豪快なサバゲー
日本のとある山中が戦場となっていた。
北から南へと下る地形は段々畑となっており、東西にわかれ両軍は戦闘を行っていた。
既に収穫は終わっており、いたる所で藁を干していた。
藁、小屋、水路、林などが障害物になり、高低差のある拓けた戦場にアクセントを加えていた。
東軍は緑色の迷彩服、西軍は紺色の戦闘服を身に着けていた。
戦場には臓物をぶちまけた死体が転がっている。
北の高台から少女とグレイ型宇宙人が戦場を俯瞰していた。
「10時方向の小屋に狙撃手と盾が接近中です。」
「捉えた。」
少女は寝そべりマテリアルライフルを構えていた。
マズルから激しく火が吹き出て、少女の体が一瞬浮き上がる。
身の丈ほどの巨大な盾を2枚持っている、長身でスレンダーな女性と団子頭の少女が走っていた。
しかし、走っているといっても装備の重さに足をとられ駆け足程度だ。
ガギン!っと盾に弾丸が命中するも女性は体勢を大きく崩すだけで走り抜けるのを止めない。
「ネル様!飛び降りてください!」
グレイ型宇宙人がアサルトライフルの前床に取り付けてあるグレネードを発射する。
ドカン!と小屋が炎を撒き散らす。
ライフルを引きずりながら走っていた団子頭が2m下の空き地に飛び降りる。
「のごっぶ!!」
団子頭が地面に転がり、持っていたマテリアルライフルにつぶされ呻きをあげる。
とりあえず北側の高地からの狙撃からは逃れられた。
「敵本陣に狙われています。構えてください。」
団子頭のマテリアルライフルを挟むように女性は2枚の盾を地面に突き刺す。
盾は鈍く黒光り、まるでモノリスのようであった。
山に囲まれた農村で東西に別れる両軍に決着が付こうとしている。
東側の迷彩服の本陣は少し高台にあり現在二名が守備をおこなっていた。
「行ってくだせい!ひきつけます。」
土嚢からアサルトライフルを突き出しているタコ型宇宙人が叫ぶ。
ズガガガガ!
発射音にまぎれて、高地である本陣の横から地形を利用して隠れるように女性が飛び立つ。
空気抵抗になってしまうような立派な乳房を持つ迷彩服の女性が背負った物体から炎が噴射される。
ゴオォォォォ
まるで戦闘機の胴体部のようであった。
中央部にむき出しのリフトファン、挟み込むようにジェットエンジン、そして巨大な翼。
ガキン!ガキン!と盾が銃弾を弾く。
「早くしてください。ネル様。」
「うるさいのじゃ!あと少しなのじゃ!」
ごそごそと動き回っていた団子頭がマテリアルライフルを発射する。
「ずどーん!」
緊張感のかけらもない抑揚の無い少女の声がライフルから発せられる。
弾丸は土嚢ごとタコ型宇宙人の頭を吹き飛ばしていた。
「ふふん!どうじゃ!」
自慢げに誇る団子頭が突如爆風と轟音にさらされる。
両足に付いているスラスターでブレーキをかけながら、リフトファンで爆風を撒き散らしている巨乳が後方に飛び込んできたのだ。
上空をスライドするかのように滑り込んできたゴーグル巨乳が機関拳銃を構える。
「お疲れちゃ~ん♪」
タタタタタタタ!
「のじゃぁぁぁ!」
団子頭とスレンダー女性を蜂の巣にする。
北側にいたグレイ型宇宙人が戦況をみてつぶやく。
「ワ、レ、ワ、レ、ノ、ショ、ウ、リ、ダ」
「いや、お前、さっきまで普通にしゃべっていたろ。」
グレイは双眼鏡で戦場を見回す。
「ジジイはどうなっている。」
「いまだにヤギとスコップでチャンバラをしていますね……。
あっ駄犬がライフル拾いに出てきました。2時方向です。」
少女がスコープでスコップを持った狼男を捉える。
発砲音とともに狼男の上半身が吹き飛ぶ。
ゴオォォォと轟音を戦場に響かせ巨乳が西軍本陣に突入する。
「フレイア様が突入していきます。
コ、レ、デ、オ、ワ、リ、ダ。」
本陣には旗が立っておりこれを奪われると負けとなる。
フラッグ戦というヤツだ。
旗の横には小屋が建っており、そこから団子頭とスレンダーがスコップを担ぎ出てきた。
「さあ、先程の場所まで走って武器を取りに行きましょう。」
「え~、もうつかれたのじゃ~。
もう残機もないし、負けでいいのじゃぁ。」
「まあ、開幕速攻で飛行ユニットが墜とされた時点で終わっていましたからね。」
「そうですわねぇ。」
団子頭をガシッと背後にまわった巨乳が掴む。
「あら?お早いのですね。」
スレンダーが何事もなかったかのように話しかける。
巨乳が団子頭のこめかみに機関拳銃をグリグリと押し付ける。
「あ~熱いのじゃが?上司にむかってそれはないのじゃないか?」
「いやですわ、ネルネルネ様。これはサバゲーですのよ?
楽しい、楽しいゲームですわ。
そしてゲームは本気でやるから面白いのですのよ?」
スレンダーがスッと離れてフラッグを取りにいく。
タタタタタタタタタ!
ぐちゃっと頭部を激しく損傷した死体が転がる。
「はい、どうぞ。」
スレンダーが団子頭の有様を見て頬を赤らめていた。ハアハア。
「平常運転ねぇ。」
巨乳がスレンダーから受け取ったフラッグを掲げる。
ファーーーーーーーーン!
「おい!何でその気持ちわるい手足が生えた魚が3匹いるんだ?」
「義体の予備を使い切ってもうたんじゃ。
可愛いじゃろ?」
「ネルかよ。その私の声が発砲音の銃は禁止だ。」
「のじゃー!」
「テラ様、別にレギュレーションには違反していませんよ。」
「いや、やめろよ。それ。」
「あと少しだったのに!」
「ふぉっふぉっふぉ、わしの勝ち越しじゃのうて。
あと約束じゃ、語尾にメェとつけるのだぞい。」
「くっ!しかしゲームは勝ちましたから良しとしますか……メェ。」
「あらあら、では私の前でもお願いしますね。」
「フレイア様……メェ。」
「ワ、レ、ワ、レ、ノ、ショ、ウ、リ、ダ。」
「しかし、特殊ユニットのバランスが悪すぎませんか?」
「ですね。シールドはやはり武器が欲しいですね。
あとフライトユニットが強力すぎるのでは?」
「いや、シールドは武器無しじゃないとゴリ押しで制圧できてしまうだろ。」
「あらフライトユニットはあの位でないとただの的になってしまいますわ。」
「スナイパーならスナイパーライフルでよいのでは?今のでは重くて移動が遅すぎますよ。」
「魚、魚?通常装備との性能差がありすぎます魚?」
「まあ、そのくらいにしてまた今度打ち合わせをしよう。
とりあえず帰りますよ。」
両陣営が整列する。
「パロパロスチーム VS アマテラスチーム
1対4でアマテラスチームの勝利!」
「「「ありがとうございました。」」」「のじゃ。」「メェ」「魚」「ワン」
【空間置換】荒れ果てた風景がのどかな農村へと戻る。
【開門】門があらわれ扉が開く。
「帰るのじゃぁぁぁ。勝てなかったのじゃぁぁぁ。」
「あたりまえですよ。いつも変態副官と一緒にいては。」
「なっ!裏切り者のくせに!」
「私とネル様は一心同体なのです。」
「相変わらずにぎやかじゃのう。」
カチ、シュボ!
「お?」
ドカーン!
グレネードが発射されて、弾は大きく弧を描き崖に命中した。
「ジジイィィィィ!」
「何やってくれてんのだぁぁぁぁ!」
丁度付近を運行していたバスが崖から堕ちる。
「あっ!」
『昨日のバス転落事故で━━運転手を含む、行方不明者13名の行方は依然としてわかっておらず━━』