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満月

 この世界では満月になると魔法が満ち、新月になると魔法がなくなるらしい。


 僕たちはこの異世界に半世紀以上いる。

もちろん、そんなことは経験上分かっている。


 僕たちはこの異世界に転生する時にチートな能力を持たせてもらった。

それはそれで自分たちが生きていく上では十分すぎる能力だった。

そのおかげで僕たちはこの世界で英雄に祭り上げられた。


 でも、この能力には副作用がある。

その1つが満月の日だ。

満月の日は能力が暴走しやすい。

その事を神様もとい神様見習たちが非常に気にしていた。


 神様見習たちは

「そうだ、器を強固にすれば良いんだ」

「でも、そんな技術僕たちは持っていない」

「でも、器を小さくすれば私たちにも出来るでしょう」

「そうなるとそれだけ強固な器にするためには性別固定が邪魔になるな」


 僕たちを置いて神様見習たちは侃々諤々の議論をしている。


 そして現在に至る。


 さて、今日は満月の日。

学校に赴任して初めての満月の日だ。

僕は朝、ベッドの上で落胆していた。


 「どうしたのよ。

初めての体験でもないのに落ち込んで」

僕を起こしに来た美少年が笑いながら問いかけてきた。

美少年は

「あ、そうか。

男言葉をしゃべらなきゃね」

とはにかんでもいた。


 この美少年は何を隠そう僕の妻のフィーナだ。

「でもおかしいのよね。

女が男言葉をしゃべっても違和感がないのに男が女言葉をしゃべるとかなりの違和感。

本当、どうにかして欲しいわね」


 僕が落胆しているのは妻が性転換しているからではない。

自分自身も性転換しているからだ。

しかもお互い幼児化までして。


 あの神様見習たちは自分たちの実力不足を棚に上げ満月時に僕たちをこんな姿にさせる。

ちなみに能力は通常と変わらないぐらいだ。


 僕が落胆しているのはこんな姿に悩んでいるからではない。

僕たちはこんな姿になったからだと言って学校を休めない。

しかも担任だ。

一体どうやってこの体を説明したものかと思案にあぐねていた。


 フィーナは

「そんなもん、適当にすれば良いじゃん。

この事実は変えようもないし。

なるようになるって」

と食事中にそう話していた。

彼女は意外とさっぱりした性格なのでこの状況を楽しんでもいる。


 この後、僕は彼女の着せ替え人形と化す。

彼女は意外と人形遊びが今でも好きで今日は僕が彼女の着せ替え人形だ。

特に異性の生徒を相手にするようになって頻度が増えたように感じる。


 僕は僕でいつも服装に無頓着だ。

だからいつも服などは彼女に選んでもらっている。

しかし、今日は酷かった。

「これじゃぁ、フランス人形だよ。

他の衣装に替えてくれない」

「そうね、和風ロリも捨てがたい。

今度はこれを着て」

こうなった彼女を僕は止める術を知らない。

結局、セーラー服状のものに落ち着いた。

かなりフリフリだけど。


 さて、これから女子校舎に向かわなければならない。

一応、女子校舎には僕の顔は知れ渡っているけれどこの姿で通れるか分からない。

ていうか、部外者として学校には入れるかどうか。

とりあえず僕たちは学園長室に向かった。


 意外と学園にはすんなり入ることが出来た。

学園長室に入ると学園長は僕たちの姿を見るなり笑い転げていた。

「私も長年この世界にいるけどこんなのは初めてだ。

もちろん、君たちの真の姿を見ることが出来る私にとっては容易に君たちだと分かったけど。

それにしても悪い神様に当たったね。

神様って言うのは姿、形、性別にはこだわらないものが多いんだ。

人間の生活にもあまり興味がない。

ある意味、自分勝手な生き物さ。

まぁ、人間目線ではね。

人間からすると高次元な存在だからね。

本当はやることが一杯あって細かなことは気にしないんだけなんだけど。

その神様にとって些細なことが人間にとっては大きな事だったりする訳。

私も人間界に来て驚くことばかりだったよ。

だから君たちが当たった神様はよっぽどの世間知らず。

君たちは運が悪かったとしか言いようがない」

と笑いながら答えてくれた。


 そして、学園に入る許可証をもらった僕たちはそれぞれの校舎に向かった。


 女子校舎に入った僕はある意味、パニックに見合わされていた。

女子は子供に目がないらしい。

僕に対して

「お嬢ちゃん、どうしたの」

「お姉ちゃんを探しに来たのかな」

「お菓子あるけど食べる?」

と次々に聞いてくる。

僕はその質問を全部無視し教室に入った。


 教室に入っても同じ事が繰り返されている。

僕はそれに構わず教卓の上に立った。

「静かにしろ!!

全員、席に座れ!!」

僕の大きな声にクラスの女子たちは唖然としそして静かになった。


 「僕は昨日まで担任だったユーラだ。

これからも担任だけど。

こんな姿になったのは事情がある。

僕は満月時にはこんな姿になってしまうんだ。

大体、見た目通り小学校低学年の女児に。

でも、明日になれば元の姿に戻る。

この姿には違和感があるだろうが今日1日の辛抱だ。

さぁ、今日は朝から体術の授業だ。

早く準備して」

そういうと生徒たちは僕の目の前で着替え始めた。

僕は

「ちょっと待って!!

こんな姿だけど中身は男だから」

生徒たちははっとした。

そして僕はそそくさと教室を出て生徒たちが着替え終わるのを待った。


 姿が変われど授業は淡々と進んだ。

そういえば今日はいつもより生徒から声を掛けられているような。

時々、男だって事を忘れられているが。


 とにかく、学校に赴任してからの初めての満月。

とにかくちかれた。

(ちかれたは疲れたよりも上)

明日は元の性別に戻れる。

明日は今日よりも静穏な日であって欲しい。




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