しかし、もし相手がただの変態でユメに襲いかかるようなことがあったら、そのときは俺が彼女を守らないと……なんてことを考えている自分が恥ずかしくて羞恥でうずくまっていると、誰かが声をかけてきた。


「……あの、大丈夫ですか?」


「あ、いえ……」


「その声はアオハル? え、なんでそんな職質されそーな格好してるわけ? 趣味?」


 丈の短い白のワンピースに、オレンジ色のカーディガンを羽織ったチアキが驚いた顔でそこにいた。そして徐々に、彼女特有の悪戯な笑みへと変化していく。


「う、うるさいな! 別になんでもいいだろ……じゃあ、急いでるから」


 チアキを撒こうとすると――がっ、と上着を掴まれる。


「またまたそんな~! 休日にアオハルが外出するとか、何か面白いものがあるって言ってるようなもんじゃない? だ・か・ら、お姉さんに教えてくださらないかしら」


「お姉さんって……お前にまったく似合わない言葉だな」


「あらーん。そんなことないわよ。うっふんでだっふんだの精神を忘れてないわ、あたし」


「やっぱりおっさんじゃねえか!」


「まあなんでもいいけど……本当に何処行くの?」


 真面目なトーンで訊ねてくるチアキ。俺は彼女のこの一面が少しだけ苦手だ。


「……ちょっと、そこの喫茶店まで」


「一人で?」


「悪いかよ。そんな気分だったんだよ」


「じゃああたしも行く」


「……だ、ダメ」


「えー、なんでよぉ! 何がなんでも絶対付いてくから!」


「お前は家帰ってケモケモでもやってろ!」


「あー酷い! 休日は夜しかやらないって決めてるんだもん! リア充舐めんな! 暇人なアオハルとは違うんですー! ていうかアオハル暇人のくせしてここ最近はめっきりインしてこないし! マジムカつくんだけど! 運営に訴えるよ!」


「運営に訴えてどうするんだよ! 俺にだって色々事情があるの!」


「ねーえーやだー! 連れてって! じゃないとユメちゃんと同棲してることクラスでバラしちゃうから! あ――ご近所の奥様方ー! ここにおります変質者アオハルくんは久しぶりに再会した美少女幼馴染と一つ屋根の下で、イチャエロライフを――」


「近所の奥様そこまでのゴシップ求めてないから! つーかただの同居だからっ!」


「そうだ、あたしには“アオハルがなんでも言うこと聞いてくれる券”があるんだった」


「は?」


「ほら」


 チアキがスマホ画面を見せてくる。そこには、少し前に俺が送った『ホントゴメン。今度何か奢るから』という謝罪メッセージ。


「あたし、メロンソーダ飲みたいっ!」


「ぐっ……」


 ご機嫌なチアキを連れて、俺の尾行は再開するのだった。


 * * *


 目的の喫茶店に入り、俺は店内を見渡す。席はぽつぽつと空いていて、部屋の隅――四人がけのテーブルにユメは座っていた。どうやら相手はまだ来ていないらしい。


 俺とチアキはその席の前に腰を下ろすことにした。背中には薄いパーティション。その向こう側に、ユメの後ろ姿というわけだ。


「……で、一体どういうことなの、これは」


 対面に座るチアキが呆れたような表情で訊ねてくる。向かい側に座るユメのことはしっかり確認したらしい。


「野暮用だよ。とりあえずバレないようにしてくれ」


「まさか本当にストーカー行為してるだなんて思わなかったんですけど。それでわりと反応に困ってて、今後あなたとどういう風に向き合っていこうか真剣に考え始めて」


「今の俺に真剣に向き合ってくれ!」


 小声で小競り合いを続けていると、俺たちのテーブルを一人の男が横切っていく。


 カツン――カツンと革靴の心地よい音が高鳴る。顔を上げると、そこには一八〇を越えるスタイル抜群の男が。金髪のオールバックにサングラス、テッカテカのライダースジャケットの胸元からはシルバーアクセサリーをジャラつかせている。


 もう見るからにアレな人だった。外見だけで人を判断してはいけないとは思うけど、その金髪男はDQN以外の何者にも見えなかった。

 彼はそのままユメの対面にどかりと座ると、肘をテーブルに置いた。


「……俺ァ、イケメンサイドカーっつうもんだが……WanWanさんで間違いねェか?」


「あっ……はい。わ、WanWanと……申します……けど」

「そうか……正味問題ねェ」


 完全に怯えきっているユメ。これ俺が出て行ったところでワンパンで殺される気がする。

 突然、イケメンサイドカーはぴしっとまっすぐ挙手し、店員を呼びつけた。


「はい。ご注文を窺います」


「……『ミルクたっぷりラブリー贅沢いちご100%パフェ』を一つ、お願いします」


 外見からは想像することができない綺麗な声と言葉使いで、男子が頼むのは少し恥ずかしいレべルの商品名を読み上げながら注文するイケメンサイドカー。

 なんだこいつ、一体何者なんだ。それが正直な感想だった。


「ふふっ」


 それを聞いていたらしいユメが、イケメンサイドカーの前で吹き出した。


「何を……笑っていやがる」


「あ、ごめんなさい。その……甘いもの好きなんですね」


「大好きだ。なんだったらアンタの分も注文するぜ。……いるかい?」


「ああ、いえ……その、お構いなく」


「そうか。そいつァ悪かった。色々と気が回らなくて申し訳ねェ。女性相手となると、大分緊張しちまう性分でね……俺の言動に何か問題があったら言ってくれて構わねェ」


「ふふ、大丈夫ですよ」


 え、何ちょっと良い感じになってんの……!? 見るからにヤンキーじゃん! もっとその……そういう感じで来いよ! 頭弱い感じでさ! そういう無駄に紳士っぽいギャップ萌えいらないから! 捨て猫に傘ささなくていいから!


「……アオハル?」


 注文したメロンソーダをストローで啜りながら、不安げな表情で見つめてくるチアキ。


「ああいや、なんでもない」


 とにかく今は二人の会話に注目しておこう。もしものときは……俺が。


「メールにはもう書いちまったが、自分の口からもう一度言わせてくれ。……アンタのイラスト、ありゃー凄ェ良い。端的に言って最高だ。百億万点だ」


 ――めっちゃ評価してくれてるー! ……普通に良い奴なんじゃないか? どんどん好感度上がっていくんだけれども。


「数字なんかでしかアンタのイラストを評価出来ねェ浅はかな俺をどうか許してくれ。だが、“さくら”以外の二次元嫁を本気で幸せにしてやりてェと思ったのは初めてのことなんだ」


 さらにオタクだった。二次元嫁とか言ってるし。イケメンサイドカーは俺の作品に登場したヒロインのイラストについて、長いこと褒めちぎっていた。そんな風に無作為に褒められ続けると、まるで自分の作品のヒロインが可愛いと言われているようで、俺は嬉しかった。


「だが、一つだけ問題がある。それは、あの作品……アンタがイラストを描いてやったあの小説だ。あれはクソつまらなかった」


 イケメンサイドカーの元に、なんちゃらいちご100%パフェが届いた。彼はあり得ないくらいの爽やかフェイスを店員さんに向け、そっと銀のスプーンをパフェに差し込む。


「俺ァ嘘は付かねェ。正真正銘、真実しか言わねェ。アンタのイラストは最高だ。SNSを見る限りまだ駆け出しみてェだが、業界内でもトップクラスを突っ走っていける才能を秘めてやがると思ってる。だから、今回こうして声をかけさせてもらった」


 イケメンサイドカーが、パフェ天頂に聳えるいちごをユメに向けて、口を開いた。

「俺なら、アンタのイラストをもっと羽ばたかせることができる。最速で売れっ子絵師にすることが、だ。アンタのことをもっと……幸せにすることができるぜ」


 ――納得が、いかなかった。

 俺は滾った感情をそのままに、席を立ち上がった。



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