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アルト  作者: 若林夏樹
3/18

第3回 仮装ライブ


新キャラ登場です



「まぁライブっつっても、そんな大掛かりなもんじゃないけどな。小さなライブハウスのちょっとしたイベントで『仮装ライブ』とかいうのがあってさ、それにちょっくら出てみんかーって話があった」

 はにかんだように笑いながら、リーダーの透也は説明する。

 その笑い方は隼人から見れば大人っぽかったが、逆に本人はフケて見られているとショックを受けたらしい。


「ライブしてー!!」

 まず最初に乗り気になったのは和馬だった。

「仮装ライブっていうんだからなんか仮装するんだろ?それって自分たちがアルトだって名乗んの?」

 的確な質問を直人がする。

「名乗ろう。無名のグループが多いイベントだからそんなに注目されてないと思うし」


 3人の会話を聞きながら、隼人はテンションがぐるぐる回り始めるのを感じた。

 ライブ・・・?また2年前のようなことができる・・・?


「隼人はどう思う?」

 リーダーに唐突に話を振られ、隼人はどきっとしてしまった。

「なんていっても、1番注目されるのはボーカルのお前だからな」

「出たい・・・めっちゃ出たいっす!!」

 腹の底から力を込めて隼人は叫んだ。


            ◇


 そして、ライブ当日の学校で、隼人は幼なじみの英二にだけライブをやることを話した。

「そんなことやってバレたりしないのかよ」

「大丈夫でしょ。リーダーはあんまり注目されてないイベントだって言うし」

「そうかー?」


 元々隼人がアルトに入ったきっかけは英二にライブハウスに連れてってもらったことから始まる。

 大して興味のなかったグループの前座として歌っていたのがアルトだったのだ。

 その当時、ボーカルには別の男が担っていたが、ちょうど隼人がライブを見に行ったその日に脱退することになっていて、その後、隼人が入って現在の形になっている。


「もしなんかあったら頼むよ」

「何をだよ」

 英二がうんざりしたように訊ね返す。

「だって英ちゃんにしか頼める人いないしさ、めんどうにならないように」

「わかったわかった。なんかあったらフォローしとくよ」

 隼人は目の前の幼なじみに心の底から感謝した。


            ◇


 一体何に仮装するとかと思いきや、リーダーが用意したのは、なんと覆面レスラーのような衣装だった。

 1番最後にそこのライブハウスに到着した隼人は開口一番に、

「これ着るんですか?」

 と訊いてしまった。すでに他のメンバーは覆面レスラーになりきっている。


「いや、他の奴ら見てみたけどもっとすげーのとかいたよ。白鳥のカッコしてる奴見た瞬間、レスラーが輝いて見えた」

 和馬が真剣な顔で答える。覆面のせいで声がくぐもって聞こえた。

 覆面レスラーと言っても、ちゃんと服を着ている。確かに白鳥よりはいいかもしれない。

 そう思って、隼人はトイレでその格好に着替えることにした。


「ちょっと!!!」

 トイレの個室に向かおうとしたとき、なぜかそこで聞こえるはずのない声が聞こえてきた。男子トイレのはずなのに女の子がいる――・・・

「へっ変態・・・!」

「どっちが変態よ!ここは女子トイレなんだから!!」


 その女の子の言葉でようやく周りの状態が目に入った。今思えばなんで気づかなかったんだろう。男子用の便器がないことに。

「うわっ・・・やっべ・・・!」

 慌てて出て行こうとすると、その女の子とぶつかってしまった。それだけ慌てていたらしい。

 しかも、漫画みたいな展開なことに、隼人は彼女を壁に押し倒してしまった。


「変態な上に、今度は襲う気?」

 静かにそう言われて焦ったが、隼人は別のあることが気になり始めた。

「いやっ・・・あの、えっ・・・っていうか、佐山さん?・・・・・なわけないよね。髪もっと長いし」

 そこまで言ってはっとした。

「ごめんなさーい!!」

 もう二度と会いたくないと心からそう思って、ダッシュで逃げることに成功した。


 それにしても似てたな・・・同じクラスの佐山友紀に・・・・・


            ◇


 仮装ライブは無事にスタートした。10組ほどのグループが仮装して出るらしく、最初は例の白鳥だった。インパクトは十分で、2組目の侍たちが霞んで見えた。

「俺たちは8組目だから」

 リーダーの言葉にメンバーそれぞれが頷く。


 今回歌う曲は、アルトとしてまだCDを出していないものばかりだった。しかし、4曲予定している中、1曲だけ今度出す予定の新曲『花びら』を入れている。


「やばい・・・緊張してきたー」

「出た。直人のシャイボーイが」

 和馬がそれをからかうが、それに答える余裕もないらしい。


 時間は刻々と過ぎていく。もうすぐ出番だ。

「よっしゃ。行くぞ」


 リーダーの一声で、ようやく覆面レスラーが登場した。会場が盛り上がる中、その正体不明のボーカルがマイクを手にする。

「はじめまして!アルトです!」

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