メッセージ
「ほう、タンク━━ねえ。」
パロパロネはよくわからなかった。
なに言ってんだ、コイツ?状態である。
頭のおかしい転移者ばっかりじゃ。
しかし知ったかぶってみた。
絆創膏痴女は部下として扱うからだ。
上司としては舐められるわけにはいかない。
適当にやっつけ仕事をした他の転移者とは違うのだ。
バレないように端末を操作して検索画面に表示させる。
タンク━━ほう!戦車か!ええのう!ええのう!
爺はサバゲーが好きなのである。
小娘は何でこんなイカれた思考をするのかは分からんが。
人が戦車ねえ?
爺は頭をひねる。
そうじゃ!あっちの世界では擬人化というものが流行っておったのう。
テラが言っておった、言っておった。
とすると━━サバゲーで使った盾を使って━━大砲をのっければよいか。
「よかろう、小娘。
ワシにまかせておくのじゃ。
かーかっかっかっかっか!」
パチンと指をならす。
「あ……」
絆創膏痴女は糸が切れたように倒れた。
「くっくっく。いじくりまわしてくれるわ。」
少年は冒険者仲間と共にゴブリンの群れに囲まれていた。
「【スキル簒奪】」
「……ちっくしょー!やっぱ効かねえ!」
ガン!ゴブリンの振り回してきた棒を盾で受け止める。
「チッ!ゴブリンの背が低すぎてやりにくい!」
盾で棒を弾くようにして剣をゴブリンの顔に突き刺す。
「ギャッギャッギャ!」
「うるせえ!」
違うゴブリンを蹴っ飛ばす。
「キリがねえ。」
「おい!小僧!一旦下がるぞ!」
「小僧って呼ぶんじゃねえ!」
突如脳裏に音が響く。
♪ピンポンパンポーン↑♪
「なんだぁ?」
目の前に半透明の画面が出現する。
『元気かね。転移者諸君。
君達に知らせなければならないことがある。
今、13人目となる転移者が世界に出現した。
安心したまえ。
君達の生き残りバトルには参加はしない。
故に画面にも表示されない。
ただ残念なことに君達の動きが低調なのでね。
刺激となるように刺客を送り込んだんだ。
留意しておいてくれ。
死にたくなければね。
特に未だ動き出さない引きこもり君達はね。
クックックックック。』
画面にメッセージが流れる。
「うわ!み、見えねえ!」
画面から棍棒が突き出してきて顔面に命中する。
「ブベッ!」
「ゲッゲッゲ!」
少年は後ろに倒れこむ。
「小僧!何やってんだ!」
涙を流し、鼻血を出しながらも懸命に盾を突き出し、ゴブリンの追撃を受け止める。
ドカ!
先輩冒険者がゴブリンを蹴っ飛ばし、少年の腕をつかむ。
「退くぞ!」
【ファイヤーボール】
少年達に迫っていたゴブリン達に火の玉が襲い掛かる。
仲間の牽制攻撃だ。
少年の頭に再度、音が流れる。
♪ピンポンパンポン↓♪
少年の視界をさえぎっていた半透明な画面が消えた。
画面は半透明といっても結構白く、あまり透けてはいない。
ちなみに少年はこのメッセージを読んでいる余裕などなかった。そしてこの画面は脳に直接送り込まれたため人にも見えない。見えた所で日本語表記なので理解することもないが。
バックログ機能もついてはいない。
普段は簡素なステータス画面と他の転移者との大雑把な位置関係が表示されているだけの画面だ。
他の転移者もこのメッセージを受け取っていた。
ある者は食事中、ある者は町で買い物中、ある者は仕事中、ある者は農作業中。
「やべ!あの触手野郎が何か仕掛けてきやがった。」
「ど、どうしよう!」
「ほう、あのタフガイ。さては私の筋肉に嫉妬したな?
よかろう。我が筋肉で返り討ちにしてくれるわ!」
「zzz……」
ある者は寝ていた。
当然、メッセージのことを知る由もない。