夏に降る雪
大阪市の新御堂の淀川にかかる橋を歩いていたら、シュレッダーゴミが撒き散らされていました。ナニがあったのでしょう?そこにある物語がこんな物語だったらいいなーと思いつつ書いたのがこのお話です。
※ポケモンgoをしていたわけではありません。
新御堂という、4車線ある道路の脇。
黒のハイブリッドカーが横付けされた。
助手席から降りた女は、トランクフロアから無色透明なごみ袋を取りだし、中身を歩道にぶちまけた。
紙吹雪が起こった。
交通量のせいか、淀川の上だからか、この橋はいつも風が吹いている。
細やかなシュレッダーされた残骸は風に巻き上がり、宙を惑った。
女はその紙吹雪を見つめて、泣いた。
立っていることもできず崩れ落ちた女を、運転席の男はそっと抱き上げ、助手席に押し込んだ。
「自分がいますから」
魂を抜かれたように微動だにしない女に男は優しく言い聞かせる。
車を走らせながら、時おり男は女に声をかけた。
「あなたには自分がいます。だから、あの人の事は忘れてください」
「あなたは、悪くない」
女はただ宙を見つめ、涙を流した。
信じていた。
愛していた。
だから、罪を犯したのだ。
証拠は全て彼が処分した。
ばら蒔いたのは、最後の証拠。
唯一の紙媒体の、女が何かあったときのために置いておいた、唯一の自衛手段。
彼と女を繋ぐ、唯一の証拠。
それが見つかり、証拠は復元不能な紙くずになった。
お前なんか要らない。
彼から受けた人格否定。
高かったプライドはへし折られ、屈折した愛情が残った。
彼の悪事が、表沙汰になればいいのに。
同時に思う。
このシュレッダーごみを復元するのは、不可能。
誰か、気づいて。
苦しい。
男は女を自宅に連れ帰った。
ベットの端に腰かけさせ、口移しで無理矢理錠剤を二種類飲ませた。
「マイスリーとロヒプノールです」
トンと体をつくと、女の体はベットに沈んだ。
「今はただ、なにも考えずに眠ってください」
女の目から涙が滲む。
「利波……」
「はい」
「私、どこで間違えたんだろうね」
利波は答えを持たなかった。
「眠ってください」
女の体をきちんとベットに横たえ、上かけを掛けてやる。
「利波……」
ベットに腰掛け、女のお腹をポンポンとたたくと、そのリズムが心地よかったのか、クスリが効き始めた。
「葉瑠」
利波は眠っている女の唇にそっとキスをした。
利波は葉瑠をずっと見ていた。
だから、彼と葉瑠の不倫関係を知っていた。
彼の側に女が見えかくれし、葉瑠との関係が終盤を迎えた事にも気づいていた。
しかし、葉瑠が何故あのシュレッダーごみにこだわるのか分からなかった。
棄てるなら普通にゴミとして出せばいいのに、何故撒きたがったのか分からなかった。
「夏に降る雪のなかに居るようで、キレイでした」
葉瑠の髪をすきながら利波は眠ってしまった葉瑠に囁いた。
続きの話、書けたらいいなーと思いつつ。利波の恋、成就させたいと思うので。




