111 お誘い
ブクマ&評価&誤字報告ありがとうございます!
祝 400,000pt突破!
気付いたら、400,000pt!
慌ただしくしていたこともあり、お礼が遅くなりまして、大変申し訳ありません。
ここまで来ると、すご過ぎて何だか実感が湧きません。
いや、ほんと、すごいですよね。
いつも応援していただき、本当にありがとうございます!
今後も楽しんでいただければ幸いです。
開場の時間が来ると、次々と招待客が入場してきた。
招待客達は入り口で待ち構えている私とレイン殿下の姿を見付けると、皆人好きのする笑みを浮かべてこちらへとやって来た。
対する私も、日頃講義で習っていることを思い返しながら、彼等へと笑顔で挨拶を返す。
今日の招待客は王宮側に選出してもらったため、初対面の人が多い。
王宮側に選定を依頼した理由は、私がまだ不慣れだからだ。
パーティーを開催した理由の一つは、普段【聖女】に会えない人に会う機会を与えることだ。
けれども、希望者の中から闇雲に選ぶ訳にはいかない。
そこには、政治的な配慮やバランスを考える必要がある。
講義で多少習っているとはいえ、今の私にはそれらの全てを勘案して、大勢の招待客を選ぶのは難しかった。
そして、今回のパーティーは講義の延長にある、練習用のパーティーではない。
所謂、ぶっつけ本番で、失敗したときのペナルティーが大きい。
故に、できないことは、できる人にお願いした方がいいと判断し、王宮側にお願いしたという訳だ。
とはいえ、多少は知り合いも来る。
最初に来た知り合いはアシュレイ侯爵一家だ。
先日お会いした侯爵夫人とリズに加えて、侯爵御本人と、リズのお兄さんであるアシュレイ子爵とその奥さんがいらっしゃった。
リズが美少女なことから予想はしていたけど、一家揃って美形揃いだった。
後光が射しているように見えたのは、気のせいではないかもしれない。
友人の家族とはいえ、リズと侯爵夫人以外は初めてお会いした方ばかりだったので、最初は少し緊張した。
けれども、その緊張はすぐに解れた。
アシュレイ侯爵の心遣いのお陰だ。
こちらの緊張を見て取ったのか、【聖女】にというよりは、子供の友人に対するように接してくださったのだ。
そうした配慮は、少しありがたかった。
その後は知らない人が少し続いたけど、聞いたことがある名前の人も、ちらほらいた。
例えば、ドレヴェスとか、アイブリンガーとか。
前者は師団長様の、後者は第二騎士団の団長様の家名だ。
お行儀は悪いけど、覚えのある名前を聞いて、ついマジマジと相手を見詰めてしまったわ。
双方共に、参加したのは御家族だ。
団長様と同じ家名の人はまだ何となく団長様と似ていたけど、師団長様の方は全く似ていなかったわね。
そして、知人の家族といえば、もう一家族。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「ようこそ、お越しくださいました。ホーク様」
日の光を柔らかに反射する金色の髪と、ブルーグレーの瞳を持つその人の名は、ヨーゼフ・ホーク。
この国の軍務大臣にして、団長さんのお兄さんだ。
団長さんと同じような髪色をしているけど、お兄さんの方が少し色が濃いような気がする。
何気に初対面ではない。
一度だけ、挨拶をしたことがあるのよね。
それに加えて、私が堅苦しいのが苦手なことも知っているのか、今日は簡単な挨拶で済ませてくれた。
一緒に来られた奥様の方は初対面だったので、こちらは丁寧に挨拶をする。
暁鼠色というのか、少し薄紫がかった灰色の髪色に、灰色の瞳をした、儚げな印象の美人だ。
「今日のパーティーはセイ様の故郷のものを模したものだとか?」
「はい。料理を楽しむものになります」
「会場の料理も全てセイ様が考案なさったものだそうですね。噂に聞くセイ様の料理を食べることができると伺って、とても楽しみに参りました」
「私もです。このような機会を設けてくださり、ありがとうございます」
お兄さん達は夫妻揃って今日のパーティーへの期待を口にした。
パーティーの趣旨については、予め招待状にも記載してある。
だから、このパーティーがフードフェスティバルを模したもので、提供される料理は元の世界の物を再現した物だということを、招待客は知っていた。
それがどうねじ曲がったのか、私が考案したことになっているのは解せぬ。
「料理は私が考案した物ではなくて、故郷で食べられていた物を再現しただけなんです。皆様のお口に合うといいのですが」
「そうでしたか。ですが、こちらでは新しい料理なのは変わりありません。今日の話をしたら、弟達は悔しがりそうです」
「今日はお二人ともいらっしゃらないそうですね」
「申し訳ありません。あれら二人は、元々こういう場にはあまり出てこない質で」
「いえいえ! お仕事だと伺っておりますから」
お兄さんの口から出た「弟達」という単語に、思わず苦笑いを浮かべる。
お兄さんが言う通り、弟達ことインテリ眼鏡様と団長さんは今日のパーティーには不参加だ。
インテリ眼鏡様はいつも通り、宮廷魔道師団の隊舎でお仕事で、団長さんは第三騎士団と共に少し遠方に討伐に出ているからだ。
ついでに言うと、師団長様も不参加だ。
こちらも第三騎士団とは別の所に討伐に出掛けているらしい。
インテリ眼鏡様は分からないけど、確かに、他の二人は後で悔しがりそうだ。
パーティーとは別に、今日出した料理を改めて振る舞う機会を設けようかな?
そんなことを考えていると、お兄さんが内緒話をするように、私の耳元に口を寄せた。
え、何!?
急に近付かれたことに驚いて、心臓が跳ねた。
「もしよろしければ、今度我が家にもお越しください。弟達も呼んでおきますので」
「ホーク卿」
お兄さんは声を潜めて話したのだけど、隣に立っていたレイン殿下には聞こえたらしい。
目を丸くした私の横で、レイン殿下はお兄さんの行動を咎めるように名を呼んだ。
これは仕方がない。
こういう場で、一人が抜け駆けして【聖女】様を直接お誘いしてしまうと、他にもそういう人が出てくるからね。
もっとも、お兄さんの前にもそういう人はいたからか、レイン殿下もそれほど問題視はしていなさそうだった。
他の人達の時と同じように、やんわりと窘めただけだ。
むしろ他の人よりかは大目に見ている方だろう。
だって、今までの人達に向ける視線よりもお兄さんに向けるものは柔らかかった。
他の人達のように堂々と胸を張って誘わなかったからかな?
いや、それよりも、もっと気になることがある。
我が家にもお越しくださいって、お兄さんの家、つまりホーク辺境伯家の王都にある別邸に行って、料理を振る舞ってくださいってことなのかしら?
その前に話していたのは料理の話だから、悔しがるのは、今日の料理を食べられないことに対してよね?
それとも、他に何かあるの?
悶々と悩んでいる間に、お兄さんはスルリと側を離れて、笑顔で辞去の挨拶をした。
ちょっと待って。
意味深な言葉を残して行かないで。
そんな思いも空しく、お兄さん達は何事もなかったかのように会場へと行ってしまった。
「そろそろ我々も会場に移動しましょうか」
「はい」
お兄さんが去った後は、再び、次々と訪れる人達への挨拶で忙殺された。
暫くして人の波が切れたところで、側近の人がレイン殿下の耳元に何かを囁きかけた。
どうやら参加者のほとんどが入場し終わったようだ。
レイン殿下に移動を促されたので、頷いて、会場へと足を向けた。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
本日(3/6)から4/11まで「KADOKAWA ライトノベルEXPO」が開催されます。
そして、本日(3/6)と明日(3/7)は朝10時よりステージが生配信されます。
配信は、niconico様、YouTubeLive様、Periscope様でご覧いただけます。
「聖女の魔力は万能です」アニメのステージも本日(3/6)16時から配信予定です。
ステージにはセイ役の石川由依さんと所長役の江口拓也さんが登壇されます。
トークと新PVが公開予定ですので、ご興味のある方は下記の公式サイトをご覧ください。
・KADOKAWA ライトノベルEXPO 配信
https://lnexpo.kimirano.jp/live/
もう一つ、お知らせがあります。
「聖女の魔力は万能です」の小説7巻ですが、発売が5/8に延期となります。
これに伴い、アロマキャンドル付きのスペシャルパックの予約〆切も3/18まで延長されます。
いつも応援してくださる皆様、関係各所の皆様にもご迷惑をおかけし、大変申し訳ありません。
深くお詫び申し上げます。
よろしくお願いいたします。