50年後
この世界に来てもう50年も経つ。
前世であったことはもう幻であったかのよう。
そのぐらいこの世界ではいろいろなことがあった。
世界の危機を2,3回は救ったし僕らは各地で伝説となった。
チート能力のおかげで伝説の勇者夫婦となったのだ。
しかし、問題がある。
不老不死の能力だ。
せっかくもらったので当初は軽く考えていた。
でもよく考えて欲しい。
年を取らないと言うことはきわめて異常なのだ。
僕らは高校卒業仕立てで転生させられた。
と言うことは見た目は10代だ。
しかも僕らは年齢よりも若く見られがちだった。
僕らは背が小さく周りからは中学生みたいだと言われていた。
この世界に入った時も大人に見られることはまずなく最初から子供扱いだった。
そして、年齢を知るといつも驚かれる。
それは年を重ねるごとに増していく。
(見た目が変わらないのだから当然なのだが)
そして僕らは前節の子供勇者として崇められている。
今、僕らは流転の旅の途中だ。
不老不死のおかげで一所に住むことが出来ないのだ。
街の人たちは最初は歓迎してくれるが時が進むにつれいろいろと支障が出てくるのだ。
やはり不老不死は気味悪がられる。
だから僕たちは定住することが出来ない。
ところがここで朗報がやって来た。
僕らの素性を分かった上で引き受けてくれるところが出来たのだ。
使者の人が僕の所へやって来たのだ。
その使者とは僕たちと一緒に闘ったことのある魔法使いの夫婦、僕らと同い年くらいだと思うが魔法を使っているせいか見た目は10代のままだ。
男の方が
「よう、久しぶり。
相変わらず住むところに困っているんだろう。
それに伝説の勇者と言っても常に仕事がある訳じゃない。
お金にも困っているだろう。
俺はある人の使いで優秀な人物のリクルーターなんだ。
是非、俺のいる職場で働いてみないか」
と僕たちを誘ってきた。
女の方は
「あなた、大切なことを言い忘れているわ。
私たちはあなたたちみたいな伝説の勇者を探していたの。
私たちはとある学園で教師をやっているの。
勇者を養成する学校よ。
是非ともあなたたちみたいな優秀な人たちには教師になって欲しいの」
住むところと職が一気に手に入るまたとないチャンスだ。
僕らは二つ返事ですぐに承諾した。
学園のあるところはかなり栄えた街と言ったところだ。
僕らが住んでいたどんな街よりも栄えていた。
そして僕らが務めることになった学園は全国から優秀な人材が集まる学園らしい。
日本で言うところの東大のような所らしい。
ここで学んだものがこの国での優秀な兵士になり、官僚になりこの国を動かすことになるのだそう。
その学園で働くことになったのはいっそう気が締まる思いだ。
僕らは早速学園長室に行くことになった。
この学校で1番偉い人だ。
ちょっと緊張してきた。
何せその人に気に入られなければまた流転の旅に出なければならない。
そう思うと今までで1番気が締まる。
学園長室に入ると学園長は意外な人物だった。
10代の美少女がそこに立っていたのだ。
初め、学生のいたずらかとも思った。
でも違った。
学園長そのものだった。
「いやぁ、よく来たな。
私は君たちが来るのを首を長くして待っていたよ。
一応、このなりでもこの学園の学園長だ。
まぁ、気を楽にして聞いて欲しい。
まず、この学園のことから説明しよう。
この学園は満15歳から満20歳までの学生を対象とした学園だ。
つまり5年間の学習期間を置いている。
そこで座学と実技を教えている。
座学は最高峰の人文科学、社会科学、自然科学を教えている。
実技は魔法、体術の最高峰を教えているんだ。
君たちはそのうちの体術を教えてやって欲しい。
君たちは魔法は出来ないけど体術が凄いと聞いている。
なんてたって伝説の勇者だから。
期待しているよ」
その後、学園長は意外なことを言い出した。
「え〜と、男の方がユーラ、女の方がフィーナだっけ。
悪いけど私は性別に疎くてね。
男と女の区別が付かないんだ」
「!?」
「この学園は授業棟、学生寮が男女別でね。
つまり、男女がこの学園にいるんだけど異性がこの学校で鉢合わせすることがないように作られているんだ。
この国では男女7つにして席同じうせずと言って男女が同じ席で勉強することがないんだ。
でも私には性別という概念がない。
その証拠にあなたの奥さんには私が男に見えているはずだ」
僕は即座にに彼女に確認した。
彼女は学園長が美少年に見えるのだと言った。
学園長は
「これは私の手違いなんだけどユーラ(男)には女子校舎の授業をフィーナには男子校舎の授業を担当してもらうことになる。
大体、前世の名前からもじっているのだろうけどこの国ではユーラは女の名前、フィーナは男の名前だから。
名前だけ聞いて間違えて決定しちゃった。
でもこの決定は絶対だから変えられないからね」
と言っていた。
なんか残念そうに話していたけれど僕には北翁笑んでいるように見た。
それにしても学園長が性別に疎いとはどういったことなのか。
学園長はこう話した。
「実は私は神に近い存在で姿をいかようにも変えることが出来るんだ。
しかも、君たちが転生した経緯も知っている。
何を隠そう、君たちが転生をする前に土下座した1人でもあるからね。
あのときは本当にドキドキした。
私はその中でも下っ端の方だったから覚えていないだろうけど。
姿も違うし。
この世界ではガス状生命体でもある」
と言って僕らの目の前で腕を燻らせてくれた。
「腕を燻らすのは大変なんだ。
普段はその場でガスを固定させているから。
元がガスの生命体だからいかようにも姿を変えることが出来る。
見る人によって姿を変えることも容易なんだ。
姿も違えばしゃべり方も違うしね。
とりあえず私がこの学園の長なんだ。
しっかりと授業をして下さいね」
彼女はにっこりと笑った。
それにしてもこれからの学園生活は波乱に満ちそうだ。