君が倒れて
昔から、君は少し意地っ張りなところがあって、なかなか気の強い子だったけれど、僕はそんな君が大好きだった。誰よりも元気で、明るくて、少し涙もろいところもあったけど、本当に、大好きだったんだ。
だんだん大きくなって、お互いだんだん意識し始めたのか、少しよそよそしく接してしまう時もあった。でも、いつの間にか君と笑顔で話せる関係に戻っている。君の笑顔に、きっとたくさんの人が助けられた。僕もその一人だった。
今から一か月と十二日前、君は調子が悪そうにしていたよね。本当なら、あの時無理やりにでも病院に連れて行けばよかったんだ。でも、君が「大丈夫、私は元気がとりえなんだから!」って笑顔で言ったから、僕には病院に連れていくべきかの判断が最後までできなかった。優柔不断な自分を呪いたいよ、本当に。
君はいつも元気で、調子が悪そうにしてた時なんて一度も見たことがなかった。
そんな君は、もういない。
今は白いベッドの上で、深い眠りについている。
死んでいるわけではない。
生きているのに、医者ではどうしようもないらしい。
一か月と十二日前の夜、君の家の方からサイレンが聞こえたんだ。あの、忌々しい、患者を運ぶサイレンが。まさかと思ったよ。結局その事実を知ったのは次の日だったけど。
本当に、自分を呪いたい。あの時、もし僕が病院に連れて行っていたら……
やめよう。過去についての「もし」は、ただの希望でしかない。今僕が持てる希望は、彼女が目を覚ますことなのだから。