女子校舎
今日は初めての授業。
僕は教師としての初めての仕事となる。
僕は未だに教師としての仕事がよく分かっていない。
しかも女子高生の担任だ。
思春期の女子にあまりいい思い出はない。
元々オタクで女子から暗いと陰口をたたかれていた性分でもある。
だから女子に対して良いイメージがないのだ。
(もちろん妻は別だが)
それに僕はモテた経験がない。
何が言いたいかというと女の子の扱い方が分からないのだ。
特に思春期の女子について。
そんなことを思いながら僕は教室の扉を開いた。
もちろん、教室の中はざわついている。
何しろ女子校舎での男教師は初めてなのだから。
でも様子が違うようだ。
1人の女の子が
「ねぇ、君、教室を間違えていない?
新学期のこの時期、よく間違う人がいるのよね。
ここは女子校舎。
男子校舎は大分離れた場所にあるから。
お願いだから神聖な女子校舎を汚さないでね」
僕は思わず
「間違ってなんかいないよ。
この教室で合っているはずだから」
と答えた。
その女の子は
「あら、ごめんなさい。
確信犯なのかしら。
それともそういった格好をしているけれども実は女子とか」
僕は
「これでも立派な男だよ。
ちょっとひ弱に見えるかもだけど」
その女の子は
「じゃぁ、神聖な女子校舎に入る覚悟は出来てる訳?
これからあなたは私たちにボコボコにされるの。
そして警備員に引き渡されるわ。
その覚悟は出来ている訳?」
僕はビックリして
「一体何を言っているんだ?
僕は君たちにボコボコにされるいわれはないよ。
もしかして僕のことを勘違いしているのかい?
僕は決して怪しいものではない。
見た目は君たちと変わらない年齢に見えるかも知れないけど僕は歴とした教師、君たちの担任さ。
女子校舎での初めての男教師。
どうぞよろしく」
その女の子は
「あら、ごめんなさい。
確かにこの教室は男の先生が担任だと聞いていたわ。
それにしても私たちよりも半世紀以上年を取っていると聞いているわ。
でもあなたは私たちと同じくらい、下手をすると私たちよりも幼く見えるわ。
まるで中学生みたい。
本当に私たちの担任なの?」
僕は
「僕たちは確かに成長が遅かった。
高校生の時は中学生に見られることも多かった。
背だって大体、前の方だったし。
って、何言わせるんだよ。
これは僕たちのコンプレックス。
それには触れないでくれ」
こんなやりとりをし、やっと教卓の所まで行く許可を得られた。
そして、最初に僕は自己紹介をした。
「僕の名前はユーラ。
一応、この前まで勇者をやっていたんだ」
と言うと、またクラス中がざわめいた。
これでも一応は名の知れた勇者だ。
教室がざわめくのはしょうがない。
でも、最初に突っかかってきた女子が
「こんなちっこいのがあの伝説の勇者だなんて信じられないわ。
大体、(見た目の)年齢が合わないし。
あなたが伝説の勇者ならば証拠を見せなさいよ」
僕は
「じゃぁ、何を見せれば良い?
僕の得意なのは武術だけど女の子に手を挙げる訳にはいけないし」
その女の子は
「地下にパンチングマシンとキッキングマシンがあるわ。
そこであなたの力を計測したいの。
良いかしら」
僕は
「別に構わないけど、その機械大丈夫。
こわしちゃうかも知れないけど」
彼女は
「あの2つのマシンは学園長が作ったものなの。
よっぽどの勇者じゃなければ壊れないわ。
それも伝説級の。
だからその機械を壊すほどの力があればあなたが伝説の勇者だって認めるから」
僕は仕方なく彼女の申し出を了承した。
その機械は地下で埃をかぶっていた。
長年、使われていなかったようだ。
僕は仕方なくその機械に向かった。
まずはキッキングマシン。
脚力を測る機械のようだ。
いくら壊れても構わないと言っても高そうな機械だ。
こわしたらどれくらいの弁償額か。
かといって、手加減をすると生徒たちに担任とは認められない。
僕は恐る恐るでありながら思い切りよく蹴ってみた。
数値はかなり高いように見えた。
周りの生徒たちは歓声を上げていた。
どうやら担任と認められそうだ。
でも最初の女子は
「凄い数値じゃない。
私もこれだけの数値を見たことがないわ。
でも壊れなかったじゃない。
まだ、あなたを担任とは認められないわ」
なかなかしぶとい女の子だ。
次はパンチングマシンだ。
僕はその女の子が有無を言わぬように今度は思いっきりぶん殴った。
その結果、辺りが静まりかえっていた。
もちろん、その女の子も。
パンチングマシンはと言うと粉々になっていた。
そして、それから数秒後、怒鳴り声が響いた。
「何をやっているんだ!!
あぁ、私の最高傑作がボロボロだよ。
何てことをしてくれたんだい」
学園長の声だった。
学園長は
「誰がこんなことをしたのかは大体見当が付いている。
こんなことが出来るのは勇者クラスの力の持ち主しかいない」
僕は
「これには訳が有って」
と言い訳を始めると学園長は
「言い訳なんてどうでもいい。
貴様はこの責任を取ってもらうからな。
恐らくこの娘たちに乗せられてやったことだろうけど。
私は貴様ら(生徒たち)にも言ったよな。
男の担任が来るって。
なぜそれを信じられないのか?」
さすが学園長、生徒たちはかなりビビっている。
僕は
「まぁ、ぼくのこの姿を見て信じられなかったのは仕方がありません。
だから僕が力を見せる必要性があったのです。
だから今回の責任はひとえに僕にあるのです」
学園長は
「ほう、では貴様には全ての責任を持ってもらおうか。
今月1ヶ月の給料はなしだ。
それで手を打ってやる」
どうやら僕の教師生活のこれからは波瀾万丈のようだ。