最終回 アルト
ここまで読んでくださってありがとうございました。
書ききれなかった無駄な設定を書きました。
そこも読んでくださると嬉しいです。
退院してから初めて学校に行ったときのクラスメートの反応はそれぞれだった。
最初は驚かれた。なんで言わなかったんだと責められたり、怪我を心配されたり、そもそもアルトって何?と訊かれたり、とにかく反応は様々だった。
その日だけで、隼人は動物園のレッサーパンダの気分になった。
「もう怪我のほうは大丈夫なのか?」
ようやく解放されたとき、英二が苦笑しながら話しかけてきた。隼人も苦笑いになる。
「ああ。それよりいろいろ迷惑かけたな」
「ほんとだよ。バレたらバレたであっさり英雄だな」
一宮に言われたクラスメートにも正体を明かすなという約束は守れなくなったが、これで良かったんだと思う。うしろめたさを感じることなくみんなと接することができるから。
ただ、レッサーパンダからは早く脱出したかった。
隼人の大事を取ってからなのか、マネージャーの池田は先1週間全く仕事を入れていなかった。
だから、菜穂といっぱい遊びに行こうと考えている。
「英ちゃん、俺今からデートしてくらぁ」
「いってらっしゃい。俺もだけどな」
なんとなくわかっていた。英二が友紀とつきあいだしたということを。
よかった・・・ほんとよかった。隼人は心からそう思った。
◇
いつもより遠回りして帰った。自転車を引いて歩き、隣には奈穂がいる。
「アルトってどういう意味なの?」
会話の流れで菜穂にそう訊かれてしまって、隼人ははたっと固まってしまった。
「え・・なんだろ」
「えぇぇ・・・知らないのー?」
そういえば前にメンバーが言っていたような気がするが、すっかり忘れてしまった。
「なんだったっけ・・・歌のパートとは関係なかったような気がするけど・・・」
ソプラノ・アルトとは関係ないんだと思ったことは覚えている。しかし、肝心なところを忘れてしまったらしい。
「そうだ、本屋に寄ってってもいい?」
菜穂の提案で、2人は駅前の書店に寄ることにした。
◇
書店に入ってからも、隼人はグループ名の由来を思い出そうと奮闘していた。自分がバカなのはわかっていたが、こんな肝心なことまで思い出せないとは思わなかった。
「まだ思い出せないの?」
呆れたような表情で奈穂がやって来る。
「やばいよな、俺。なんか思い出せそうな気はするんだけど」
ふとそのとき、隼人の視界に英和辞典が映った。
そうだ・・・もしかしたら外国の言葉かもしんない・・・・・・
「イタリア語?」
真っ先にその辞書を手に取った隼人を見て、不審そうに奈穂が訊ねてくる。
「うん。リーダーが昔イタリア語勉強してたから」
ぱらぱらとページをめくって捜し始めてからすぐそれを見つけることができた。
「―――あった」
―――Alto<アルト> 高所 上部 天 海
そうだ。結成するときにリーダーが言ってた。どんなことがあっても、俺たちは上だけを見ていこうって・・・・・
一見すると、アルトは低いイメージがあるが、あえてイタリア語の意味で使ったところがリーダーらしかった。
菜穂にそれを教えると、へー・・かっこいいと感心してくれた。
「いつか菜穂にもアルトが好きだって言わせてやるよ」
隼人はアルトのボーカルとして言った。
◇
アルトが初のライブを行うことになったのは、隼人が高校を卒業した後の話になる。
「はー・・・緊張するー」
直人がステージ裏でそんなことを言いながら何かとなえている。
「俺もだ。今日初めて彼女が来ることになってんだよ」
珍しく和馬も緊張しているらしい。
「よっしゃ!集まってくれ」
リーダーはすでに円陣の準備をしている。
全員揃ったところで、リーダーが一言言った。
「とにかく楽しくやろう!!」
「おおぉぉぉっす!!!」
なんとも変なかけ声でアルトの初のライブが開始される。
隼人はステージ上のマイクスタンドに向かって走り出した。
なんとなく書かなかった無意味な設定です。
・実はリーダーは結婚している!
奥さんは1度だけ作中に登場していますが、
それらしい描写は一切書いていません;
わかったらそれとなく教えてくれたら嬉しいです。
・直人の昔の彼女・・・の話がありましたが、そんな感動的な話ではないです。
ただこっぴどくふられただけです。
・和馬はちゃんと彼女と復活することができた。
・アルトの変動。メンバーが変わる予定でいたんですが、
それを書くことはできませんでした・・・
また機会があったら書かせてください!
ここまでありがとうございました!!